言論NPOとは

令和4年度活動報告

昨年度の事業計画で掲げた3つの課題


  • 取り組む事業の優先順位を組み直し、私たちの中核事業が世界への発信力や影響力を持つこと
  •  国際事業では「東京会議」を言論NPOの代表的なフォーラムに位置付け、「東京-北京フォーラム」と連動させ、言論NPOが世界が多くの課題で力話合わせ、分断を回避することの取り組む姿勢を明確にした。

  • 言論NPOに参加する多くのメンバーや課題を共有する多くの力を加えて、組織自体を再活性化すること
  • (ア) 理事会機能の強化:副理事制度が発足
    (イ) アドバイザリーボードの強化:新たに4氏が加入
    (ウ) メンバーの計画的な拡大:一部のみ動く
    (エ) 法人会員は2社から7社に拡大し、東京会議の立ち上げと連動して、大きく増えた。

  • 社会への発信力を強化し、組織の影響力を拡大すること
  • (ア) 議論の多面的な展開やフォーラムの運営だけではなく、これまでにないオンラインやSNSの活用などに取り組み、無料登録者の増加は1000人、フォーラムは22回・約600人(昨年は13回・約300人)となった。
    (イ) SNSではショート動画の展開が始まり、言論NPOのミッションやどういう考えで事業を進めたかが分かるための動画やツイッターの展開を行った。


「東京会議」は世界の主要国際会議の1つとして認知された

 国際事業の課題は、これまで18回にわたって行われてきた「東京-北京フォーラム」に加えて、2017年に創設した「東京会議」を、言論NPOの中核事業に位置付け、世界を代表する競争力のある会議に成長させることでした。

 今回は、コロナも落ち着いてきた3月23日~25日の3日間、3年ぶりに対面方式で開催しました。今年の「東京会議2023」の公開セッションには、ロシアの侵略行為に反対する世界を代表する民主主義国10ヵ国のシンクタンクの代表者が集まったほか、メアリー・ロビンソン元アイルランド大統領をはじめとする世界のオピニオンリーダーが集結。「ウクライナ戦争をどのように終結させるのか」、「民主主義国は、世界の分断と民主主義の修復にどう立ち向かうか」をテーマとして議論を行いました。

 また非公開セッションでも、インフレと債務危機の懸念が広がる世界経済や、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」を民主主義の修復からとらえ直し、北朝鮮と台湾海峡の現状を分析しました。これらの議論を踏まえて、ウクライナ戦争の終結に(中国も含めて)世界が力を合わせ、民主主義の正統性を回復するため、民主主義国の努力を求める、「共同声明」がまとめられ、ウクライナへの電撃訪問から帰国したばかりの、G7サミット議長国である日本の岸田文雄内閣総理大臣に手交されました。

 世界が分断に向かって動く中で、対立よりも平和と協力を求め、それを、日本で議論し、日本から発信する唯一のハイレベルな議論の場として定着したこの「東京会議」には、200人を超える方が会場で傍聴しました。また、今回の会議は、読売新聞や毎日新聞が1ページを使用して特集を組むなど、国内外の多数のメディアで報じられ、大きな注目を集めました。

 加えて、今年から、「東京会議」に対して戦略的な方向性や、この会議が世界的な課題にきちんと見合うための論点などを提言する評議会が、日立製作所取締役会長の東原敏昭氏、三井住友フィナンシャル・グループ取締役会長の國部毅氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役執行役会長の三毛兼承氏の新規アドバイザリーボードメンバーを含めた8氏で発足しました。今後、さらに増員を行っていく予定です。

 広島サミットに連動する形で世界の発言力を強めた「東京会議」は、日本発の世界会議として、組織的にも一定の体制ができ、「東京-北京フォーラム」と並ぶ、中核事業の1つとして位置づけられました。


アドバイザリーボードと法人会員が増加

 昨年の事業計画では、1.国際事業とは別に、言論NPOの組織運営や言論活動は、会費や幅広い一般の寄付金で賄う体制を早期に実現すること、2.言論NPOの取り組みが幅広い層に指示され、影響力を持つために、若者や女性などの参加者の拡大に努めることの2つの考えを掲げました。

 その考えのもとに、課題として①取り組む事業の優先順位を組み直し、私たちの中核事業が世界への発信力や影響力を持つこと、②言論NPOに参加する多くのメンバーや課題を共有する多くの力を加えて、組織自体を再活性化すること、③社会への発信力を強化し、組織の参加基盤を拡大することの3つを挙げました。

 ①については、前述のとおりです。

 ②課題については、アドバイザリーボードや理事体制、「東京-北京フォーラム」の実行委員会の見直し、拡大に向けた動きを開始しています。会員が参加できるフォーラムなどの充実、に取り組みました。アドバイザリーボードには、経済界から三井住友フィナンシャルグループ取締役会長の國部毅氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役執行役会長の三毛兼承氏、日立製作所会長の東原敏昭氏、また女性参画を積極的に進めるためNPO法人 J-Winの内永ゆか子氏にご参加いただき、今後も拡大していく予定です。

 また、法人会員については、東京会議の体制整備と連携し、これまでの2社から7社に大幅に増加しました。引き続き、拡大に努めていく予定です。

 一方、メンバーの拡大については数名の増加はあったものの、高齢を理由に退会する方もおり、最終的な増加は4名に留まりました。ただ、新年度からメンバーと支援企業を中心とした勉強会を立ち上げ、翌年度以降、メンバーの大幅な拡大に向けて本格的な取り組みを動かしていきます。

 また、理事会を中心に行った「ふるさと納税」による寄付は、令和三年度の2000万円から増加し、2700万円を超える寄付額に達しました。

 ただ、現状は会費と寄付で言論NPOの組織活動を賄う目途はついておらず、この達成は来年に持ち越されました。コロナウイルスの影響から寄付金や会費総額は大きく増えておらず、スタッフも最低限の人数を継続して人件費を圧縮している状態が続いています。


国内外の課題を私たち自身が考えるため「知見武装」という取り組みを進める

 ③の課題については、昨年から始めた「知見武装」による発信を強化し、一般の人が言論NPOの活動に参加できる「無料登録者」や参加者を増やしていくことです。

 令和三年度末にロシアがウクライナに侵攻し、世界が不安定化する中、私たちのフォーラムが本格化し、「国連の役割」、「中国のロシアへの対応」、「ロシア経済」等を始め、ウクラナと世界の平和秩序に向けた議論が続きました。

 参議院選挙直後には「経済と外交・安全保障分野の評価会議」を公開し、さらに、日中国交正常化50周年の記念日の前日、特別企画として日中国交正常化交渉時の中国課首席事務官を務めた小倉和夫氏、日中関係が最も悪化した2006年に駐中国大使だった宮本雄二氏、尖閣諸島国有化直後に駐中国大使に就任した木寺昌人氏の対中外交の節目に立ち会った外交官と議論を行うなど、歴史的な変化の中で私たちが考えるべき課題を掘り下げました。

 こうしたフォーラムは令和四年度は、4月から22回開催し、延べ69氏がパネリストと参加し、議論を延べ約600人が聴衆として参加し、令和三年度に比べて約2倍の議論が発信されました。

 さらに、「東京-北京フォーラム」や「東京会議」の前には、1分程度のCM動画を複数作成し、SNS等を活用しながら告知を展開しました。この結果、無料登録者が新たに約1000人が増えています。


3年ぶりに対面で開催された「東京会議2023」
議論を踏まえた共同声明を、G7議長国の岸田首相の手交

01.jpg 令和4年度は、「東京会議」の取り組む身を軸に言論NPOの活動が動きました。東京会議に参加する企業から、アドバイザリーボードや法人会員が増え、世界やアジアの平和や国際協力に求める大きな声が、この東京から出されました。今回の「東京会議」には、世界10カ国のシンクタンクの代表の他、、アイルランド元大統領で、国際連合人権高等弁務官も努めたメアリー・ロビンソン氏、イギリスの元外務大臣であるウィリアム・ヘイグ氏、インドネシアのエネルギー・鉱物資源大臣と運輸大臣を務めたイグナシウス・ジョナン氏のなども参加し、3年ぶりに対面形式で、3日間にわたって議論を行いました。

 そして、議論を踏まえて、①ウクライナ戦争を一刻も早く和平交渉に持ち込むために、より多くの国が力を合わせる必要がある。そのためにも、G7各国は関係国との対話を急ぐべきということ、②民主主義の国際社会での正当性をより高めるためには、自国の民主制度を鍛え直し、その有用性を高める必要があること等、5項目について合意し、共同声明をとりまとめました。

 そして、公開フォーラム終了後の夕食会にて、今年のG7議長国である岸田文雄内閣総理大臣に手交しました。その後、岸田首相が5月に広島で開催されたG7サミットに向けた決意を語りました。

 こうした会議は、読売新聞では1ページを使用して特集が組まれる等、日本国内のみならず、海外メディアでも大きな注目を集めました。

しかし、私たちがこの「東京会議」で実現した、分断回避と世界の協力に向けた取り組みは、昨年12月に行われた「東京-北京フォーラム」から、始まっていたのです。


ウクライナ危機の平和的解決につながるあらゆる努力を共に支持すること、
経済の全てを安全保障で考えるべきではない等で一致

02.jpg 「第18回東京―北京フォーラム」は12月7日・8日の2日間にわたって「日中国交正常化50周年で考える~世界の平和と国際協調の修復に向けた日中両国の責任~」をテーマに、東京と北京を結ぶオンライン会議方式で行われ、日中両国を代表する政治・外交、平和秩序、安全保障、経済、デジタル、メディア、世論調査、青年対話などの有識者約100氏が集まり開催されました。

 今回のフォーラムは、世界の平和だけではなく、アジアの紛争回避、世界の分断のこれ以上の悪化を避けるための成否をかけた取り組みであり、この内容は日本の主要紙が1ページを使って報道する等、日本社会において非常に大きな評価を得ました。

 最終日に合意した『平和協力宣言』では、「ウクライナ危機のエスカレートの回避、平和的解決につながるあらゆる努力を共に支持する」との文言が盛り込まれると同時に、「経済の全てを安全保障で考えるべきではなく、過度の経済混乱を招かない様に、両国政府は協力を前提に話し合いを始めるべき」等でも一致しました。

 さらに、フォーラム閉幕にあたっては、岸田文雄首相からメッセージが寄せられ、「日中にはさまざまな課題や懸念があるからこそ対話が必要だ」「アジアの未来に向かって、私たちは話し合いを続けなくてはならない」など対話の必要性を強く中国側に呼びかけました。

 本フォーラムは日本側と中国側それぞれでオンライン配信されました。より多くの人に、この歴史的なタイミングで行われた議論に関心を持ってもらうために、事前に議論のポイントを解説する動画展開を幅広く行うなど、意欲的なキャンペーンに取り組んだ結果、昨年を上回る両国の市民のべ5000人を超える傍聴・視聴につながりました。

 中国とウクライナ戦争と真剣な議論ができたのは、このフォーラムの前に公表した中国との世論調査が大きな引き金となりました。

 中国の世論調査の設問に、ロシアのウクライナ侵攻や台湾海峡問題が入ること自体異例のことでしたが、中国の国民の半数以上がロシアの侵略に賛成していないことが分かるという衝撃的な集計でした。この数字は日本や海外のメディアでも大きく報道され、それが、「東京-北京フォーラム」の議論に繋がり、東京会議の宣言となったのです。

 2023年5月の広島サミットの宣言が、分断よりも協力に大きく舵を切ったのは、こうした民間側の取り組みが背景にあると、私たちは判断しています。


北朝鮮の相次ぐミサイル発射などで地域の安全保障は益々不安定化する中、10回目の「日韓未来対話」を開催

03.jpg 言論NPOの取り組みは民主主義自体の点検や評価にも向かっています。言論NPOとフランスのファンダポール財団などの7団体が協力して行った世界55カ国、47,408名が回答した、民主主義に関する世論調査結果を公表しました。

 今回の調査では各国で民主主義の社会に対しては根強い信頼が見られるものの、多くの国で民主主義制度を構成する様々な仕組みが、信頼を失い始めていることが明らかになりました。

 こうした調査結果を踏まえて、国内の中堅・若手の政治学者と「日本の政治不信をどう打開するか」をテーマにフォーラムを開催しました。

 ただ、こうした取り組みが進む一方でこれらが、幅広く日本社会に伝わっていないことが、私たちの深刻な課題として浮き彫りとなっています。それがこれから、私たちが取り組む課題なのです。

 年間ウェブサイトの訪問者数(UU)は15万8,800人、総ページビュー(PV)数は45万1249と微増しました。活動が飛躍的に広がりながらも、発信がまだ十分でないという課題は継続しており、今後、一層の発信を増やしていくこと、さらに他のメディアと連携し、顧客層を広げると同時に、外部から顧客を誘引するかも、今後の課題となっています。

 現在、Googleアナリティクスを利用したアクセス解析などを進めており、PV数の増加などは引き続き進めていきます。

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