今回の震災を、日本が課題解決に取り組むための目覚まし時計に

2011年6月11日


今回の震災を、日本が課題解決に取り組むための目覚まし時計に

平野英治(トヨタファイナンシャルサービス株式会社 副社長)

 トヨタの金融統括会社であるトヨタファイナンシャルサービスの副社長をしております平野英治です。5年前までは日本銀行に勤務しておりました。現在、言論NPOの理事をやっております。

 さて、日本は今危機的な状況に直面しております。もちろん東日本大震災の影響が大きいわけですが、我々が注意しなければいけないのは、震災が無くても日本は危機だったという事実です。バブルが崩壊してから20年間、日本は低迷を続けておりました。この間に、中国・インドといった新興国はめざましい発展を遂げ、世界の景色は大きく変わっておりますが、日本は、ほとんど変わっていない。大事な問題は先送りし、成長戦略も無いままダラダラと走ってきたこの20年間でございましたが、そこに今回の震災という目の前の危機が加わったわけでございます。これで日本が目覚めなければ、日本の先は無いと私は思っています。

 有難いことに、今、海外出張する機会が非常に多いわけですが、海外の友人は日本のことを非常に温かい目で見ております。「日本は必ず復活する」という意見を持った人が圧倒的に多い。これは非常に有難いことでありまして、今回の震災対応で日本のブランドは傷ついたという面もございますが、日本のブランド力はまだ健在であるというのが私の実感です。その証拠に、日本の通貨である円は全く弱くなっていない。これだけの問題を抱えながら、これだけ危機的状況にありながら、通貨は安定している。それは、日本のブランド力は保たれている証拠だと思います。しかし、日本の現実はどうか、内実はどうかということで考えてみますと、暗澹たる気持ちにならざるを得ないのが実感です。例えば、震災対応をめぐる国会の議論を見てください。ほとんどこの世のものとは思えないような貧弱な議論を繰り返しておりまして、多分、多くの人々があきれているという風に思います。本来、この震災からの復興を将来の成長に、いかに結びつけるのかという建設的な議論を、党派を超えてやるべき局面でありますけれど、いかにも議論が貧弱であるということでございます。こういう議論を続けておりますと、当然国民は愛想をつかします。もっと重要なことは、世界にもこの内実が伝わってしまうと、世界も愛想をつかしてしまいます。そうなりますと、円が暴落するということも考えられるわけでございまして、我々に残された時間は少ないということでございます。

 最近、私が危機感を感じておりますのは、この原発事故の賠償問題であります。これはいろんなスキームがあり得ると思いますが、一応、政府は東電が無制限、無期限の賠償責任を負うと言っています。しかし、東電をみんなでサポートするというスキームを発表したわけであります。その一方で、官房長官の記者会見におきましては、東電が債務超過に陥るということを前提とせんばかりの金融機関の債権放棄を求める、といったような発言が飛び出すということでございます。これは、非常に大きな混乱をもたらしている。海外から見ますと、日本は本当に法治国家なのかという議論さえあるところであります。このような議論を、混乱を繰り返していると、先程冒頭でも申しあげた、日本のブランド力もたちどころに失われてしまうということでございます。

 政治の話をいたしましたけれども、政治家は私たち国民が選んだ人たちでございます。したがって、私たち国民の責任でもあります。政治がおかしければ、我々国民自身が責任をもって何とかしなければならない、そういう風に思うわけです。言論NPOの場は、個々の利害を離れて自由な議論を戦わせることによって、日本を少しでもよくしていこうという志を持った人の集まりでございます。今回の大震災が、日本にとって目覚まし時計、海外が見るように、今度こそ日本が目覚めるといったようなことに、ぜひしたいものであります。そのためには、言論NPOは力不足かもしれませんが、みんなで頑張って日本のしっかりした言論を起こしていくということが、是非とも必要だという風に我々は考えております。是非、皆様の積極的な参加、ご協力をお願いいたします。どうもありがとうございました。

 トヨタの金融統括会社であるトヨタファイナンシャルサービスの副社長をしております平野英治です。5年前までは日本銀行に勤務しておりました。現在、言論NPOの理事をやっております。

 さて、日本は今危機的な状況に直面しております。もちろん東日本大震災の影響が大きいわけですが、我々が注意しなければいけないのは、震災が無くても日本は危機だったという事実です。バブルが崩壊してから20年間、日本は低迷を続けておりました。この間に、中国・インドといった新興国はめざましい発展を遂げ、世界の景色は大きく変わっておりますが、日本は、ほとんど変わっていない。大事な問題は先送りし、成長戦略も無いままダラダラと走ってきたこの20年間でございましたが、そこに今回の震災という目の前の危機が加わったわけでございます。これで日本が目覚めなければ、日本の先は無いと私は思っています。