2015年に日本に問われている課題と言論NPOが果たすべき役割 / 武藤敏郎 (大和総研理事長)

2015年1月01日

武藤敏郎氏武藤敏郎
(大和総研理事長)


2015年、日本経済の課題と言論NPOの役割


2015年に日本に問われている課題を、経済面に焦点を当てて考えてみたい。2015年の日本経済は、金融緩和と財政出動に支えられて、また10月に予定されていた消費税引き上げの先送りもあり、緩やかな回復軌道をたどるというのが大方の予想である。しかしこのシナリオには、幾つかのリスクがあることを認識しておく必要がある。

 リスクの第一は、円安が内需型の非製造業、中小企業などにあたえる悪影響である。第二は、財政赤字の問題である。政府は、2015年度に財政のプライマリーバランス赤字のGDP比を2010年度対比半減すること、更に2020年度にはこれを黒字化することを標榜しているが、仮にこの目標が達成されない可能性が高まると、国債格付けの引き下げなどにより長期金利が上昇するリスクを否定できない。第三は、日本経済の本格的な回復を実現するためには、成長戦略、言い換えれば、医療・介護、労働市場、農業などの規制緩和が不可欠であるが、これらが思い通りに実行されないリスクである。第四は、アベノミクスの効果は、円安・株高によってもたらされている面が大きく、必ずしも実体経済に充分波及していないのではないかという問題である。仮に実体経済が予想どおり回復せず、消費者物価上昇率も2%の目標を下回る事態が続く場合には、更なる財政出動と量的金融緩和が必要となるかも知れない。しかしこれ以上の財政赤字の増大や量的緩和による日銀のバランスシートの拡大がもたらす副作用を考えると、今後の政策展開に限界が出てくるリスクもある。
 
 我々は、これらのリスクに対して有効な対策が講じられているか、不適切な政策の副作用が日本経済の将来を困難に陥れる可能性はないか、何らかの抵抗勢力によって改革がなかなか進まない事態に陥っていないか等の問題を、客観的に議論することが必要であろう。言論NPOは、政策当局の無批判な追従になったり、批判のための批判をすることなく、中立的な立場からこのような問題に真摯に取り組むことを期待したい。