【座談会】新しいNPOの可能性

2003年4月30日

hosak_k030423.jpg穂坂邦夫 (埼玉県志木市長)
ほさか・くにお

1941年生まれ。71年埼玉大学経済短期大学部卒業。埼玉県職員、足立町(現志木市)職員、志木市議会議員、埼玉県議会議員を経て、2001年から現職。第8代志木市議会議長、第99代埼玉県議会議長を努め、現在、志木市体育協会会長に在任中。77年学校法人医学アカデミーを設立、理事長に就任。81 年「医療法人瑞穂会城南中央病院」を設立、会長に就任。現在は、「川越リハビリテーション病院」老人保健施設「生きるの里」や訪問看護ステーション「みずほ」を併設している。

tsukushi_m030423.jpg筑紫みずえ (株式会社グッドバンカー代表取締役社長)
つくし・みずえ

パリ大学に学びフランス系エネルギー会社等を経て、90年スイス系のUBS信託銀行に入社。96年営業部次長。98年コンサルタント会社「グッドバンカー」を設立し、99年社長に就任。日本初のSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)のコンセプトによる金融商品で、環境問題の観点から積極的に評価できる企業にのみ投資する「エコファンド」を企画。環境省・中央環境審議会委員、文部科学省・科学技術学術審議会専門委員、経済産業省・産業構造審議会委員。

seguchi_k030423.jpg瀬口清之 (NPO法人RFL理事長)
せぐち・きよゆき

1959年生まれ。82年東京大学経済学部卒業後、日本銀行入行。調査統計局調査役、政策委員会室調査役を経て現職。02年実践活動を重視するネットワーク型のシンクタンク、NPO法人リフォーミスト・フェスティナ・レンテ(RFL)を設立、理事長に就任。自ら知識創造と実践活動に取り組み、地域社会から日本を変革し、「凛として優しい社会」の実現を目指す。

inoue_h030423.jpg井上英之 (ETIC.ソーシャルベンチャーセンターマネージングディレクター)
いのうえ・ひでゆき

慶應義塾大学経済学部在籍時より緊急援助NGOで奥尻島援助やルワンダ難民帰還プロジェクトに参画。公共セクターにおけるマネジメントの必要性を実感し、ジョージワシントン大学大学院でPublic Managementを専攻。その後、ワシントンDC市政府、アンダーセン・コンサルティング戦略グループを経て現職。NPO法人ETIC.にてソーシャルベンチャーセンターを設立、2002年日本初のソーシャルベンチャー向けビジネスプランコンテスト「スタイル」を開催。

コーディネーター:
ushiro_h030423.jpg後房雄 (名古屋大学大学院法学研究科教授、市民フォーラム21・NPOセンター代表理事)
うしろ・ふさお

1954年生まれ。77年京都大学法学部卒。82年名古屋大学大学院法学研究科博士課程修了。同年名古屋大学法学部助手、同大学助教授。96年同大学教授。89年~91年ローマ大学へ留学。96年より民間政治臨調(現、21世紀臨調)メンバー。97年市民フォーラム21・NPOセンター設立、代表理事。


概要

去る3月15日、言論NPOでは「NPOが日本社会を変える」と題したシンポジウムを開催した。同シンポジウムの第1セッションでは、「新しい NPOの可能性」をテーマに、NPOに期待を寄せる行政側から志木市長の穂坂氏、NPO側からRFLの瀬口氏とETIC.の井上氏、そして、株式会社という立場で社会的責任投資を行うグッドバンカーの筑紫氏が活発な議論を行った。進行役は、自らもNPOの代表である名古屋大学大学院の後教授が務めた。

要約

NPOとして法人格を取得した団体の数はすでに1万を超え、毎月300団体ほどのペースで増え続けている。税制を含む法整備の問題も含め、NPOという仕組みが日本でもきちんと確立されるのかどうかが、現在、大きな関心を呼んでいる。一方で、NPOがその活動範囲を広げていくことによって、公的セクター、民間セクターへの影響もますます大きくなってくる。そこで、本セッションでは、「新しいNPOの可能性」として、NPOが行政を、あるいは企業をどう変えるかについて議論が展開された。

「市役所の仕事の9割をNPOに委託する」。そう大胆に宣言するのは埼玉県志木市の穂坂市長。少子高齢化と産業空洞化が進む中で、このままではほとんどの自治体は財政破綻が避けられない。そこで、穂坂市長は自治体のローコスト運営と行政サービスの維持を両立するためには、「NPOに期待するしかない」と断言する。

99年に日本で初めてSRI(社会的責任投資)型の金融商品を発売したグッドバンカーの筑紫氏は、「(組織の)器としては株式会社の形をとっているが、精神的にはNPO」だと言う。一人ひとりの持っているお金を通して社会を変革していくという意味で、SRIに興味をもった筑紫氏は、日本でSRIを実現するために「仕方なく株式会社をつくった」。だが、志が強ければ株主への利益還元を目的とした組織であるという株式会社としての器の限界を突破することができると言い、NPOでなくても公的な活動はできると語る。

NPO側からの出席者である瀬口氏と井上氏も、筑紫氏の主張に賛同する。瀬口氏は現役の日本銀行職員であり、井上氏はコンサルタントとしてビジネスの世界で活躍してきた経験をもっているが、個人の志や強烈な原体験が共感を生み、そこから活動が広がるという主張で一致する。NPOでも、株式会社でも、「要はニーズを満たすことが目的」(井上氏)であるが、その目的を達成するために志をもった者が「集まる場としてNPOは適している」(瀬口氏)のではないかと語る。


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