「市民社会フォーラム」報告

2009年7月16日

「市民社会フォーラム」報告 / ゲストスピーカー:辻元清美氏(衆議院議員)

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 4月23日、都内の学術総合センターにて、第1回目となる「市民社会フォーラム」が開催されました。これは言論NPOが今後1年間、日本の市民社会どう考えるかについて継続的に議論を行っていく「市民社会シリーズ企画」の第1弾として行われたものです。ゲストスピーカーには、NPO法成立の立役者でもある辻元清美氏(衆議院議員)をお迎えしました。


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 はじめに、言論NPOが行っている「非営利組織評価研究会」の代表でもある田中弥生氏(大学評価・学位授与機構准教授)から、「あるべき市民社会のモデルを模索するために議論を重ね、将来につなげていく」という今回の連続フォーラム企画発足の趣旨について説明があり、その後、辻元氏による講演が行われました。


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 大学時代に国際交流NGO「ピースボート」を設立した経験を持つ辻元氏はまず、NGO活動に携わるようになったきっかけとして「社会に新しい活動をつくりたい」との思いがあったと語りました。組織を経済的に自立させるための営業活動など多くの苦労があった中、旅行業と環境調査を組み合わせるなどしてオリジナリティを発揮してきたピースボートの事例を紹介しました。

 また辻元氏は、国会議員としてNPO法成立に携わった経緯について「当時は政界においても、NPO的なものへの不信感が根強かった」と語り、「市民が社会を変えていく」という発想自体がなかなか受け入れられず、2年間という時間をかけてやっと成立に漕ぎ着けることができたと振り返りました。その上で「現在はNPOの社会的認知度も上がってきたように思う」と述べ、代表的なNPOの活動として、国際紛争の調停などいくつかの成功事例を紹介しました。

 今は「100年に1度の経済危機」とも言われていますが、辻元氏は「グローバル資本主義」に対して「身の周り資本主義」という概念を提示した上で、NPOが「地縁」を大切にしながら地域とのつながりを強化することなどを通して新しい社会のかたちをつくり、この危機をプラスに変えていくことが重要なのではないかと述べました。またその際、NPOは「理念」「運営」「オリジナリティ」のバランスをうまくとりながら、行政や民間企業に負けない競争力をつけていくという意思が大切だと指摘しました。


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 会場参加者のうちNPO関係者からは、「地域のコミュニティに受け入れられにくい」「NPOに対する助成金が少ない」といった声が上がりました。辻元氏はそれらの発言に対し、「NPOが社会に認められ、信用を勝ち取っていくにはオリジナリティを強みにするために多くの努力をしなくてはならない」との考えを示しました。「政治側の努力も必要だが、市民側の行動がなければどんな制度も血が通わない。目の前の困難から逃げたくなることもあるが、希望を求めて行動を起こすことで社会を変えられるかもしれない」と締めくくりました。

 言論NPOでは2009年、「市民社会シリーズ企画」や「非営利組織評価基準検討会」などを通して、日本の市民社会をどう考えるかについて継続的に議論を行っていくことになりました。「市民社会フォーラム」は今後も月に約1回のペースで開催していきます。その他にも政治家や有識者、NPO関係者などへのインタビューや座談会を行い、議論の内容は言論NPOのホームページ上やブックレットで公表していく予定です。


文責:インターン 河野智彦(東京大学)

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