第6回エクセレントNPO大賞 「市民賞」講評

2019年1月17日

1. 審査の視点

 市民性の評価基準は、その活動が"ボランティア"や"寄付者"による参加という形で多くの市民に開かれ、さらに参加する人々へ十分な配慮がなされているかという点を重視しています。審査にあたって、特にボランティアについて、ホームページなどでどのようなスキルや知識をもつボランティアを募集しているのかなど、どれだけ応募する側の立場にたって案内しているかがポイントになりました。また、参加や活動の前後でボランティアと直接面談するなどして、かれらの成長につながるような工夫をしているかということも考慮されました。寄付については、寄付受領のお知らせや活動報告など、基本的なことが着実かつ適切になされているかが審査のポイントとなりました。


2. 審査結果

(1)ノミネート団体

「キズナ・アクロス・カルチャーズ」

今回、アメリカ合衆国より応募いただきました。キズナ・アクロス・カルチャーズは日本の高校生と米国で日本語を学習する高校生をつなぐバーチャル言語交流プログラムの企画運営をしている団体です。ボランティアに求められるスキルやコミットメント、人物像などがホームページにわかりやすく記載され、面談なども行って採用するなど、丁寧に対応していることが伺えます。市民性についての自己評価も適切になされていました。できれば、これまで何名くらいの方々がボランティアに参加されたなどの記載などもあればなお良かったと思います。一方、寄付者に安心感を持ってもらえるような取り組みに関しては、会計報告書の公開など改善の余地があるようです。


「特定非営利活動法人ジャパンハート」

 ジャパンハートは、「医療の届かないところへ医療を届ける」をミッションに海外、国内双方で活動している団体です。ボランティア募集について、ホームページでは「医療者」、「社会人・一般(医療者以外)」、「学生」と対象別にページを分け、それぞれわかりやすく説明されています。またオリエンテーションなどもしっかりなされているところが評価されました。寄付者に対しても、海外支援国への「支援者ツアー」を開催するなど、寄付者の安心感を高める取り組みをされている点も素晴らしいと思います。今後、さらに改善していきたい課題などもあわせて記載いただけるとなお良かったと思います。


「特定非営利活動法人仙台傾聴の会」

 仙台傾聴の会は、2008年4月1日に「仙台傾聴の会」として10名のメンバーで発足しました。活動は、自殺予防の一環として、施設や個人宅を訪問しての傾聴からスタートしました。2011年の東日本大震災後、ニーズが増加し、その活動も広がりました。「傾聴ボランティア入門講座・養成講座」を年数回開催され、昨年度は310名ものボランティアを養成されたことや、傾聴活動後の振り返りの実施などアフタケアもしっかりしているところなどが評価されました。今回は市民賞への応募でしたが、今後、認定NPO法人の取得も目指されるとのことなので、組織力の強化などにも取り組まれたら良いかと思います。


「特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス」

 テラ・ルネッサンスは、「地雷」「小型武器」「子ども兵」と相互に関連しあう課題に対し、現場での国際協力と国内での啓発・提言活動を行う団体です。インターンやボランティアとの面談を通じて、会としてどのような期待があり、どのように成長してほしいのかというイメージや意思を持って対面されるなど、丁寧に対応している点を評価しました。「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」と(非常に)大きな理念を掲げられ、その実現は容易ではありませんが、達成を目指して、チャレンジを続けていかれることを期待しております。


「特定非営利活動法人東京里山開拓団」

 東京里山開拓団は、東京周辺の荒れた山林を児童養護施設の子どもたちとともに開拓することを通じて、環境保全と社会福祉双方に取り組んでいる団体です。お一人で立ち上げられ、会員がボランティアとなり、多くの市民を巻き込みながら、活動を広められてきたことを評価いたしました。年間の活動規模が100万円台と大変少ない中で、有意義な活動をされていると思います。ただ、ホームページでは、会員とならないとボランティアができないのかどうか明確でなく、ボランティア募集の条件などについても明記されるとなお良いと思われます。


「特定非営利活動法人みらいの森」

 みらいの森は、児童養護施設で暮らす子どもたちに、キャンプなどのアウトドア体験を提供する団体で、代表者はアメリカ出身の方です。ボランティアの募集について、必要なスキル、勤務日、期間などボランティア希望者が必要とする情報が大変わかりやすく、説明されています。また日本語と英語のパンフレットを作成し、日本の児童養護施設が抱える課題をより多くの方々に伝えようとする資料にもなっており、広く多くの人々に開かれた団体であると感じます。現時点でも十分に高く評価できる活動であると思いますが、さらなる改善点等も記載されていればなお良かったです。


(2)市民賞

 以上ノミネート団体の中から慎重に議論を重ねた結果、市民賞は「特定非営利活動法人みらいの森」に決定しました。ボランティアの募集に関し、希望者が必要とする情報をホームページ上で丁寧に説明し、またマネジメントの体制もしっかりと整えている点が高く評価されました。


3. 今後に向けての期待

 今回ノミネートされた団体は、年間の活動規模が100万円台から数億円の単位までと多岐にわたりましたが、いずれも寄付者やボランティアを団体の運営に不可欠な構成員として捉え、積極的に多様な役割を担ってもらおうとする様子が伝わってきました。エクセレントNPO大賞も6回目を数える中、市民性を問う評価基準に関しては、かなりの高得点を取る団体も見受けられるようになり、全体のレベルも向上していることが感じられます。今後、市民社会がさらに成長していくために、基準の見直しなども検討していきたいと考えております。

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