現時点でトランプ大統領の再選と民主党勝利の可能性は半々/今村卓(丸紅経済研究所所長)

2020年3月05日

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 予備選の当初は、サンダース氏が実力を発揮していましたが、今回の大きな転機の始まりはネバダ州でした。ここは白人比率が低く、バイデン氏が何とか2位に食い込み、ぎりぎり支持をつなぎ留めました。その後、黒人比率が6割と高いサウスカロライナ州では、支持が伸びて圧勝しました。その後、ブティジェッジ氏やクロブシャー氏が撤退を表明し、バイデン氏の支持に回りました。おそらく何らかのポジションを狙い、バイデン氏側と駆け引きもあったと思います。

 加えて、サンダース氏が民主党候補になることへの危機感が、ようやく民主党の中の穏健派の中で強まってきたことも挙げられます。ある意味でまだエンジンがかかっていなかった穏健派がようやく動き出したことも大きかったと思います。


バイデン氏とサンダース氏がどのように融和し一本化できるかが、
  トランプ大統領に勝てるかどうかの最大の課題

 では、今後、民主党の候補者は一本化していくのか。サンダース氏の支持層はすごく熱狂的で、バーニー・ブロス(兄弟)という人たちもいるくらいで、かなり過激です。今回も、ブティジェッジ氏などにかなり露骨な攻撃を仕掛けたり、バイデン氏の集会所に支持者がわざわざ乗り込んでいって演台に上がろうとしたり、かなり無茶なことをやりました。こうした手法が、穏健派の危機感を呼んでいるところもあるのですが、今後、民主党内でバイデン氏とサンダース氏がどのように融和するかが、おそらく最大の課題でしょう。

 サンダース氏は常々、民主党がまとまって大統領選に勝つことが目的であって、自ら党を割るなどとは言っていません。しかし、問題は支持者がついてこないことです。今回も2016年の大統領選挙の二の舞になる可能性は十分あります。

 今、アメリカの有権者の構成として若年層が増えているのですが、この層はトランプ大統領の支持率は低く、今回の大統領選でもトランプ氏に投票する人々は少ないでしょう。サンダース氏は、彼ら・彼女らを選挙に動員すればトランプ大統領にも勝てると考えているようですが、仮にバイデン氏が民主党の候補者になった場合には、若者層は選挙に行かなくなる可能性が高く、サンダース氏の言うような結果になるかどうかは見通せません。


民主党が恐れていることは7月の党大会の決選投票までもつれ込み、
  党内の亀裂が露呈してしまうこと

 今後、ニューヨーク州など、代議員の多い州がまだいくつか残っています。ブルームバーグ氏とウォーレン氏が相次いで撤退しました。ブルームバーグ氏はバイデン氏の支持を表明し、ウォーレン氏は他候補の支持を表明したという違いはありますが、これで穏健派はバイデン氏、左派はサンダース氏にそれぞれ支持がまとまっていくでしょう。そうすると、残りの代議員票数を案分していくと、バイデン氏が55%、サンダース氏が45%という感じで推移ししていくことが予想されます。ですから、今、民主党が一番懸念していることは、予備選が終わった段階で過半数の代議員を獲得する候補が現れないことです。バイデン氏が首位になれても過半数に届かない可能性がかなりあります。逆に、サンダース氏が首位になっても過半数に届かない。

 この場合、7月の党大会での決選投票になります。7月の党大会では、まず1回目の投票で、予備選で決まった代議員が、予備選の結果通りに投票します。ですから、今の結果をもう1回繰り返すことになって、過半数をとっている候補がいれば、それで終わりです。撤退した候補が獲得した分の票は、1回目は死票になります。

 そして、1回目の投票で決まらなければ、2回目の投票では予備選の結果には拘束されないことになっていて、3979人の一般代議員に加えて、議会の議員や大統領経験者、党本部の職員など771人が特別代議員として参加します。過半数をとる候補が出るまでこれを繰り返すことになっています。こうした決選投票は1952年以来行われていないことで、お祭りのはずの党大会が大荒れの場になって、むしろ党内の亀裂を露呈して終わるような、最悪の恐れが残っているということです。こうした可能性が、私はまだ4割ぐらいあると思っています。


現時点でトランプ大統領の勝利は5割

 トランプ大統領は共和党をまとめていますが、全有権者を対象としたトランプ氏の支持率は45%をなかなか超えていません。そこには、トランプ大統領が「今の支持基盤を固めれば勝ち切れる」ということから、支持基盤を広げようとしてこなかったことがあります。逆に言えば、「自分を嫌っている人はどうやっても支持してくれない」と、ある意味で冷徹に考えているのだと思いますが、そうであれば、民主党がまとまった場合、民主党と共和党では、普通は民主党の地盤の方がわずかながら強いため、民主党の候補者が勝利する可能性はあると思います。

 もともとトランプ大統領は接戦をかろうじて勝ち抜いて当選しました。この4年間、これだけアメリカ経済が良いにもかかわらず支持率がそれほど上がらない。やはり、嫌われている大統領と言えると思います。アメリカ国内で、支持していない人が5割を超えているということは重いのです。

 ただ、現職の大統領が負けたことは、これまで2回しかありません。知名度などを考えても、普通は強いのです。大きな失敗もやっていませんから、「今の段階で負ける可能性は低い」という見方にどうしてもなりますが、トランプ大統領がこれまでやってきたこと、民主党の予備選での戦い方の積み上げでみてみると、現時点でトランプ再選の可能性は半分だと予想しています。ですから、日本としてはトランプ大統領の再選、民主党候補者の勝利というどちらの可能性にも備えておいた方がいいと思います。