総選挙公示後のマニフェスト議論に問われる5つの争点

2003年10月24日

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言論NPO政策評価委員会(2003/10/24)


今回の総選挙は各党がマニフェスト(政権公約)を提示し、その内容が各方面で論議を呼ぶというこれまでにない選挙戦となった。公約の是非が有権者に判断され、国民から選択された政党が公約の実行を迫られるというマニフェスト型選挙の第一歩として捉えれば、日本の政治が大きく変わる期待を抱かせる動きともいえる。

今回の選挙では、民主党が数値目標、政策手段、達成期限、財源などを明示的に盛り込んだイギリス型のマニフェストを提示して、選挙戦を挑む姿勢を示したことで、自民党はもとより、その他の政党も同様のマニフェストを作成した。各党のマニフェストは、私たちが先に提示した評価基準の中でも明確性、期限明示、測定可能性の三条件をある程度満たしているという点で、従来の公約と比べ格段に進歩している。

だが、マニフェスト評価でまず私たちが念頭におくべきは、各政党が目指す日本の社会経済の理念とビジョンであり、それを実現するための改革の具体策である。その際には政策の妥当性、実現可能性の二つの評価基準での吟味が必要になる。妥当性とは打ち出された政策がビジョンや理念や他の政策との整合性が取れているのかであり、しかもその政策が財源やその執行体制も含めて実現可能なものでなければ評価はできない。そのためには各政党は選挙を意識した「甘い公約」(ウイッシュリスト)ではなく、目標実現のために必要であるならば「苦い公約」も積極的に国民に提起すべきと考える。

しかし、これまで出された各党のマニフェストは先の三つの評価機基準では大きな進展が見られたが、改革のビジョンや理念が明確ではない政党も多く、政策目標の問題の核心に意図的に触れておらず、目標達成を可能とする政策手段も十分に提示されたわけではない。この内容では政策の妥当性や実現可能性の十分な評価はかなり難しいと考えた。今後のマニフェストにもとづく選挙やその政治を一層、進化させ定着させるために、私たちはその内容を厳しく評価する作業を行ってきた。

言論NPO政策評価委員会では24日、二回目の会合を開き、公示後の選挙戦で議論を深め見解をより明らかにするべき五つの争点を提案することにした。これらはマニフェスト評価(別表参照)を行った結果やアンケート結果(別紙参照)を踏まえ、各党のマニフェストをより評価し、選挙の際に有権者が判断材料にするための必要な論点だと考えた。政党はここに掲げた論点では十分説明を果たしておらず、こうした視点での本格論戦を来週の公示後の選挙戦で期待するものである。

またこの日の会議では政党がマニフェストを公表する際に評価基準にもとづく評価、測定可能な独自のマニフェストのフォーマット(形式)を委員会で作成し、次回選挙からはその形式でのマニフェスト公表をすること各政党に提案することを決めた。

見解をより明らかにすべき5つの争点


I 改革の理念と目指すべき社会経済の姿を明らかにする

II 公約実現のための政策決定、実行プロセスの改革を明記する

III 経済再生、金融・不良債権ではその出口と自立した民間経済再生への道筋、その達成手段のプライオリティ(優先順位)の明示

IV 年金改革を始めとした社会保障制度は国民の不安を解消できる抜本改革案(財源問題、給付と負担、世代間格差の是正を含む)の提示

V 道路公団改革は既存計画にもとづく新規建設の是非と「民営化」「廃止・無料化」との整合性の説明


以上