政治家に白紙委任せず、市民が自ら考え決断するための議論の舞台を

2012年9月13日

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政治家に白紙委任せず、市民が自ら考え決断するための議論の舞台を

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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田中:工藤さんこんばんは。9月8日に国会が閉会し、そしていよいよ選挙の動きが見えてきて、これから言論NPOの出番、勝負ということになると思いますけれども、これからの言論NPOのご予定を教えていただけますか。

工藤:選挙というのが何月になるかまだ分からないけれども、私たちは「今の政治というのは国民の声を反映していない」と主張してきたので、ようやく選挙になるんだな、という感じですね。ただ、やはり私たちが目指しているのは本当の民主主義なのです。民主主義というのは、国民が自分たちの代表を選挙で選んで、選ばれた代表が国民のためにちゃんと仕事をするということです。となると、まず国民が代表を本当に選んだのか。その代表を選ぶということが今まで放置されていたから、ようやく3年ぶりの選挙ですね。それから、選ばれた代表が国民のために仕事をしたかということに関しても、非常に問題が多かった。ということになると、民主主義がほとんど機能していなかったというのが今までの状況でした。これを何としても、民主主義をきちんと機能させる状況に大きく変えなければならない、というところから、そのための呼びかけとか、それに対する動きを、これから全面的に行なっていきたいと思っています。

田中:「民主主義を機能させる」ということがキーワードだったのですが、これからの呼びかけの内容を、もう少し具体的に教えていただけますか。


政治に任せるだけではよくならない

工藤:ちょうど、私が11年前に言論NPOを立ち上げた時に言ったのと全く同じことになります。それは、政治には白紙委任をしないという決意だったわけですね。あの時もちょうど、小泉さんという非常に人気のある政治家がいたのですが、私たちは、ただ政治に期待したり頼ったりするだけでは何も変わらないということを、この10年間の日本の政治を見て分かったと思う。つまり、答えは私たち有権者や市民が自分で考えて決断して政治に求める、あくまでも主役は私たちだ、というふうに頭を切り替えなければダメだと思います。今回の選挙も同じで、ここまで日本がひどい状態になってしまったけれども、答えが単純に政治に任せるという形では何も変わらない。そう思っていますから、今回の選挙が、私たちが自分で考えて決断していくということの出発点になれるかどうか、ということを非常に重要視しています。

田中:「自分で考えて自分で決断する」ということについて、気持ちは分かるけれども、どうやっていけばいいのか分からない、という人も随分多いと思うのですが。


当たり前だと思っていたことが続かない不安定な社会に

工藤:確かに分からないこともあるでしょう。ただ3.11の大震災以降、生活感覚からみても、今の日本の社会では、今まで当たり前だと思っていたことが継続できない、それを大きく変えなきゃいけない、ということに多くの人が気付いたと思うのです。私たちはここが出発点だったと思う。今動いている全体的な仕組みが、ここまで不安定で、問題が多いかということが分かった。それを自分たちの生活なり未来がちゃんと実現できるように自分たちが変えなきゃいけない、というところにみんなが気付き始めたのだと思う。すると、私たち言論NPOの役割というのは、そういう人たちに対していろいろなことを考える判断材料や議論の舞台を提供することです。

 10年前も同じことを言っていたのですが、まさに本当の意味で日本を変えなければいけないわけですから、今回の選挙からそういうことをきちんと始めて、議論の舞台を提供していきたいし、多くの人々の議論を集め、政治家一人ひとりにぶつけようと思っています。その結果、政治家が何を考えているのかということを皆に公開するので、それを見て自分で判断してほしい。言論NPOはそのような触媒の役割をやり尽くしたい。

田中:確かに、原発の運動を見ていても、自分たちで変えなきゃいけない、変えられると感じている市民がすごく増えたと思うのですね。しかも今、インターネットの場を使って気軽に意見が言えるようになってきていますけれど、言論NPOもこうしたツールをふんだんに活用するということですか。

工藤:実を言うと、この映像もそうなのですが。今の社会の風潮と、私たちが感じている社会の本当の変化とは食い違っている気がしています。つまり、政党政治がここまで機能しなくなると、有権者が問われているのに、逆に政治家を当てにしてしまうという風潮が出てしまう。でも、私は今、海外での議論にも参加していますが、世界では市民が自分たちの能力を社会のために使っていて、その中で課題解決をしていく動きが広がっています。つまり世界の動きは、市民が課題解決をしていく動き。日本でも、震災もあっていろいろな形で市民の取り組みが始まっているけれど、その動きが政治の世界に広がっておらず、逆に政治家に期待する動きが目についています。自分たちが社会参加をする中で政治とか政党政治に対し、自分の意見を言う。そうした動きを今回の選挙だけではなくて、自分たちが課題を解決するということの大きな一歩にしなきゃいけない。言論NPOはそのプラットフォームを目に見える形で提供していきたいと思っています。

田中:なるほど、確かにこの課題解決というのは、今はやりの言葉にもなるくらいに関心が高まっていますけど、選挙というのも、市民側からみれば一つの大きな課題だということですね。


課題解決にはみんなの参加が不可欠

工藤:そうですね。それに対して、絶対にみんなが参加しないとダメなのです。この10年間、日本はかなりいろいろなことがあったけれど、日本の課題は思ったより重症になってきている。だけど、未来がないわけではない。ただ、未来は、自分たちが決断し、自分で動くという動きが広がらないと切り開けない。私は、日本はそういう局面になることを、どうしても皆に分かってもらいたい。政治にお任せすることでは、日本に本当の変化が始まらないと思います。私たちもさまざまな議論を提供していきます。だから私たちの活動にぜひ参加してほしいし、注目してほしいなと思っています。

田中:わかりました。選挙というのも、私たちにとっては大きな課題解決である、ということですね。そして言論NPOは、そこに判断材料だけではなく参加の機会も提供してくださる、と。

工藤:そうですね。でもそれは私たちだけではできない。主役はみんななのです。みんなでいっぱい考えて、発言をして、決断して、それを政治に求めていく。そういう流れを作り出したいと思っています。

田中:期待しています。ありがとうございました。



私たちは政治家に白紙委任はしない ―No More Carte Blanche to Politicians―