有権者から政治にマニフェスト逆提案を

2012年12月03日

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有権者から政治にマニフェスト逆提案を

聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)


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「白紙委任しない」の賛同者は千人超えたが、まだまだ足りない

田中:工藤さん、今晩は。いよいよ、選挙に向けた動きが明らかになってきたのですが、以前から、言論NPOでは、「私たちは政治家に白紙委任はしない」という呼びかけを行ってきています。その賛同者が1000人を超えたということですが、今後、どのように発展していくのでしょうか。

工藤:1000人超えたことに本当に感謝していますが、まだまだ数が足りないと感じています。やはり、より多くの人達に、僕らの呼びかけに賛同して欲しいと思います。今の日本の政治に対して、有権者が怒らなければいけない。約束しても途中で変えてしまう。変えるのはいいのですが、何の説明もない。今日も、衆議院の予算委員会を見ていたのですが、変更が当たり前みたいになってしまい、政党が国民に向かい合うという視点を全く感じない。

 しかし、民主主義というのは、まさに有権者が政治を選ぶ仕組みですから、ここで有権者が「これからは政治家に騙されたくない」し、「自分の判断で政治を選んでいく」ということで、全国の多くの人達が名乗りを上げていかないといけない。さもないと、政治側からすれば、全く怖くない。だから、この呼びかけにはやはり数が重要で、いろいろな人達が発言する輪がどんどん広がることによって、政治側が「有権者の声を聞かなければいけないな」と思うようになってくれたらいいな、と思っているわけです。それがゴールではなくてスタートなのです。

 選挙がいよいよ始まりますから、我々は次に向けて準備を開始しなければいけない。そう考えているところです。



田中:確かに、そろそろ選挙が行われるかな、という感じが強くなってきたのですが、言論NPOは、選挙に向けてどのような活動を行っていく予定ですか。


約束になっていなかったマニフェスト

工藤:まず、マニフェストというものが大事です。これは、私たちが有識者を対象に行ったアンケート結果からも明らかでした。確かに、民主党のマニフェストはいい加減だったし、ほとんど実現できなかったけれど、しかし、国民に向かい合う政治をやっていく、国民との約束に基づいて政策を、責任を持って実行していく、ということはどうしても大事なのです。しかし、マニフェストがきちんとした形で有権者との約束になっていないと、私たちは誰に投票すればいいのかが分からない。だから、まず、第1に政党側に、「マニフェストをこういう形で提起して欲しい」ということを呼びかけようと思っています。

 それだけではなくて、今、私たちがどうしても考えなければいけない政策を7つぐらいに絞り込んで議論を始めています。それをベースに、政治家が必ず選挙で国民に明らかにしなければいけない点を列挙して、それを政党だけではなくて、政治家自身に問いかけようと思っています。そして、その内容を全部、有権者に公開していく。つまり、我々は、あくまでもそのチェックをしていかなければいけないということです。そういうことをやるための準備を始めました。

田中:言論NPOのマニフェスト評価は小泉政権の第1期から行われてきましたけど、今までより一歩踏み込んだ感じがしますね。これまでは、政党が出したもの、あるいは政党が行ったものを有り体に評価してきましたが、これからは、マニフェストのつくり方、それから、政策で押さえて欲しい点について、こちら側から提示するということですね。

政治と有権者の間の緊張関係を作り直す

工藤:そうですね。政党政治がきちんと機能して、政党の中でガバナンスがしっかり働いて、政策を決めて、国民に提起して、その実行に対して責任を持つ、という循環が政党の中にあれば、我々は政党のマニフェストを評価するだけでよかったのです。しかし、自民党政権の時にもあったのですが、民主党政権を見ていると、政党が国民に約束をしても政党の中で意見が違う。そういう中で十分に政策の実行ができないということになってくると、政党のガバナンスそのものが非常に脆弱だということになります。そういう状況で選挙になると、我々有権者は、政党の公約を信じて投票しても、それを実現できないということになる。それでは自分達の1票が活かされません。

 なので、私たちは、今の日本が抱えている課題に対して、政治は何を約束するのか、ということを逆提案していかなければダメです。そういう形で、日本の政党政治と有権者との間の緊張関係をもう一度つくり直そう、ということを考えているわけです。

田中:わかりました。政策の質と共に、先程おっしゃいましたが、政党のガバナンスについても問いかけたいということですね。

工藤:そうですね。やはり、日本の政治は答えを出さなければいけない。アジアでは尖閣問題があり、日本の財政も非常に厳しい状況になってきました。今の国会論戦も、今の政党が出している政策も、何をやりたいとか、何の目標を実現するために、どういう方法を用いてやっていくのか、ということが、アウトカム、つまり実現した後の姿を明示した形での問いかけには、まだ全然なっていません。こういう状況では、有権者は政治を選べないから、皆さん困っている。それを変えていくことが、今回、言論NPOの大きな役割ではないか、と思っているところです。

 11月29日に言論NPOの11周年パーティーがあるのですが、そこに向けて、有権者が怒っていく。今度からは自分達で政策を考えるぞ、という呼びかけの輪をどんどん広げたいし、その次には、そういう風なアクションに踏み出していかないといけないかと思っています。


政党の議論をすべて有権者に明示する

工藤:今度の選挙で、言論NPOは、日本の民主主義を活かすために徹底的に取り組もうと思っています。

田中:そういった慌ただしい中で、先程もおっしゃいましたが、11月29日に10周年パーティーではなく、11周年パーティーをやるとのこと。「言論NPOと次の日本を語る会」を開催するそうですが、どんな催しになりますか。

工藤:日本の将来や、民主主義の状況、それから世界の中で日本が何をすればいいか、ということを、きちんと考えていかなければいけない局面にきています。ですから、言論NPOは、そういう議論のプラットフォームとしての役割をきちんと果たしたい。そのためには、我々がいろいろな人達と議論したり、言論NPOそのものがもっと大きなものになっていかなければいけない、と思っています。

 日本の民主主義を強いものにするためにも、我々は皆と対話するような場を作りたいのですね。今度のパーティーにはいろいろな人達が参加する予定になっているので、そこでみんなと意見交換ができないかな、と思っています。

田中:参加型をめざしているということですね。
工藤:そうですね。
田中:お忙しいと思いますが、がんばってください。期待しています。


⇒ 「私たちは政治家に白紙委任はしない」の呼びかけへの賛同はこちらから

⇒ 言論NPO11周年パーティー「言論NPOと次の日本を語る会」概要はこちらから