【vol.89】 論点「小泉首相ではこれ以上の改革は限界なのか」 工藤泰志

2004年7月13日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.89
■■■■■2004/07/13
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●INDEX
■ 論点「小泉首相ではこれ以上の改革は限界なのか」言論NPO代表・工藤泰志


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■ 論点「小泉首相ではこれ以上の改革は限界なのか」言論NPO代表・工藤泰志
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参議院選で有権者が下した審判は、ある意味では予想通りの結果である。今回の参議
院選で有権者は小泉首相に「白紙一任」をもはやしないことを決めたのであり、多く
の有権者は年金や多国籍軍への派遣などを国民への十分な説明もなく強行する小泉改
革の進め方に不安を抱き、現状のままではこれ以上の改革の実行は難しいとの判断を
行ったともいえる。

小泉改革のあり方について私たちは参議院選前の告示前に緊急に行ったアンケートで
小泉改革は限界を迎えたのではないか、という初めての認識を打ち出し、問いかけを
行った。この問いかけに対する回答は予想を上回るものであった。

回答数の4割近い最多の回答を集めたのが、「小泉改革にはそもそも限界があったこ
とが明確化してきている」であり、その他にも実績への疑問や国民への説明不足を指
摘する声がそれぞれ3割近くあったからである。今回の参院選で、自民党は負け、首
相の求心力に疑問が出始めたが、ある意味でこうした改革自体への疑問がその一つの
背景にもあると私たちは考えている。

参院選後このまま衆議院の解散・総選挙がない限り、今後3年間にわたり大きな国政
選挙がないことになる。この間、日本は、将来に向けた大きな選択をいくつも迫られ
ることになり、その多くは国民が最低限の合意を形成しておかなければ、改革に向け
て大きく舵を切ることができない難問ばかりである。私たちがこうした「改革の限
界」を問いかけたのは、少子高齢化社会への移行に向けた大きな制度設計が必要な現
局面において小泉改革からは旧来システムを壊すだけで、日本をどう作り変えるかに
ついてのビジョンも戦略も提示されていないこと、さらに今回の年金問題などのよう
に有権者と合意を形成する局面でそれを行おうとしていない改革の姿勢に疑問を感じ
たからだ。

この点において、選挙戦の議論でこうした疑問に対する答えが提示されたわけではな
い。むしろ、参議院選ではそもそも国民に説明しなくてはならない、多くの問題が選
挙後に判断が先送りされている。議論は景気の回復を無理に改革の成果と結びつけた
り、最大の争点である年金改革でも、その中身が大きな対立点になったわけではな
い。強行採決の是非や定義や中身が全く曖昧な一元化の議論に加わるか加わらないか
が論点になっただけである。

民主党は躍進をし、政権交代に王手をかけたが、対案が十分に提示されたわけでもな
い。

つまり、政策の対立軸よりは小泉改革の進め方や首相の姿勢自体が大きな争点になっ
たように思われる。

小泉首相は選挙後、続投を表明したが、私たちが注視しているのはこの選挙結果を受
けて、こうした改革への疑問にどう答えるかである。社会保障制度や三位一体、そし
て郵貯改革など改革の本丸が選挙後のこれからまさに本番を迎える。小泉首相もこれ
からの改革の推進に対してはまずビジョンとロードマップを国民に提示し、その上で
国民に十分な説明をしながら施策を進めるのでなくては、選挙で示された不信や改革
への限界の疑問の解消はできない。それができるかどうか。改革はその真価を問われ
ている。

小泉改革に対する評価は様変わりし始めた。もはや浮付いた人気はなく、実績を判断
し始めた有権者がいる。このような有権者との緊張感ある関係は望ましいものであ
る。小泉首相に本当に新しい日本を作ることができるのか。こうした政策の実行過程
を検証し続けていくつもりである。

https://www.genron-npo.net/debate/contents/040712_o_01.html

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