20周年を迎える言論NPOへのメッセージ

2021年11月12日

小倉 和夫(言論NPOアドバイザリーボード、国際交流基金顧問、元駐韓国・駐フランス大使)

 今回行われた衆議院議員総選挙の結果を見ても分かる通り、日本国民の中央政界の政治に対する真の意味での関心や参加意識は高いとは言えません。また、多くの国民は現状に不満を持ちながらも、全体として特定の理念に基づく大きな変革を望んでいないように思われます。

 こうした状況の下で大切なことは、国民一人一人が国政に対する責任感と参加意識を高めることでしょう。そのためには国民一人一人の意見の発表の場を広く提供することと、市民に直接かつ継続的に政治的メッセージを届けることが重要でしょう。

 そのためには、世論の動向を終始見極めつつ、市民に対して問題意識を高める発信を継続して行っている言論NPOのような団体の活動が極めて重要だと思います。その際、言論NPOがこれまで行ってきた活動に見られるように、国際的視野を忘れないことが大切でしょう。

 これからの言論NPOの活動において特に期待したいことは、中国の台頭と、朝鮮半島情勢の不安定、ミャンマー情勢に見られるような東南アジア各国の政治の動揺などを踏まえ、日本の国際社会における役割のあり方について、国民一人一人の問題意識を高めるような活動を教化してほしいことです。

 そのためにも言論NPOの活動を支援する方々の増大と連帯を望む次第です。

田中 達郎(言論NPO理事、シティグループジャパン、シニアアドバイザー)

 言論NPO創立20周年を心よりお慶び申し上げます。「勇気あるリベラリズム」を標榜し一貫して中立性、独立性、非営利を保ち、国際協調、真の民主主義のための「言論外交」を追求してきた工藤理事長以下関係者の皆さんの努力に敬意を表します。

 世界を取り巻く環境は益々厳しい。地政学的課題、人口動態、社会経済経営的課題、気候変動を始めとするESG/SDGs的課題等々、そして日本はそれぞれに日本的課題も抱えている。今正に我々は現実を直視検証し、確り戦略を練り、グローバル化の中で「民主主義国家ニッポン」の立ち位置を明確にしていかなくてはならない。

 そうした中で日本を代表するシンクタンクとして言論NPOの役割は益々重要になっている。常に世界のプロを相手に論陣を張るというミッション。一方で若い仲間たちに輪を広げ将来の日本を真剣に考え議論する場を提供し、様々な課題解決を追求するというミッション。具体的な活動を通じ国内外から広く信頼される「言論NPO」、20周年を機に更なる躍動を心から願って已みません。

岡本 薫明(言論NPO理事、前財務事務次官)

21世紀のスタートとともに立ち上がった言論NPOが20周年を迎えます。しかし、この20年で国際経済社会そして民主主義そのものがこれほどまでに変容することは誰が予想できたでしょうか。第4次産業革命といわれる急速なデジタル化の進展による技術革新は、とてつもないスピードで社会、経済を変化させ、中国の台頭等により国際秩序も大きく変動しています。コロナ禍はこの変化をさらに加速させています。そうした中、先進国の中でも民主主義が大きく揺らぎつつあります。誰もがあらゆる情報にアクセスできる反面、何が客観的で中立的なのかの判断が非常に難しくなっています。

この広大な情報の海の中で、物事の本質に向き合い、中立かつ信頼できる立場で発信をするアイランド(島)が求められていると思います。この20年まさにその活動を進め、国際的にも信任を得てきたのが言論NPOです。皆様とともにこれからの世界を議論していきたいと思います。

大塚 陸毅(東日本旅客鉄道株式会社顧問)

この20年で世界情勢は一変しました。中国の台頭、イギリスのEU離脱、民主主義と権威主義の対立、気候変動、難民問題。ますます複雑化、不安定化する世界情勢において、我が国も大変難しいかじ取りを求められています。

 特に、アジアとの関係をどう築くかという点は、これまでにない世界的な関心事となっています。近年、国際社会における我が国の存在感低下が叫ばれておりますが、地政学的に見ても日本に課せられた期待、役割は大変大きいと言えます。今こそ日本が積極的に議論を主導しなければなりません。

 残念ながら現在の日中関係は必ずしも良いとは言えません。しかし、対話を閉ざすべきではありません。20年間アジアを中心に対話を継続してきた言論NPOの役割はますます重要になるでしょう。引き続き言論NPOが積極的に民間対話をリードすることを期待しています。

中曽 宏(大和総研理事長、前日本銀行副総裁)

 民主主義の危機が叫ばれ、外交・安全保障上の問題がますます大きくなる中、言論を通じて課題を解決しようという言論NPOの活動に期待されているものはまことに大きい。建設的な議論を避ければ政治的には狭小なナショナリズムが台頭しがちとなり、自由な議論が失われれば経済的には縮小均衡と長期停滞に陥る恐れがある。民主主義の維持・発展と資本主義の深化のためには、今こそ各界のオピニオンリーダーによる議論を活性化させる必要がある。

 20年継続してきた実績を活かして、理念や理想だけではない、現実的で頑健な議論を蓄積する役割を、言論NPOがこれまで以上に担っていくことを願っている。

岩本 敏男(NTTデータ相談役)

 設立20周年おめでとうございます。私は東京―北京フォーラムを中心に15年以上お世話になっていますが、中国とのビジネス関係は四半世紀を超え、中国には多くの知己がいます。最近では経済同友会中国委員長として、「どのように中国と向き合っていくか」について報告書として発表してきました。その骨子は、企業経営者が自ら現地に赴いて、自分の目で「中国の今」を追い続けることが必要ということです。

 言論NPOは中国のみならず世界各国の有識者との連携・対話を重視し、様々な取り組みを展開されています。米中対立が激しさを増す中、世界各国で分断が起き民主主義の価値が改めて問い直されている現在、こうした対話によって相互理解を深め、世界を前進させていく取り組みは大変貴重なものです。人々の行動は得られる情報の量と質により決定されます。信頼関係の醸成もこれなしでは生まれません。その意味からも言論NPOの今後の活動に大いに期待しています。

吉田 徹(同志社大学政策学部教授)

 シンクタンクは、次の時代の最善の選択肢(オルターナティブ)を示すために欠かせない国家と社会の頭脳です。その中でも、言論NPOは日本で数少ない民間・独立系のシンクタンクであり、しかも内政と外交の両次元にまたがって、精力的な民間外交を担っています。いかなる党派性を持たず、民間の出資でもって成り立つシンクタンクであることは、優れたシンクタンクであることの証左であり、信頼を寄せてもらうためのグローバルなスタンダードです。日本では稀有なそのようなシンクタンクが20年間続いてきたことを過小評価すべきではありません。

 人新生時代、新たな権威主義政治の台頭、AIによるシンギュラリティ下での労働、情報社会の中の自由と安全、核拡散、グローバルな人間の移動、国際社会を安定させる覇権国の不在等々、国際社会が直面している問題は数えきれないばかりか、増える一方です。言論NPOがそうした課題について長期的かつ客観的視野から積極的に取り組んでいかれることを願って止みません。

神保 謙(慶應義塾大学教授)

 20周年誠におめでとうございます。20年前の設立前後に、工藤代表が「新しい言論の場を作りたいんだよ」と熱い思いを、駆け出しの研究者だった私に語ってくれたことを思い出します。NPO運営を取り巻く環境が厳しい中で、愚直に言論の大切さを一貫して唱え続けたことが、内外多くの方々の支持と共感を得たのだと思います。言論NPOの理念と活動に微力ながら奉仕したい、というのが20年後の私の思いです。

 民主主義や平和の大切さを説くことは、決定の権力や現実主義を前にして、ときに弱々しく響きがちです。それでも言論人の世論調査、政党のマニフェスト評価、主要国との対話によって、言論の力を導き出し、民主主義や平和のために何をすべきかという行動を促した功績は、どのシンクタンクも達成し得なかったことです。工藤代表と言論NPOスタッフを祝福し、今後のご発展をお祈りいたします。

マニヤン麻里子(TPO代表取締役)

 20周年という大切な節目の年に言論NPOに出会い、参加することを決めました。

 私は5年前に起業をしました。子供を抱えて働く中で、今自分が子供世代の社会に向けた課題解決をしていかなければならない、と思ったからです。自分自身の子供が社会に飛び立つまではあと少し。一つでも多くの課題を解決したいと、日々の活動に取り組んでいます。

 その子供たちは日仏二つの国籍を持っています。私は日米仏の3カ国で育ってきました。「国際結婚は、大変なのでは?」と良く聞かれます。歴史も教育も何もかもが違うからでしょう。しかし、違いがあるからこそ、より多くの対話を心掛け、家族で自分たちなりの新しい考え方や生き方を創り出しています。

 国家間も同様に、違いがあるからこそ多くの対話を重ねることで、新しい価値を生み出すことができるのではないかと思っています。言論NPOを通じて「対話」を私たち世代、そして子供世代にまで広げていきたいと思います!

松田 亜有子(アーモンド株式会社代表取締役)

 言論NPO設立20年、おめでとうございます!

 クラシック音楽史上最大のスターにして革命家ベートーヴェンは、王侯貴族層しか聴くことのできなかった音楽を市民層へ拡げました。シラーの『歓喜に寄せて』より「すべての人間はみな兄弟である」と高らかに歌われるベートーヴェンの交響曲第9番は、今も地球上で燦然と輝いています。

 第9の構想はベートーヴェンが22歳ボン大学で学んでいた時と言われています。青年期の着想から30年、思想の軸はぶれず完全無欠の交響曲が仕上がりました。ベートーヴェンは意図的に誰もが参加できるように作曲し、市民が主役となり、市民が創り上げる世界をつくりました。人類愛を歌い上げる普遍性を前面に押し出した、この音楽の前と後では、大きく音楽が変わります。

 言論NPOが誕生して20年。私は代表の工藤さんとベートーヴェンがいつも重なります。言論NPOが創る"対話"の重なりが、ベートーヴェン交響曲第9番のように歴史を変えていくのではないか、と、これから言論NPOによるどんな交響曲が生まれていくのか、楽しみです。

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