【座談会】政治資金の流れを国民の監視下に

2002年5月15日

yasuhuku_k020425.jpg安福謙二 (安福法律会計事務所弁護士)
やすふく・けんじ

1972年東京大学経済学部卒、78年より弁護士。公益法人をはじめとして幅広い分野を専門としている。

odachi_m020425.jpg尾立源幸 (尾立・村形会計事務所)
おだち・もとゆき

1963年生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒。アーサーアンダーセンを経て、94年より尾立・村形会計事務所。産業医科大学で非常勤講師、主に著書「決算書の読み方」など多数。

ogawa_m020425.jpg小川真人 (公認会計士)
おがわ・まひと

1983年慶應義塾大学商学部卒。1990年より公認会計士。現在、新日本監査法人にて、日本ならび海外の金融機関に関する会計監査、特別監査、リスクマネージメント等のコンサルティングに従事する。米国会計基準にも精通している。

hayashi_n020425.jpg林南平 (マッキンゼーアンドカンパニー)
はやし・なんぺい

1974年生まれ。1996年東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行入行。2000年より現職。現在公認会計士となる資格を有している。

概要

加藤紘一氏や田中真紀子氏に関する一連の事件は、政治資金の流れの不透明さを浮き彫りにした。改正政治資金規正法では、不透明になりがちな企業からの献金を規制し、年一度の収支報告義務も課したが、逆に「多くの抜け道を生み出し、結果的に今回の事件が起きるきっかけとなった。今回の座談会では、現役の弁護士・公認会計士が一同に会し、法律・監査という2つの視点から、改善策を検討した。

要約

加藤紘一氏が事務所経費の私的流用を認め、議員を辞職した。加藤氏は自民党幹事長と政調会長を歴任し、平成6年の政治資金規正法改正では中心的役割を果たした。その加藤氏が、自らの資金流用は規正法に違反するかどうかを、総務省の官僚に問い合わせたという。立法を担う国会議員の無知蒙昧さに、弁護士の安福氏は怒りをあらわにした。一方、公認会計士の3氏は、政治資金があらゆる面で免税措置を受けていることに異を唱える。彼らは「公平性の原則」を根拠に、政治家といえども個人生活の部分については税金を課すべきで、そのためのルール作りが急務だと主張する。

また、田中真紀子氏は国庫から支出された秘書給与を、袋ごと自らが役員を務めるファミリー企業に渡したという。真相はいまだ明らかになっていないが、どうやら企業が秘書に出向社員としての給与を渡し、真紀子氏が「名義貸し」代を手渡していたようだ。法律上、秘書は企業に対して「寄付」したことになるが、問題の本質はそこではない。公設秘書に与える名目で支出された公金を他人が得ているとすれば、れっきとした「詐欺」が成立する。秘書給与はあくまで秘書本人に与えられるものだからだ。

こういった不透明な政治資金の流れを規制するためには、収支報告書を公的監査の下に置くことが必要だが、「監査」は、情報開示のルールがあってはじめて機能する。公認会計士の3氏は、貸借対照表や損益計算書など、企業会計に準じた収支報告書を政治家に提出させるルールを作るべきだと主張する。政治資金規正法を改正して資金を政党に集中させ、透明化を図る方法もあるが、複雑極まりない政治資金ルートを一つにまとめるのは容易ではない。当面の間、もっとも有効な規制手段になりえるのは、規正法に違反した場合の罰則を厳しくすることだ。


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