【座談会】「エコノミスト会議」 コイズミノミックスで信を問え

2002年5月15日

takahashi_s020710.jpg高橋進 (日本総合研究所調査部長)
たかはし・すすむ

1953年東京都生まれ。76年一橋大学経済学部卒業後、住友銀行に入行。90年日本総合研究所着任。現在同社調査部長。98年立命館大学経済学部客員教授、2000年より早稲田大学大学院アジア太平洋研究科客員教授に。現在、財務省アドバイザリー・グループ・メンバー、公正取引委員会金融研究会委員、法務省出入国管理政策懇談会委員を務める。テレビ東京系「ワールド・ビジネス・サテライト」などに出演。

feldman_r020710.jpgロバート・フェルドマン (モルガンスタンレー証券調査部長・チーフエコノミスト)
Robert Alan Feldman

1953年生まれ。イェール大卒、MITでPh.D.取得(経済学)。NY連銀、IMF勤務など経て現職。著書に「日本の衰弱」「日本の再起」。 Institutional Investor誌「The All-Asia Research Team Poll」で第1位 を獲得。

koll_j020710.jpgイェスパー・コール (メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)
Jesper Koll

ジョンズ・ホプキンス大学卒。1984年OECD調査統計部、京都大学経済研究所研究員、SGウォーバーグ証券、JPモルガン調査部長、タイガー・マネジメントを経て、99年メリルリンチ証券入社。日本経済の調査に携わり、経済産業省の産業金融小委員会等、政府諮問委員会にて政策提案策定に参画。著書に「日本経済これから黄金期へ」。内外の雑誌・新聞に多数寄稿。

masuda_y021204.jpg益田安良 (東洋大学経済学部教授)
ますだ・やすよし

1958年東京都生まれ。京都大学経済学部卒業後、富士銀行に入行。調査部など経て、88年より富士総合研究所に転出。ロンドン事務所長などを経て、 2001年4月より主任研究員に。02年4月より東洋大学経済学部教授に就任。主な著書は『徹底予測 日本経済これから10年』、『金融開国』等。

概要

言論NPOエコノミスト会議のメンバーは、小泉内閣が6月に発表を予定している税制改革の方針について議論した。参加メンバーは、日本総研・高橋氏、メリルリンチ証券・コール氏、モルガン・スタンレー証券・フェルドマン氏、東洋大学・益田氏の4人。議論は税制改革ビジョンを国民に示した上で、選挙で信を問うべきだという点で一致しつつも、先行減税の是非、経済活性化との関連などの議論では意見が分かれた。

要約

議論は「財政健全化、経済活性化、高齢化社会への対応という3つの観点から、税制の抜本的改革が必要不可欠だ」という高橋氏の発言から始まった。この発言を受けて益田氏は「税制は公平性・中立性が保たれるべきであり、短期的な景気刺激策や財政健全化と税構造の問題はきちんと分けて議論しなくてはならない」と応じる。

これに対してコール氏は、「そもそも抜本的な税制改革を打ち出せるほどの政治的な力が小泉政権に残っているのか」と疑問を呈しつつ、ここで中途半端な改革案を出せば、ますます国民の失望が広がるという懸念を示す。

経済財政諮問会議、政府税制調査会、自民党税制調査会がそれぞれに税制改革を検討し、議論が収れんしない現在の状況について、フェルドマン氏は「原則の混乱と、決定メカニズムの混乱に起因している」と指摘する。つまり、税の3原則として長く掲げられてきた「簡素、中立、公平」という言葉のあいまいさ、政府と財務省と党の意思決定の三重構造が抜本的改革を遅らせているというのである。

税制改革は日本の将来像をどう描くのかというグランドデザインの問題と不可分だが、「日本の将来像についてのコンセンサスが国民はおろか、閣僚の間でも得られていないのではないか」という高橋氏の見解には、他の3氏も同意。小泉首相は税を含めた改革ビジョンを早急に国民に示し、選挙を通じて信を問うしかないという結論に至る。

レーガン政権、サッチャー政権の例を見ても、税制改革の実現には3年から5年の歳月を要している。法人税率や消費税率をどうするかといった個別論を詰めるのには当然時間がかかるが、改革の大方針としてのビジョン策定にはそれほど時間は要しないはず。それを早く示さないと、日本に本当の危機が来るまで時間がない。また、ビジョンを示して国民の支持を得ない限り、政権の基盤は安定せず、改革の実行には着手できない。こうした点でも4氏の意見は一致した。


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 言論NPOエコノミスト会議のメンバーは、小泉内閣が6月に発表を予定している税制改革の方針について議論した。参加メンバーは、日本総研・高橋氏、メリルリンチ証券・コール氏、モルガン・スタンレー証券・フェルドマン氏、東洋大学・益田氏の4人。議論は税制改革ビジョンを国民に