菅政権は国民の政治不信を治せるか
―政策評価作業第三弾「安倍政治の評価」

2020年9月25日

言論NPOは安倍政権の評価作業第3弾として、安倍政治のあり方そのものについての評価を行いました。議論には、伊藤俊行・読売新聞編集委員で、牧原出・東京大学先端科学技術研究センター教授、吉田徹・北海道大学大学院法学研究科教授の3氏が参加しました。司会は言論NPO代表の工藤泰志です。

 まず、安倍政権の全体的な評価としては、まず長期安定政権をつくり上げたこと、さらにそれをもとに特に外交で、トランプ大統領と突出した関係を作り上げるなど一定の成果があった、ことは認めるべきだとの評価では3氏とも基本的に一致しました。

 一方で、長期政権のメリットを活かせず、相次ぐ選挙で勝利し、腰を据えた政策遂行ができなかったことはマイナスの評価要素であるとの指摘も見られました。

 この中では、7年8カ月に及ぶ安倍政治は当初は「戦後レジームからの脱却のために、長期安定的な政権基盤を作り上げることを最優先課題にしたが、2013年の参議院選以降、相次ぐ閣僚スキャンダルを受けて、「安倍スイッチ」が入り再び解散を行ったことで、「腰を据えて取り組むべき余裕あるペースを自分で壊してしまった」との発言もありました。


前後半の分かれ目は2015年の総裁選挙、後半は責任政治の欠如が問われた

 首相としての資質に関しては、言論NPOが定期的に行う有識者アンケートでは、第二次政権の安倍氏が歴代政権と比べて高い評価となったものの、「チームづくり」や「国民への説明」の項目に関して厳しい評価となったことに対しては、牧原氏はむしろ逆に、政権当初は安倍氏の個人の弱点を補う形でチームが機能したことが、長期政権化した大きな要因だったとした上で、後半は、チームの新陳代謝ができなかったことが、官邸官僚の側近政治的な傾向を強め、その元では首相は「辞めるべくして辞めた」と語りました。

 安倍政権の前半と後半を分けるのは、無投票再選を果たした2015年の自民党総裁選、との見方は会議では共有されており、後半には利益誘導的な不祥事が相次いで発覚し、慢心や驕りとしか言えない行動が政権の行動を縛ることになったこと、霞が関ではこうした現象を「政策の利権化」と表現する人もいたことなどが、報告されました。

 欧米各国でみられる民主政治の「分断」やポピュリズムとの関連での安倍政治の評価も行われました。これには、欧米とは根底の社会構造は異なるため、安易な比較はできないとの指摘もありましたが、安倍政権の政策自体は「一億総活躍」など総コンセンサス型が多かったが、首相個人、さらにその周辺の振る舞いはまさしく分断型であったという指摘が相次ぐとともに、こうした分断は「論破型の政治家」が蔓延る国会も同様の問題を抱えている、との見方が出されました。

 こうした評価をもとに、次期政権に問われる政治課題が最後の検討課題となりましたが、ここでは安倍政治の後半に問われた、責任政治の欠如の回復が、次の政権に引き継がれた、課題だという見方で3氏は一致しました。政治が国民の「信頼」をどのように回復するかは日本政治に突き付けられた課題、とのいうのが評価会議の結論です。

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