立候補者アンケート「あなたは政治家として何を実現しますか」分析結果報告

2012年12月14日

 言論NPOは、16日投開票の衆議院選に向けて、日本が抱える主要課題に関して候補者がどう考えているのかの緊急アンケートを行い、14日その結果を公表した。

 アンケートでは原発、経済成長、社会保障、財政再建、外交、一票の格差など言論NPOが日本の主要課題だと考える6つの分野について行ったもので、候補者の4割は「このままなら日本の財政再建は不可能」と考え、7割が「日本の社会保障制度も破綻しかねない」と考えていることが分かった。またTPPの交渉参加では、民主党が59.2%、公明党も25.0%の候補者が参加に賛成しているが、自民党の候補者では8.1%に過ぎなかった。

 全国で13党などの1504人が立候補し、480の議席を争っているが、今回のアンケートには民主党、自民党、公明党、日本未来の党、日本維新の会、共産党、社民党、みんなの党、国民新党、新党大地、新党日本、幸福実現党の12党の789人が回答した。

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 この調査ではまず政治家になった場合、何を実現したいかを聞いている。


あなたが今回の選挙に当選し、政治家になった際、特に力を尽くして実現したい政策は何ですか。【2つまで選択、N=781】

あなたが今回の選挙に当選し、政治家になった際、特に力を尽くして実現したい政策は何ですか


 それによると「脱原発」が43.0%と最も多く、「経済成長」が39.7%、「持続的な社会保障制度の構築」が26.1%で続いている。

 自民党候補で最も多いのは「経済成長」の73.4%で「財政再建」は14.8%だった。民主党候補は「社会保障制度の構築」が58.3%と最も多いが、「脱原発」は16.5%である。「脱原発」を候補者が最も多く選んだ党は、社民、共産、日本未来、新党大地、みんなの順である。

 次に所属政党のマニフェストについて「十分納得して責任を持って取り組む」としたのは全体の83.3%だが、民主党と日本維新の会の候補者では62%程度である。ただ、どの党の候補も「納得できない公約も責任を持って取り組む」か、「党内で変更するようにつとめる」と回答している。


 財政再建に関しては44.0%が、「先の(通常国会で成立した)一体改革に加え追加の計画がないと財政再建は不可能」と回答したのに対し、「一体改革で財政再建が可能になった」と答える候補者はわずかに4.0%だった。また42.1%が「財政破綻は避けられない」と答えている。


あなたは、現状のままで日本の財政再建が可能だと思いますか。【単数回答、N=741】

あなたは、現状のままで日本の財政再建が可能だと思いますか

 自民党候補は92.2%が「追加の計画がないと再建は不可能」と答えており、共産党候補の88.0%が「破綻は避けられない」と回答している。
これに関連して、政府の財政再建の目標である2015年のプライマリーバランスの赤字半減、2020年の黒字化に関して、「達成できる」と回答する候補者は12.9%に過ぎず、49.9%が「達成ができないので、(目標の)時期は変更すべき」と答えている。


あなたは現状でその目標を達成できると思いますか。【単数回答、N=716】

 「達成できる」と考えている候補者が最も多いのは民主党の51.0%で、公明党の46.2%が続く。自民党の候補者で「達成できる」と見ているのは19.2%に過ぎず、38.3%は「達成できないので(目標の)時期は変更すべき」、21.7%は「より厳しめの目標にすべき」と回答している。

 「財政再建で最も決め手となる政策」では、「経済成長」が46.9%で、「その他」の37.5%、「無駄の見直し(社会保障除く)」が13.2%で続いた。「(社会保障の)給付の抑制」は1.3%、「増税」は0.9%と、有権者に負担を迫る項目を選ぶ候補者はごく少ない。ただ、この「その他」では経済成長や増税、支出カットなど全ての政策を投入すべき、とのコメントも多い。

 消費税の増税に関しては、「引き上げ自体を見直すべき」が57.8%と最も多く、「経済状態を判断して延期も検討」が21.2%である。「景気後退が深刻化しない限り引き上げるべき」は19.0%だった。


消費税は、2014年4月に8%、2015年10月に10%にそれぞれ引き上げられることが決まっています。あなたは、この消費税の引き上げをどのように判断していますか。【単数回答、N=770】

 政党別では「引き上げるべき」が最も多いのは民主党の67.3%で、自民党が45.0%で続いている。民自公三党の9割を超える候補が、「経済状況が大きく落ち込めば延期」、「そうでなけれ実施」と回答しているが、日本未来、共産、みんなの党、社民は「見直し」が9割を超えている。

 次に「高齢化の中で日本の社会保障制度が今後も持続可能か」の質問では69.3%の候補者が、「このままでは破綻しかねない」と回答している。「すでに破綻している」も12.1%あり、「持続可能」と見ている候補者は16.1%しかいない。


あなたは、これから急激に進む高齢化の中で、現在の社会保障制度は持続可能だと思いますか。【単数回答、N=766】

 「すでに破綻している」が最も多いのは、日本維新の会の候補者の52.4%で、「このまままでは破綻する」も45.1%ある。これに対して、公明党は60.0%の候補者が「持続可能」と答え対照的になっている、自民党の候補者は、「持続可能」が24.4%だが、「このまままでは破綻する」が66.1%ある。

 社会保障制度の改革で最優先で取り組む課題で、最も多いのは「年金制度の抜本的な改正」の76.3%で、「医師数の不足や偏在の解消」の39.7%、「医療保険制度の改革」が28.2%で続いている。政党別では、この年金制度の抜本改革をほとんどの党の候補が選んでいるのに対し、公明党は0%、自民党は47.2%だった。


 TPPへの交渉参加では、「参加すべき」と回答したのは28.6%、「参加すべきではない」が62.2%である。政党のマニフェストでは、TPPの交渉参加を公約で宣言しているのはみんなの党しかなく、ほとんどの党が反対か、曖昧で分かりにくい表現になっている。


TPPへの交渉参加に対するあなたの態度を明らかにしていただけますか。【単数回答、N=767】

 しかし、候補者では民主党が59.2%、公明党も25.0%、日本維新の会も90.1%、みんなの党は97.7%が交渉参加に賛成している。これに対して自民党の候補者で交渉参加に賛成したのは8.1%しかない。

 これに関連して、日本の10年後の水田農業をどのようにしていくのかでは、「兼業や小規模経営も含む全ての農家の継続」を目指す候補が77.5%、大半が「大規模農家になる農業」を目指すのが17.5%と、規模拡大や産業としての農業を明確に目指す候補は少ない。

 大規模農業を目指す候補が多いのは、日本維新の会の50.6%、みんなの党の45.2%で、民主党と自民党はそれぞれ17.3%、17.2%で並んでいる。


 原子力発電に関しては、62.0%の候補が「将来的なゼロ」を目指しており、「徐々に依存を減らす」が17.4%、「今後も原発に依存すべき」が3.6%となっている。


あなたは将来の原発依存についてどのように考えていますか。【単数回答、N=742】

 将来的に「原発ゼロ」を目指している候補者は、みんなの党と新党大地の全候補者と、日本未来の党が95.7%、公明党が92.9%、社民党が91.3%、そして民主党が81.4%と大部分となっている。日本維新の会も「将来的にゼロを目指す」が63.8%と最も多いが、「徐々に依存度を減らす」も33.8%ある。
 自民党は逆に「ゼロ」は27.5%だが、「徐々に依存度を減らす」が58.3%と最も多い。 

 今後の原発政策に関しては、①核燃料サイクルの継続は77.7%の候補者が反対しており、②原発の海外輸出も76.7%の候補者が反対している。また電力制度改革では、③電力の発送電分離を進める、に賛成する候補者は89.2%、④総括原価方式を改める、に賛成の候補者も91.8%、⑤電力の地域独占体制を改めて電力自由化を進めるも88.3%の候補者が賛成している。

 国と地方の関係や外交問題、そして政党助成金などの問題も聞いている。
 
 将来的に地方は道州と基礎自治体の二層制を目指すのが39.1%と最も多く、広域連合、都道府県、基礎自治体、あるいは道州、都道府県、基礎自治体の三層制を目指す候補者はそれぞれ16.3%と7.7%で続いている。
 その他は27.4%で多いが、現行制度のまま、道州制に反対などが多い。
 政党の中では二層制を目指す候補者が多いのは、公明党が85.7%、日本維新が75.6%、みんなの党が92.9%である。自民党は49.1%、民主党も42.7%と半数近くがこの二層制を選んでいるが、ほかの三層制も含めて意見がばらけている。

 尖閣諸島の問題で日本政府がとるべき対応では、「主権は主張するが、軍事紛争にならないように交渉する」、が69.2%で最も多い。「日本の主権を断固主張する」は、16.5%程度である。ただ、自民党と日本維新の候補者には「日本の主権を断固主張する」がそれぞれ32.8%、25.9%であり、特に維新の会の候補者の53.1%が「国際司法裁判所への提訴も含めた決着」を選んでいる。


あなたは、尖閣問題で今後、日本政府がとるべき対応についてどう考えていますか。【単数回答、N=769】

 最後に政党に対する政党助成金と一票の格差に対する取り組みを聞いている。

 この政党助成金は必要か、必要でないかは意見が真っ二つに分かれている。「必要だと思う」候補者は、「どちらかといえば必要」も加えて52.2%、「不要」と考える候補者は、「どちらかといえば不要」も加えて47.1%である。

 ただ、この「不要」が多いのは、共産党の候補者の回答が寄与しているためで、基本的にほかの党の候補者は「必要」と考えている。

 一票の格差の問題では、「選挙後にその是正が図られた後に、もう一度選挙をやり直すべきか」を聞いている。これに対して「やり直す必要がある」と答えた候補者は42.7%、「やり直す必要はない」が53.6%である。


今回の選挙は違憲状態となる可能性があります。選挙後に一票の格差が是正されますが、その後すぐに選挙をやり直す必要があると思いますか。【単数回答、N=715】

 これを政党別にみると、「やり直すべき」という回答が多いのは、日本未来の党が48.9%、共産党の76.7%、社民党の68.2%などで、民主党は21.3%、日本維新の会が23.8%、みんなの党は26.2%だが、自民党は6.0%、公明党は0%だった。


【アンケート結果概要】