世界の平和と「核のない世界」に世界が結束する、
その起点となった被爆地・広島で行われたG7サミットの報告

2023年5月26日

 米・外交問題評議会(CFR)のウェブサイトに、先日開かれたG7広島サミットについて、英チャタムハウス、フランス国際問題研究所、ドイツ政治安全保障研究所、イタリア国際関係研究所の代表者のコメントと共に代表・工藤のコメントが掲載されました。
(CFRの掲載サイトはこちら)


言論NPO代表 工藤泰志


 被爆地・広島で5月19日から行われた2023年のG7サミットは、ウクライナ戦争の終結に向けG7メンバーのリーダーに加え、インドやインドネシア、ブラジルといった新興国などから招待された8人の首脳、さらにゼレンスキー・ウクライナ大統領も駆けつけた異例づくしの会合となった。


「核なき世界」の実現に向けた起点となった広島サミット

 議長となった日本の岸田首相が、今回のサミットをG7の結束や首脳宣言をまとめる場としてだけではなく、ウクライナ戦争の終結や「核なき世界」に向けて、世界のあらゆる国が力を合わせ、新しい行動を始めるための起点にしたいと考えていたことは間違いない。

 サミットの首脳宣言が最終日ではなくその前日に公表されたのはそのためであり、最終日には、G7のメンバーに加えてゼレンスキー大統領や招待国の8人の首脳も出席する「ウクライナ」と「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」の二つのセッションが行われている。

 岸田首相はサミット前には、「核兵器のない世界という理想は諦めてはならず、そのために大きな方向を示したい。広島はそれにふさわしい場だと期待している」と語っていたが、それが、核軍縮に焦点をあてたG7首脳の初の「広島ビジョン」の公表に繋がった。広島は、世界が平和と「核なき世界」を考えるための、「これ以上はない舞台」となったのである。

 出席した世界を代表する各国首脳は、核保有国の米英仏とインドも含めて、原爆死没者慰霊碑に献花し、広島平和記念資料館(原爆資料館)を視察している。各国の全首脳が、原爆資料館に足を運ぶことはこれまでなかったことであり、視察実現に向けて相当の準備と説得が行われたと聞いている。

 ゼレンスキー大統領も最終日に岸田首相と揃って原爆資料館に足を運び、一発の核爆弾による衝撃の光景を自国の被害と重ね合わせ悼み、「現代の世界に核による脅しの居場所はない」と記帳している。

 バイデン大統領も、原爆資料館の視察について、「核戦争の悲惨な現実と平和を築くための努力を決してやめないという私たちの共通の責任を強く認識させるものだった。G7のリーダーたちとともに、核兵器の脅威のない世界を目指して努力を続けるという決意を改めて確認した」と語り、各国首脳も「広島はまさにそうした決意を固めるふさわしい場所だった」と口を揃えている。バイデン大統領が、ゼレンスキー大統領が希望していたウクライナ空軍パイロットへのF16戦闘機の操縦訓練支援と、欧州諸国による機体供与を容認する考えを示した、その後のことである。


打ち出された「分断ではなく協力へ」というメッセージ

 広島サミット自体は、9つのセッションが行われ、首脳宣言の他にも、ウクライナに関するG7首脳声明、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン、経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明、G7クリーン・エネルギー経済行動計画、強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明も公表している。その中で私が注目したのは、もう一つの重要なメッセージである。

 世界の分断をこれ以上、悪化させるのではなく、世界が協力することで、世界の課題に対応する、という考えを打ち出したことである。

 首脳宣言にも、デカップリングではなく、デリスキングに基づいて対応するという姿勢が書き込まれ、分断を避けようとする表現に苦心している。これが世界の課題にあらゆる国が力を合わせる、という文脈と繋がっている。

 私たち言論NPOが、3月末に東京で開催した「東京会議」には、議論の結果を踏まえた私たちの提案を、会場に駆けつけたG7議長である岸田首相に手渡している。

 そのメッセージの柱は、分断をこれ以上悪化させず、世界が協力すること、ウクライナの戦争終結に向けてあらゆる国が力を合わせるように対話を急ぐべき、ということである。

 今回のG7の会議の方向が、そこで主張した方向と噛み合っているとしたら、議長の岸田首相が次に行うことは、中国との対話となる。広島サミットでは、首脳宣言で中国の行動に対する希望がかなりの分量で書き込まれたのは、その布石だとも考えられる。


新しい流れをつくり出す日本の外交力を示したサミットとなった

 世界は分断に向かい、平和やこの地球の持続可能性確保に向けて協力していく方向に力を合わせられないでいる。

 平和と「核のない世界」を目指す、象徴的な会合となったのは、日本が世界唯一の被爆国であり、岸田首相がこのタイミングで、「広島」の意味を世界に伝えようとしたからだ。

 サミット直前には、韓国との関係を改善し、ウクライナへも電撃訪問した。分裂と対立下で、日本にもこの状況を解決に向かって繋げる外交力があることを示したG7サミットになったともいえる