日本の政治的プレゼンスを強化するためには積極的な発言と行動が必要/セルゲイ・クリーク(ロシア現代発展研究所ディレクター)

2015年9月30日

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セルゲイ・クリーク
(ロシア現代発展研究所ディレクター)


Q1:地球規模課題の中で、現在あなたやあなたのシンクタンクが一番関心のある、または取り組んでいるテーマはなんですか。また解決のためどのような努力をされていますか。

 ロシアと先進諸国との関係の変化もあり、当研究所としてはグローバル・ガバナンスにおけるロシアの役割や、それをグローバル経済・技術の動向にどう適応させるべきか、というテーマに取組んでいる。こうした課題に関する報告書を作成中で、幾つかの提言を添えたものを年内に完成させる予定である。


Q2:その地球規模課題の解決に向けて、あなたは日本にどのような役割を期待しますか?また、地球規模課題の解決に向けた取り組みに日本がより大きな貢献をするために、あなたは何が必要だと考えますか。

 ロシアの関心がアジア太平洋地域――実際には中国だが――に向けられており、日本はロシアの経済発展やアジア太平洋地域におけるより均衡のとれた政策に貢献する余地が大きいと思われる。日本は先進国クラブの一員であり(対ロシア)制裁にも加わっているが、ロシアから見ると日本は批判の多い「西側」にどっぷり属しているとは思われていない。両国関係はかなりの可能性を秘めているのだが、それを制約しているのが主に「北方領土問題」ということになる。

 ロシア国内には中国との関係強化に過度に期待する向きがあったが、ここにきて冷静な分析に変わりつつあり、この地域における日本を含む他の主要国との関係を緊密化する必要性についての理解が広まりつつある。こうした諸国との関係をさらに発展させることで、グローバル・ガバナンスのさまざまな課題に向き合うためのロシアの役割がさらに大きくなるであろうし、ロシア政界に存在する孤立主義への傾斜を食い止めることにもなろう。ロシアと日本の経済関係がさらに強化されれば、この地域の安全保障面でロシアがより多くの譲歩をしやすくなるであろう。


Q3:国際社会では日本の発言力は弱いと言われていますが、その原因はどこにあると考えますか。また、この言論NPOのプロジェクトにどのような期待を寄せていますか。

 将来の経済発展性という観点からすると、世界規模的課題における日本の政治的プレゼンスは限定的なものになるかもしれない。この状況を変えるには、日本がもっと積極的に発言し行動しなければならない。言論NPOの新しいイニシアティブは、それに貢献することができるであろう。

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▸日本は世界・地域・2カ国間の舞台で課題解決の役割を果たせる/ロヒントン・P・メドーラ(カナダ:センター・フォー・インターナショナル・ガバナンス・イノベーション(CIGI)会長)

▸東アジア地域の安全保障で、地域協力の推進者となるべき/セリーヌ・パジョン(フランス国際関係研究所(IFRI)リサーチ・フェロー)

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