有識者調査 「G7は今後も結束し、自由秩序の推進役となれるのか」

2018年8月09日

依然、G7を重要視しする人たちが8割を超えた

 中国など新興国が台頭した現在、G20の役割が重要視されるようになってきている。そこでまず、こうした状況下でもG7が果たす役割は依然として重要であると思うか尋ねた。

 その結果、「重要である(「どちらかといえば」を含む)」という回答が82.1%と8割を超えている。「重要ではない(「どちらかといえば」を含む)」は、10.1%と1割程度にすぎず、日本の有識者は依然としてG7を重要視している。

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約8割の人が、民主主義の危機を克服するためにG7はリーダーシップを発揮すべきだと回答

 現在、世界の民主主義が危機に直面している。こうした状況の中、日本の有識者の79.7%と約8割が、民主主義や法の支配といった価値観を共有してきたG7が、民主主義の危機を克服するために、リーダーシップを発揮すべきだと考えている。

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現在のG7の枠組みは維持されるとの回答が8割に迫るが、
今後、何らかの変容を迫られるとの予測も2割近く存在する

 6月にカナダで行われたG7サミットの終了直後、トランプ大統領は採択された首脳宣言を承認しないよう米代表団に指示するなど、これまで自由や多国間主義を主導してきたG7の結束は大きく揺らいでいる。そこで、G7の今後について予測してもらった。

 その結果、「現在のG7の枠組みは維持される」という予測が76.6%と8割近い。

 ただ、「そもそもG7は時代遅れなので消滅する」の11.7%、「G7からアメリカが脱退しG6として再編される」の5.5%の2つを合計すると、G7が今後何らかの変容を迫られると予測している有識者が2割近くいることになる。

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2019年のフランスサミットは「開催される」との回答が9割を超えた

 G7という枠組みが動揺する中、それでは、2019年フランス・ビアリッツサミットは予定通り開催されるのか。この点について予測してもらったところ、「開催されると思う」という回答が93%となり、有識者は少なくともこの1年間でG7が崩壊することはないと見ている。

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G7の中での日本の立ち位置として、6割を超える人が「仲介役に徹する」と回答

 トランプ政権下のアメリカと他のG7メンバー国との間では、今後も意見の衝突が予想される。それでは、その状況下で日本はどう対応すべきか。取るべき立ち位置について尋ねた。

 その結果、「仲介役に徹する」という回答が63.3%と最も多い。「アメリカ以外の5カ国側に立つ」は21.1%と2割程度あったが、「アメリカ側に立つ」はわずか2.3%にすぎなかった。

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G7へのロシアの再加入については、半数を超える人が否定的

 トランプ大統領は、ウクライナ南部クリミア半島の一方的な併合によりG8から排除されたロシアを再び加入させるべきだと発言している。この発言に対してはイタリアのコンテ首相が同調、日本の安倍首相は賛否を明らかにしていないが、その他のG7参加国は一斉に反発している。そこで、このロシア再加入の是非について質問した。

 これに対しては、53.9%と半数超が再加入させるべきではないと回答している。ただ、再加入させるべきという回答も23.4%あり、「どちらともいえない」と再加入の可能性を排除していない回答も20.3%ある。

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世界の課題解決に向けた枠組みとして、G10と回答する人が3割を超えて最多となった

 次に、世界的な課題を解決していくために、G7やG20以外の国際的な枠組みが必要だとしたら、どのような枠組みをつくるべきなのか尋ねた。

 最も多い回答は、G7にインド、ブラジルなどの民主主義体制の新興国を加えた民主主義グループである「G10」の35.9%だった。これに対し、民主主義大国(G7)と権威主義大国(ロシア、中国)で構成される「G9」を選択した有識者が16.4%いる。

 もっとも、「G7とG20以外の枠組みは必要ない」という回答が21.9%ある。

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上海協力機構(SCO)に対しては、「期待していない」との声が6割を超えた

 今年のG7サミットの直後、中国やロシア、インドなど8カ国の正規加盟国で構成され、さらにオブザーバー国としてイラン、対話パートナー国としてトルコなどが参加している上海協力機構(SCO)の首脳会議も開催された。その歓迎式典の中で、中国の習近平主席はSCOを「世界の統治を完全なものにするために重要な勢力」と強調した。では、日本の有識者は、世界的な課題の解決において、このSCOの役割に期待しているのか。これが最後の質問である。

 これに対し、「期待していない(「あまり」と「全く」の合計)」という回答が、61.7%と6割を超えている。ただ、「期待している(「強く」と「少し」の合計)」という有識者も21.1%と2割程度存在している。

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調査の概要

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