新たな政治文書の基礎となる「平和宣言」を発表することで合意   ~「第14回 東京-北京フォーラム」事前協議 報告~

2018年7月13日

⇒ 歴史的な局面で、数多くのドラマを生み出すフォーラムに
  ~「第14回 東京-北京フォーラム」事前協議 報告座談会~


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 今秋に東京で開催予定の「第14回 東京-北京フォーラム」に向けて、7月13日、同フォーラムの日本側指導委員会委員長である明石康・国際文化会館理事長、同副委員長の宮本雄二・宮本アジア研究所代表、実行委員会委員長の工藤泰志・言論NPO代表の3氏は、中国・北京を訪問し、中国側主催団体である中国国際出版集団の関係者と協議を実施しました(出席者一覧はこちら)

 まず、中国側主催者を代表して、方正輝・中国国際出版集団副総裁が挨拶。冒頭、方副総裁は、「平成30年7月西日本豪雨」の被害に対するお見舞いの言葉を日本側に伝えました。
 次に、今回から新たに本フォーラムの運営に携わることになった方副総裁は、このフォーラムが日中関係が困難な状況下でもそれを乗り越えながら継続されてきた結果、日中間で高く評価されている重要な民間対話になったと称賛。「日中関係の長期、健全・安定な発展のため、14回フォーラムも言論NPOと協力して何としても成功に導きたい」と抱負を語りました。

 続いて、日本側主催者を代表して明石委員長が挨拶。明石委員長はまず、現下の国際情勢が「これまでになかったような重大なチャレンジ」に直面していると指摘。その上で、日本と中国がこの情勢の変化にどう対応するのか、まさに問われている局面であるとの認識を示しつつ、「これまで多くの成果を挙げてきた本フォーラムが、日中両国の将来を導くための新しい光を照らすことになるのは疑いのないところだ」と語り、今年のフォーラムの成功に絶対の自信を示しました。

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 また、方副総裁のお見舞いの言葉に対しては、中国でも現在まさに福建省など東部が豪雨災害に直面していることに触れて、「これは日中は"同じボート"に乗っているということの証左だ」と指摘するとともに、「日中共通の課題はこれからも消えることはない」とし、課題解決に向けた新しいアプローチを共に探り続けるためにも対話継続は不可欠であると語りました。

 続いて、この事前協議の直前に行われた主催者間協議の結果について、日本側から工藤が説明。そこではまず日程については、フォーラムは10月中旬開催、世論調査期間はフォーラムに合わせて8月から9月となったことを報告しました。

 次に工藤は、国際情勢が世界史的に見ても大きな転換を迎えているとの現状認識を示した上で、こうした状況の中では日中両国は「単なる協力にとどまらず、具体的な共同作業に取り組み、アウトカムを出すべき」と主張。そして、そのアウトカムとして今回のフォーラムでは、新たな政治文書の基礎となる「平和宣言」を発表することで合意したと説明しました。

 また、そのためには「政治・外交」、「経済」、「安全保障」の各分科会でも、過去の政治文書、とりわけ今年締結40周年を迎える日中平和友好条約の今日的な意義を考えるような議論構成にしていく方針も説明しました。

 もっとも、今年もフォーラムではそれにとどまらず、「本フォーラム自体のイノベーションも必要」とし、そのために①脱炭素やデジタルエコノミーなど、新たな領域での協力関係構築を模索する議論、さらに、②日中の未来を担う若い世代による対話、という2つの新たな試みを開始する方針で合意したことも併せて発表しました。

 最後に工藤は、以上のことを踏まえて今回のフォーラムの全体テーマを「アジアと世界の平和と協力発展に問われる日中の役割‐日中平和友好条約の今日的な意味を考える‐」に設定することで合意したことも報告し、出席した両国の委員たちに対してこれらの合意事項についての意見を求めました。


 これを受けて、委員間の意見交換に入りました。両国の委員からは主催者間協議の合意事項について賛同する意見が相次ぎました。特に、これまで国際秩序を擁護する最大のリーダーであったアメリカがトランプ政権誕生以降、その姿勢を大きく後退させようとしていることに対する懸念の声が相次いで寄せられ、そうした状況の中では、日中両国の協力深化を急ぐべきであり、今回のフォーラムではそのための議論が不可欠との認識で両国の委員は一致しました。


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 この事前協議終了後には、今年のフォーラムの開催概要についての記者会見が行われました。ここでもアメリカの変化とそれに対する対応についての関心が集中。特に、アメリカとの"貿易戦争"の只中にある中国の記者からは経済分科会の議論構成について熱心な質問が寄せられるなど、活発な質疑応答が行われました。

 今回の事前協議を経て、フォーラムの準備が今後さらに本格化していきます。準備状況につきましては、随時ホームページにて報告していきますので、引き続きぜひご注目ください。


 今回の主催者間協議および事前協議の主な決定事項は以下の通りです。
① 「第14回 東京-北京フォーラム」は2018年10月中旬に開催する
② 全体テーマは「アジアと世界の平和と協力発展に問われる日中の役割‐日中平和友好条約の今日的な意味を考える‐」(調整の可能性あり)
③ 各分科会のテーマは、政治・外交分科会が「日中平和友好条約の今日的な意味と日中関係の未来」、経済分科会が「国際自由貿易と維持と、新しい日中の経済産業協力」、安全保障分科会が「朝鮮半島の非核化と北東アジアの平和に向けた日中の役割」、メディア分科会が「変化するメディアは、日中両国民の信頼回復に貢献できるのか」、特別分科会が「21世紀の課題、脱炭素とデジタルエコノミーで日中の新しい経済協力は可能か」および、「若い世代は日中の未来と可能性をどう見ているのか」(いずれも調整の可能性あり)
④ 最終日に、東京コンセンサスとして「平和宣言」を発出する


出席者
【日本側】明石康(国際文化会館理事長、元国連事務次長)
     宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)
     工藤泰志(言論NPO代表)
【中国側】周明偉(中国国際出版集団元総裁)
     魏建国(中国国際経済交流センター副理事長、元商務部副部長)
     方正輝(中国国際出版集団副総裁)
     王剛毅(中国国際出版集団副総裁)
     陳実(中国国際出版集団副総編集長)
     李薇(中国社会科学院日本研究所元所長)
     楊伯江(中国社会科学院日本研究所副所長)