政治に向かいあう言論

「日本の知事に何が問われているのか」/東国原宮崎県知事

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071028_miyazaki.jpg東国原 英夫(宮崎県知事)
ひがしこくばる・ひでお
1957年生まれ。1980年専修大学経済学部卒業後、TVタレントとして活躍。2004年早稲大学第二文学部卒業。同年早稲田大学政治経済学部入学。 2007年1月、宮崎県知事に就任。任期4年を展望した「新みやざき創造計画」と新しい「行財政改革大綱」を策定し、県民総力戦とスピード感のある行政を訴え県政運営に取り組んでいる。

第2話 道州制の前に宮崎県の存在感を築きあげたい

 アメリカが戦後、日本の憲法を制定する際に出した草案に地方政府と書かれています。彼らはあのときに地方分権である姿を出しているにもかかわらず、戦前まで県が中央の出先機関だったものですから、最終的にはそのまま地方行政とした、あるいは地方自治としたのですね。あれは最初から地方政府としておけばよかった。
 
 地方政府だったら、権限を移さなければいけない。十分な税源、権限を譲って、地方を独立させるというのが地方分権です。地方分権が成立する一番の仕上げは地方政府だと思います。その議論が、今、道州制という形で行われています。そこが着地点かな、ゴールかな、地方分権の最終章かなという感じはします。
 
 いまは県はどう考えても、国の出先機関とは言いませんけれども、下請的な位置づけです。国の政令、省令あるいは通達などで細かく統制されていますから。それの事務処理が県の主な仕事です。だから、県の首長は役人のOBが多いのだと思います。国とけんか、けんかと言いますけれども、けんかばかりしているのではなくて、仲よくもしなければいけません。それはバランス感覚だと思いますが。

 自治体がどう自立していくか。自主自立とか簡単に言いますけれども、簡単なものではないです。国がその権限を譲らなければいけないわけですから。国に補助金とか交付税とかをどうこうしてほしいと言っているうちは、まだ自立していないのです。
 
 ですから、これは国と地方からの両輪で考えなければいけないのでしょうけれども、私は、道州制を見据えて、そこに権限と財源は移すべきだという考えです。宮崎県自体ではできないけれども、鹿児島、熊本、大分、長崎、福岡、佐賀も合わせた九州というブロックで見たときには実現可能だと思います。権限が移譲されて、そこで自己採算でやっていくのは可能です。

 道州制に移行する前に、宮崎県は宮崎県の存在感を示さなければいけない。この10年が勝負だと思って、そのためにやっています。あまり道州制を前提的には言いたくない。というのは、今、日本に先駆けて九州が道州制を実現してしまおうという動きになっているけど、今やってしまうと北部九州の議論になってしまう。北部九州に一番都合のいい道州制になってしまう。九州州あるいは九州道になってしまう。なので、それを阻止しながら、宮崎の体力をつけたところで、はい、やりましょうというのが私の理想です。

 そのためには、インフラも、経済、産業も、医療、福祉も、宮崎県が吸い込まれないように、吸収合併されないような自治体にするというのが私の目標です。

 さもないと、宮崎県は、産業はなく、単なる農業供給県みたいに寂れていく。九州の中でも格差が出てくるような状況であっては、九州の道州制に踏み切る意味がなくなると思うので、それだけは阻止しなければいけません。だから、私は九州知事会でも言わせてもらっているのですが、もし九州が全国に先駆けて道州制のモデルケースとしてやるのであれば、宮崎県にメリットがあれば賛成しますと。

 知事になって、宮崎県は今までさび付いていたのが、ぎしぎし動き出したような感は確かにありますね。この遅れていた宮崎県が、こんなのんびりしていた、てげてげな宮崎県が、これはいかん、時代に乗り遅れてはいかん、今がチャンスだ、みんなで頑張っていこうという機運になりつつあると思います。実際には、まだまだのんびり構えている方たちが大半ですが。

 東京へ来ると、先に先に進んでいく。東京機関車論ではないけれども、機関車の牽引役としてガンガン。東京がイノベーション、刷新していくスピードと宮崎県のスピードというのは全く違う。ここに一番の地域間格差があるのかもしれません。意識の問題ですね。だから、時代に取り残されないように頑張ろうと私は言っているけれども、なかなか意思統一できていないのが現状です。そこで、県民総力戦でそれをやっていかなければと口が酸っぱくなるぐらい言っています。それをやっていかないと宮崎県の浮揚というのはないですね。

 宮崎県の将来に向けて、今、一番危機感を感じているのは、県民総力戦に意思統一性が得られないというところです。おれたちは国に食わせてもらっているんだからとか、今まで補助金で食べさせてもらっているんだからという意識が根強い。公共投資も同様。おんぶにだっこで、すべてが依存型。国が何とかしてくれるだろうという感覚。自分らで自主独立しようという気概に乏しい県だと思います。それは、今までそうやってきたからなのです。でも、これからはそんな時代ではない。自分らが頑張らなければいけない。もちろん国にも頑張ってもらって、国からの補助金や交付税をきちんと取らなければいけないし、自主財源を高めていかなければいけない。そういう点を県民すべてに啓発できるかどうかというのが危機を感じているところです。

 職員は県民を映す鏡です。私はせっかちですから、とにかくスピード感を持ってやらないとイライラする。都市部はスピード感がある。歩きも速いし、そこで私は30何年間ずっと暮らしたものですから、田舎は、田舎のゆっくり感、ゆったり感もいいけれど、時代とともに生きていくのであれば、やっぱりある程度スピード感がなければいけません。それを県の職員の方たちにはお願いしています。でも、今までは2年かかったのが1年ぐらいに、また、来月考えてください、来月このプロジェクトを立ち上げてくださいと言えば、県の職員は優秀ですから、それ相応に対応してくれています。全部が全部ではないですけれども、半分ぐらいですね。それがずっといくと、早い段階で県職員、県庁も変わっていくのではないかと思います。

全3話はこちらから

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