「日本の知事に何が問われているのか」/東国原宮崎県知事

2007年11月12日

「日本の知事に何が問われているのか」をテーマに、全国の知事にインタビューを続行中です。
 現在の発言者は東国原宮崎県知事です。


第1話 ふるさと納税―地方が切磋琢磨するきっかけに

 大都市圏と地方の格差問題についてですが、松沢神奈川県知事が出した資料では、格差自体が縮減する傾向にある。10数年前には(都道府県のうち人口1人当たり税収額でみて、もっとも多いところがもっとも少ないところの何倍の税収額かを示す偏在度が)4.7だったのが、今、3.2です。2~3年前まではずっと下がっていたけれど、ここ2~3年ちょっと上がったのです。今年は多分下がると思います。つまり格差は是正していく方向にあると思いますが、それでも3.数倍の開きがあるのは厳然たる事実だと思います。

 地方間格差は、何をもって地方間格差と言うのかです。恐らく、これは県民所得とか、あるいは医療、福祉の充実性なのか、地方部の中での中山間地域の高齢化等々の限界集落とかいうのがあるところの格差なのか、恐らく、それらをひっくるめて言われているのでしょう。

 確かに中山間地域と都市部の物理的な暮らしにおいては、格差があると思います。それは、人、物、金。物であったり、サービスであったり、利便性であったりというのも含めて、地方と都市部との格差は生じている。大きくなりつつあるか、小さくなりつつあるかは別にして、あるということは事実です。

 大都市と地方のあり方について、どう考えるか。格差是正をしなければいけないのか。格差というものをどうとらえるか。つまり幸せ度でとらえるか。都市部で生活している人たちは物が豊富で満ち足りているかもしれないけれども、幸福度はどうなのだということの格差も入れるのか。都市部で満ち足りた生活をしなくても幸せに暮らしている方っていらっしゃいますね。なので、格差についてはどうお答えしたらいいのですかね。

 格差を是正するということで県の行政のことを言わせてもらうと、予算を組むのに自主財源が、ちょっと上がったのですけれども38%、依存財源が 62%です。東京は交付税とかはなしですから、国に依存しているという意味では格差があります。そういったもので宮崎県は財源が脆弱です。よって、各行政サービス等々も脆弱にならざるを得ない、ということの格差はあるかもしれませんね。

 地方分権に伴う税源移譲をされても、我が地方部は必ずしもプラスにならない。税源が偏在していて、税源を移譲されても、地方税収というのは、少ないところでは少ないのです。当然そこに地方交付税が措置されなければいけないのですが、その地方交付税全体が毎年数%ずつ減少傾向なので、結果、減らされている。宮崎県の場合ですと、6年連続の減です。緊縮財政です。毎年200億円ぐらいずつ減っています。

 県債の残高は9000億円以上。こういう状況をどう打開するのかが問題なのです(6月に「行財政改革大綱2007」を発表。意識改革、経営改革、協働改革、入札改革、財政改革のプログラムを盛り込んでいる)。それで、本当は都市部の方が言うように地方交付税の見直し、あるいは地方消費税の見直しが必要ですが、それを国がなかなかしてくれない。ですから、ふるさと納税が地方交付税あるいは地方消費税の見直しをしてもらうための契機になるといいなと思っています。ふるさと納税をずっと言っていると、これはお互いの地方間の取り合いだ、奪い合いだ、これではだめだ、やっぱり垂直の議論をして、国から対策を講じてもらわなければいけないではないかというところに話がいってもらうと助かる。ですから、私は、ふるさと納税の議論を盛り上げようと思っているわけです。

 ふるさと納税が実施されても、直接的には地方間の格差を埋めることにはならない。そんなに期待できるものでないと思います。いろいろなNPOやシンクタンクが調査していますけれども、ふるさと納税が施行された場合、あなたはどこに納税したいですかとたずねると、実を言うと、都市部がベストテンに入っている。都市部は人口が多いというのもありますけれども。

ですから、都市部にたくさんふるさと納税が行って地方部に来ないというのだったら、これは格差是正にも何もならない。でも、宮崎県も、ふるさと納税によって税収が増えることは確かです。多少なりとも、あるいは微々たるものかもしれませんけれども。ふるさと納税で宮崎県から出ていく金と入ってくる金をざっくり計算しても、宮崎県はプラスです。

もちろん、税ではなく寄附という形でもオーケーです。ただ、寄附だと、予算が組みづらい。流動性があるから。今年はあそこに寄附したけれども、来年はどうするかわからないから、持続性がない。財政の調整機能とか、財政の保障機能はやっぱり税です。税体系で仕組みづくりしてもらうとありがたいなと思っているだけです。ただ、ふるさと納税を税体系あるいは税制に昇華するのは非常に難題だなと認識しています。

 私は、ふるさと納税というのは必ずしも地域間格差を是正するものではないとは思うのですが、それよりも、これによって地方が切磋琢磨、頑張るようになると思う。企業誘致でも、移住誘致でもそうなのですね。観光もそうじゃないですか。うちに来たいと思わせるような自治体にしていく、そういう企業努力、自治体努力をすると思います。自治体間競争が活発になると、結果として、自治体が活性化していくという期待があるという点で、私は賛成の立場です。

全3話はこちらから

「日本の知事に何が問われているのか」をテーマに、全国の知事にインタビューを続行中です。
 現在の発言者は東国原宮崎県知事です。

1 2 3