政治に向かいあう言論

「日本の知事に何が問われているのか」/東国原宮崎県知事

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071028_miyazaki.jpg東国原 英夫(宮崎県知事)
ひがしこくばる・ひでお
1957年生まれ。1980年専修大学経済学部卒業後、TVタレントとして活躍。2004年早稲大学第二文学部卒業。同年早稲田大学政治経済学部入学。 2007年1月、宮崎県知事に就任。任期4年を展望した「新みやざき創造計画」と新しい「行財政改革大綱」を策定し、県民総力戦とスピード感のある行政を訴え県政運営に取り組んでいる。

第3話 「やってみせ...」で東国原流の知事に

 私は行政経験も政治経験もなく、この世界に飛び込みましたが、全国知事会に出たら、バーッと並んでいる知事のうち、7割方が、国のお役人さんだった方ですね。あるいは県職員から知事になった方。公共機関、橋本(大二郎高知県知事)さんみたいにNHK出身の方が2人ぐらいで、あとはほとんど役所の関係の方、行政マンです。それを見たときに、僕は異質です、異色ですよ。その中で、私も役所出身だというふりを演じてもよかったけど。そういうふうに自分のキャラを変えてもよかったのですが、いや、無理があるなと思いました。私はタレント出身、民間出身、初心者の知事像でありたい。

 元宮城県知事の浅野(史郎)さんに話したら、「東国原知事、そんなことは考えなくていい。あなたは役人にならなくていい。役人だからできないこともたくさんある。あなたみたいな知事にしかできないこともいっぱいあるのだから、自信を持ってください」と言われました。それでちょっと勇気づけられ、私は私なりの、東国原流の知事になろうと思いました。それが宮崎県が生き残るオンリーワンの姿であり、私のオンリーワンであり、それがひいては歴史に残っていくということではないかなと、勝手にポジティブに考えまして、自分のキャラとか、そういうものは変えないでいこう、私のままの知事でいこうと思っている次第です。

 まだ知事になって間もないので、緒についたばかりです。けれども、おかげさまで県庁職員に支えられ、議会の方たちにも支えられ、県民の皆様に支えられて、何とかあまり大きく狂わずに今までは来られたかなと思います(9月5日には「不適正な事務処理に関する全庁調査報告書」を発表した)。その中で自分の存在感を示して、他府県には見られないような新しいものに取り組んでいって、宮崎県ならではのオンリーワンの、私でしかできないような改革とか、事業とか、やり方というのを模索して、今後とも遠慮なくやっていこうかなと考えています。

 宮崎県のセールスマンになって宮崎を売り込んだ結果、県民から、ありがとうございますといわれる。宮崎県が有名になって、県を出たとき、都市部に行ったときに、あるいは都市部に住んでいる県出身の方々が帰ってきたときに、また親戚同士の交流があったり、会社や学校、そのほか、いろいろ地域の集まりがあったときに、その話題で持ちきりになる。そういった意味では非常に活気づいているという声を多くいただいているし、そういうときはやはり嬉しいものです。

 私はタレントだったものですから、タレントの視点で見ますと、役者の顔とかタレントの顔をよくするのはカメラで、それは人の目なのです。ですから、宮崎県も同じで、衆目にさらされているというのは大変ですが、見られているということで自分がいいふうに変わっていく。そういった意味で、見られているというよさを宮崎県に当てはめようかなと思ったのです。見られているというのは改革しなければいけないということです。見られていないと悪いこともしますが、見られていると清廉潔白でなければいけないし、情報公開もしなければいけない。そうしていくうちに宮崎県はいい役者になっていくのです。

 私は、県民総力戦で、皆が何をしなければいけないかというのは一人ひとりが考えてくださいと申し上げています。今はブームみたいなものですから、いずれブームは必ず去ります。けれども、去っても、1度、宮崎県に来られた方がもう1回、2回来たいなと思うように、県民の1人ひとりが自分のパーツ(持ち場)で全力を尽くしてくださいと言っています。草の根的な運動として、まずこうした思いが一番根底にあります。例えば旅館だったら、来た方にご満足いただける。乗り物を運転されている人だったら、顧客満足度を高める。そうでない人たちは、ごみを拾う、環境をよくする。生産業に携わっている人だったら、いい品質のもの、安全安心なものを提供する。1人ひとりがそうやって努力して、1人ひとりが宮崎県の浮揚のために一役買っているんだ、私たちが一票を投じているんだという意識を持ってくださるということがまずもって大切です。

 その次に、それをどういう仕組みにするのか、仕掛けにするのか、システム化するのかというのが今後の行政の責任、課題でもありますね。

 私は県職員の才能とかポテンシャルを見抜いています。いちいち対話しなくても彼らはやれますよ。だから、自分が率先して、私の姿を見せればいいかなと思いました。

 私は県庁に入ったとき、皆さんを見回しました。どういうやり方が意識改革に最短でつながるかなと思ったからです。今、自分が行動して見せることが、多分、県庁職員たちのやる気とか、あるいはインセンティブなんかを鼓舞する一番の近道になるかなと思います。
 
 山本五十六(太平洋戦争のときの連合艦隊司令長官)という人が、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」と言った。まさしくこれかなと。だから、やってみせてというのが今の私。

 「県民総力戦による県づくり」を進めるとき、国内、国外両方を視野に入れます。でも、軸足はだんだん海外ですね。海外に重きを置くのではなくて、今までウエートが少なかったのをもうちょっと多くする。ですから、ことし7月に韓国に行き、その後、台湾にも行きます。台湾の就航便がチャーター便なのを定期便にしてもらう。ソウル便を増やしてもらう。あとは宮崎から香港、上海、東南アジア、シンガポールを視野に入れて、何とか就航便を10年~15年以内には実現したいですね。

 中国には大いに関心があります。特に九州は中国と位置的に近いですから。中国なしでは、あるいは東南アジアなしでは、この21世紀、九州の生き延びる道はありません。

全3話はこちらから

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