言論NPOとは

令和元年度 言論NPO事業計画

令和元年度の事業目的と方針

 世界の状況は、この1年だけでも不安定さを増しています。米中の対立は、その行方によっては世界の経済システムを分断させる危険性を高めており、これまでの世界を作ってきた多国間主義に基づく国際協力やルールベースでの自由主義、さらには民主主義自体がその存在を問われているからです。

 私たち言論NPOは、こうした歴史的な局面でその役割を果たすために、2つの作業をこの新しい令和元年に本格化させています。

 1つは、私たちの立ち位置がそうした規範や価値の維持とアップデートにあることを明らかにし、日本だけではなく世界の多くの有識者と連携し、そのための言論や発信を高めることです。

 これは、言論NPOが、2年間前に立ち上げた世界10カ国のシンクタンクのトップが東京に集まる「東京会議」がその舞台となりますが、この舞台を更に影響力あるものに発展させ、世界のベストカンファレンスに仲間入りをすることが、本年度の課題です。

 共存を目指し、この地域の平和に向けた協力のメカニズムをつくるための作業が必要です。

 持続的な平和を作り出すため、米中が同じテーブルに参加する多国間対話の枠組み、「アジア平和会議」を立ち上げることは、本年度の大きな目標です。
ただ、私たちがこの新しい年に目を向けたいのは、むしろ日本国内の問題であり、私たち言論NPO自身の組織の課題です。

 こうした世界経済の歴史的な局面に立ち向かうためには、日本自体が将来の課題を克服し、持続的な社会とより強靭な民主社会を機能させなくてはなりません。

 その作業自体は相当の困難を伴いますが、今すぐにも開始しないと手遅れにもなりかねません。しかし、私たち言論NPOがこの状況に立ち向かう態勢を整えない限り、私たちの責任を果たすことは難しいのです。私たちが、令和元年度の事業で言論NPOの組織問題を今回も最優先の事業として位置付けるのはそのためです。


組織課題の基本目標と目指す組織像

 言論NPOは、現在、2つの組織課題を抱えています。

 第1は、世界やアジアで展開する多くの事業と、日本で始める国内で行う事業を遂行できる体制を整えることです。

 このためには、言論NPOの事務局体制を整備すること、さらに活動に参加する会員や資金基盤を強化することが必要です。これは緊急の課題であり、これを今年度に進めない限り、言論NPOの活動は持続不可能になります。

 ただ、私たちは、これと同時に言論NPO自体を、より組織的に事業を遂行でき、多くのメンバーが活動に参加できるための組織変更に向けた検討も再開することを考えています。これは、将来的に言論NPOを米国の外交問題評議会を1つのモデルに、「言論カウンシル(仮称)」という協議会的な組織に変えるものであり、この間、言論組織の立て直しを優先したため、その検討を中断していたものです。

 そのため、令和元年の最も大きな組織課題は、言論NPO自体を日本の民主主義や世界的な課題を解決するための言論のプラットフォームとして機能させる組織、資金基盤をまず整えることと、さらにその体制を次世代に繋げていけるような、カウンシル化への移行を前提とした形で組織固めができるかどうか、ということが最も大きな課題となります。
 
 こうした考え方を軸に今年度、私たちは以下のことに重点的に取り組んでいきます。


言論NPOは令和元年度、次のことに重点的に取り組む
               ―組織問題が最優先―

 令和元年度、私たちが重点的に取り組むのは以下の4つとなります。

  • 1. 言論NPOの持続的な活動を支える組織、資金基盤の整備
  • 2. 2020年以降の持続的な活動を成り立たせるための組織強化
  • 3. 国内の言論活動の強化
  • 4. 3つの言論(中核事業)の成果に向けた取り組み
  •     ①東京会議(世界の課題解決)、②北東アジアの平和構築、③民主主義


 「言論NPOの持続的な活動を支えるための組織、資金基盤の整備」とは2つのことを意味しています。

 1つは、事務局体制の人員増などの組織強化を行うことです。国際部と組織部で4人の増員(現体制は5人)が不可欠だと考えています。そのために、積極的な公募をしていきますが、定期採用に加えて、インターンやボランティアを積極的に活用していく事が重要になってきます。そして、活動の基盤となるこうした人件費や家賃などの組織の固定費を持続的に賄う資金基盤を整えることです。

 この固定費の資金基盤はまだ安定しておらず、特に2020年以降、補助金などの終了に伴い、それ以降の資金基盤を整えることは、令和元年の最優先課題になります。


 このためには、言論NPOの使命や活動に賛同するメンバー等の増加による会費などの拡大が最重要になりますが、それだけではなく、「ふるさと納税」を柱とした一般寄付を計画的に進めるとなります。

 しかも、これらの動きは、第2の課題である、「2020年以降の持続的な活動を成り立たせるための組織強化」と繋げなくてはなりません。そのためには、言論NPOの現在の中核的な活動に各分野で活躍する人たちに対して、意識的、計画的に参加を求めていくと同時に、将来の活動を担ってもらえるようなメンバー体制の強化や拡大を目指します。さらに、これまで言論NPOの国内外の様々な活動や言論NPOが行っている議論に参加している多くの人たちを会員として組織化することも大きな柱となります。

 「東京-北京フォーラム」、「日韓未来対話」、「日米対話」や「東京会議」を始めとする言論NPOが進めるプロジェクトに関しては、国内外の財団や協賛企業の獲得を計画的に具体化していきます。

 以上のように資金基盤や組織基盤を強固なものにしていくことが、令和元年の中心的な課題となります。


 そして、もう1つ重要なことは、こうした言論NPOの活動をより広く世界や日本国内に知ってもらうためにも発信を強化していくことが必要になります。既に言論NPOの活動は世界的にも注目され、平成30年度は、ペンシルバニア大学のシンクタンクランキングで、アジアで52位に入りました。引き続き、英語での発信をさらに充実させ、強化していくと同時に、既存メディアとの連携や活用、言論NPOが行っている世論調査等のコンテンツを出版や電子書籍等を通じて表に出していくことを具体化します。


令和元年度の目標

 以下、具体的な目標は以下の通りです。

組織基盤の強化

 会員基盤の立て直しとして、言論NPOのメンバー(基幹会員)の200人、一般会員の500人への早期拡大を計画的に進めます。また、法人の会員や協力者を増やしていくことが必須となります。こうした組織の強化を進めるためには、メンバーの皆さんにも協力をお願いしなければなりません。

 また、昨年度はモーニングフォーラムや政策勉強会、その他公開フォーラムなどの対話や、メンバーなどとの交流を併せて19回開催しましたが、今年度は以下のような頻度でフォーラム等を開催していきます。

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資金基盤の強化

 「ふるさと納税」を利用した寄付を早期に開始します。昨年度1000万円を超える寄付を獲得しましたが、今年度は寄付金を前倒しして開始し、6000万円を目標に、本格的な寄付金集めを計画的に実施していきます。

 さらに、言論NPOの寄付基盤を拡大していきます。既に、「第7回日韓未来対話」の開催に向けて少額の寄付を募り、270人を超える人にご寄付いただきましたが、今年度は少額でも定期的に寄付をしていただける層を増やしていく基盤づくりを行っていきます。そのために、寄付者へのケアやフォローしていくための仕組みを整えます。

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言論NPOの3つの中核事業にどう取り組むか

東京会議(世界の課題解決)

 世界10カ国のシンクタンクのトップが毎年、定期的に東京に集まり、東京発で議論や提案を発信していくことは、戦後初めてのことで、既に「東京会議」は世界でも注目される存在になっています。これをもっと多くの人たちに広めて、世界のベストカンファレンスとして成功させるために、今年度は2つの点で「東京会議」を強化していきます。

 今年度の「東京会議2020」では、世界の規範を守り、世界経済を分断させないということを中核テーマに据え、世界の未来に対して我々がどう立ち向かうのか、ということを「東京未来宣言(仮称)」として提案しようと考えています。それだけではなくて、東京会議に世界の有力者を招聘していくことと、世界の有識者の声を反映させるための有識者アンケートを各国で実施し、世界の声として世界に発信していきたいと考えています。そして、将来的にはこのシンクタンクの参加に加え、数年後、世界のリベラルオーダーや民主主義を考える「賢人会議」を、東京を舞台に開催するところまで発展させていきたいと考えています。


北東アジアの平和メカニズムの構築

 昨年度、我々は中国との間で北東アジアの平和に向けた多国間の協議メカニズムを民間でつくることで合意しました。この合意を基に、既にその準備会議を発足しています。これをさらに発展させ、ハイレベルの実務者協議として、2020年の初頭に日米中韓を軸に「アジア平和会議」を東京に立ち上げます。

 ここで重要なのは、米中の対立が激しくなる中で、米中が同じテーブルについて、この地域の平和に向けて協力していく多国間の舞台をつくりあげることにあります。この地域には北朝鮮や台湾、東シナ海などホットスポットが多数存在しています。こうした中で、まず、地域に戦争を起こさず、どうすれば平和が守れるのか、といった危機管理の問題を考え、さらに、この地域に持続的な平和の枠組みをどう構築していくか、という2点が重要になります。

 こうした取り組みは、ミュンヘン安全保障会議やシャングリラ・ダイアログと同じく非政府の対話ですが、安全保障環境をただ専門家が議論するのではなく、この地域の平和実現を目的に多国間で協議を始めるもので、世界でも初めての試みとなります。私たちが進める民間対話の目的は課題の解決のために、政府よりも一歩、ないし半歩進み、政府間外交の基礎工事、つまり環境づくりを行うことです。こうしたハイレベルの事務者協議を民間ベースで作りあげます。


民主主義の強化に向けた取り組み

 ここで取り組まなければいけないことは2つあります。

 既に私たちが世界各国と共同で行ってきた世論調査などで、世界中の多くの民主主義国の国民が、代表制民主主義への信頼を失い始めているということが明らかになっています。そこで私たちは、まずこの日本で代表制民主主義の機能を点検し、その改革案を提案する必要があります。しかしそれは、これまでの伝統的な民主主義の仕組みだけではなく、デジタル革命やAIなど新しい技術の発展に見合った形で、我々の民主主義の基本的な価値をどう守っていくのか、ということが議論の大きな焦点になります。今年度は国内でそうした作業を行うためのプラットフォームを作ると同時に、様々な議論を公開で行っていきます。さらに、こうした議論をアメリカやヨーロッパ、アジアのシンクタンクとも連携していきます。特に、各国のシンクタンクと共同して行う世論調査などによって、民主主義が抱える大きな問題を、各国の国民がどう考えているのか、ということを明らかにしながら、どのようにその課題を乗り越え、より強靭なものにしていくか、ということについて具体的な提案をしていきます。

 そうした議論を行う1つの場として、言論NPOの設立日である11月21日に、世界の人たちを集めた民主主義のフォーラムを行いたいと考えています。

 また、本年の夏には参議院選挙も行われるため、言論NPOがこれまで行ってきた、政権の実績評価、マニフェスト評価などにも取り組み、有権者の判断材料を提供していきます。


令和元年度の言論NPOの主な活動スケジュール

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