言論NPOとは

平成16年度活動報告

1)各界の有識者、挑戦者が個人の資格で参加して、既存のメディアが果たしていない責任と質の伴った議論の形成とそのための舞台を作るために創設した言論NPOは、3年目を迎え、クオリティ誌「言論NPO」の発行、インターネットによる議論発信と、フォーラム・シンポジウムの開催および政策フォーラムなどを有機的に組み合わせて様々な活動を展開した。

2)特に重点的に取り組んだのは、政党が選挙のときに公表するマニフェスト(政権公約)とその実行の評価、日本の将来構想の選択肢を提案するための議論や構想の提案である。マニフェストの評価や構想の提案、それに関連する議論の提起は、民間側が自発的に提供できる有権者主体の民主主義のインフラ形成の一端を担うために取り組んだものである。

具体的には、昨年7月の参議院議員選挙に向けて、政権与党の選挙公約の実行の中間評価を行ったと同時に、選挙の際の各党のマニフェストの評価作業を行い、それぞれ公表した。さらに地方選挙における質の高いマニフェストの導入と、各地方でのその評価作業を支援するために、ローカルマニフェストの評価基準を設計し、公表した。

また、日本が目指すべき将来構想の選択肢を社会に提案するため、私たちが定めた5段階の戦略形成の方法論に基づいて、日本の将来構想に向けた議論を前年に引き続いて行い、それらをシンポジウムなどで公表した。本年度は五段階の内の第三段階である「日本のアイデンティティー願望と主要な潮流とのギャップの特定」の議論を展開し、[2030年に向けた日本の将来選択―アジアの中で日本は自らのアイデンティティーをどう描くのか]というテーマの下に幅広い議論を有識者アンケートなども踏まえて行った。

現時点で私たちが導き出した日本の「限りなく理想に近く、かつ現実的な」アイデンティティーは、「世界のソウト・リーダーでありアジアの知のプラットフォーム」になることであるという仮説であり、2月21日に開催した国際シンポジウムでは政党の政策責任者やアジアの有識者も交えた公開型のセッションでそれらを提案した。

3)日本の将来を巡る議論に引き続き、本年度はこうした議論をアジアに広め、個人を主体とした自由で建設的な議論のネットワークや舞台を形成するための第一歩として、中国の唯一の英字日刊紙、チャイナデイリー(中国日報)との議論提携の調印を10月に北京で行った。今後、10年間にわたり、日本と中国の間で本格的な議論交流を行うために、中国、日本で毎年、交互にシンポジウムを行うこと、毎年、共同の世論調査を行うことなどを決定し、その内容を双方のメディアなどを活用して適宜公開することなどで合意し、本年1月14日に公表した。中国側の世論調査は北京大学が行うことになり、議論のキックオフは05年8月に北京でのシンポジウムで行うことになった。

4)言論NPOには、日本の将来に対して真剣な議論形成を求める民間経営者、官僚、エコノミスト及び多様な分野の学者・研究者など会員以外の方も含めて約500名の方々が個人の資格で活動に参加しており、議論形成や成果報告あるいは提言の作業に協力し、あるいは携わっていただいている。

5)平成17年3月末現在で理事13名、監事1名、常勤雇用者3名、派遣社員・アルバイト4名の計21名に加え、学生をはじめ多くのボランティアの参加を得て、事務所運営及び言論活動の本格的な展開を行っている。

6)主な事業としては、
  ①一般向けクオリティ誌『言論NPO』の年間2号発行
  ②インターネットによる情報の発信と意見交換(ウェブサイトhttps://www.genron-npo.net からの
    発信と意見交換、言論NPOメールマガジンの発行)
  ③政策フォーラム「言論NPOアジア戦略会議」の年間8回開催
  ④言論NPOフォーラムの年間4回開催
  ⑤言論NPO国際シンポジウムの開催
  ⑥政権与党のマニフェスト(政策)評価書公表
  ⑦地方自治体首長のローカルマニフェストの評価基準公表とそのモデルとして埼玉県の
    マニフェスト評価書公表
  ⑧言論NPOと中国日報社(チャイナデイリー)との日中議論提携がある。

7)クオリティ誌の今年度の発行部数は2号合計で5,000部、また、ウェブサイトの閲覧状況は概ね月間5万ページビュー程度の実績を上げている。

8)ウェブサイトでは、タイムリーに且つ頻繁にホームページを更新・発信しており、また、アクセスが自由なメールマガジンの定期的発行(登録者2200人)などで、会員以外の一般ユーザーに対する情報提供、情報公開を更に向上させた。

9)当期末現在の会員数は、正会員の基幹会員124名及び法人会員19社で、その他会員の一般会員は244名及び学生会員は25名の合計412名となっている。