言論NPOとは

平成23年度 言論NPO事業計画

  言論NPOは今年、10年目を迎えます。この間、本来メディアが果たすべき「言論の役割」に非営利の立場から挑戦し、「強い民主主義」の実現のために、数多くの活動を繰り広げてきました。

 しかし、この国の現状を鑑みれば、既存政党による統治が機能せず、民主主義が危機に陥っているという困難な状況はいまだに変わってはいません。そればかりか、3月の東日本大震災とそれに伴う原発事故により、日本はこれまで体験したことのないような国難に直面しているのです。

 東日本大震災を受け、被災地の問題にとどまらず、これまで様々な課題解決を先送りしてきた、日本自体の未来をかけた「復興」が各方面で始まろうとしています。そのような状況の中で、健全な言論の舞台を構築するという言論NPOの初期のミッションはこれまでにも増して重いものとなっていると考えています。

 私たちは今年、設立以来10年間の重みを強く認識し、改めて強い危機感と使命感を持って、課題解決のための影響力のある議論づくりを実現します。そして、広く多くの市民に支えられた経営基盤のもとで、「議論の力」で目に見える大きな変化をつくり出すために、①ウェブサイトやフォーラムを中心とした参加型・提案型の議論を完成させるとともに、②事業基盤安定化のための資金の多様化の2つを重点施策として取り組んでいきます。


I. 参加型で提案型の議論を完成させる

 言論NPOは、2年前のウェブサイトの大幅リニューアルを踏まえ、「政治に向かい合う言論」「世界とつながる言論」、「市民を強くする言論」を柱として、参加型の議論を形成してまいりました。また、本年3月には顧客目線でウェブサイトの構成を全面的に見直し、コンテンツの配置やデザインを刷新しております。今年度はこうして確立したインフラを十分に活用し、議論の発信力を高め、日本の社会に目に見える大きな変化をつくり出したいと考えております。
 具体的には、本年3月に新しい試みとして始まった「言論スタジオ」において、課題解決のための参加型議論を定期的に行い、中継するほか、昨年から始まったラジオ番組やインターネットメディアなどの他メディアと積極的に連携し、多くのメディアを活用して発信力を強化します。
 
 これらの取組を通じて、2000人の「メイト」(2011年5月現在455人)、4000人のメルマガ会員(同2734人)を獲得し、言論NPOのウェブサイトを年間で100万人の訪問者、1,000万人のアクセスを得る影響力のあるウェブサイトへと成長させるとともに、言論スタジオの生中継を1,000人規模の人々が視聴するような仕組みをつくり上げ、「議論の力で日本を変える」動きを本格化させます。


 

「4つの言論」をどう進めるか

1.「政治に向かい合う言論」

 言論NPOでは、今回のウェブサイトリニューアルを機に、活動コンセプトを「「議論の力」で強い民主主義をつくり出す」として、民主主義に関する議論を本格化させております。「政治に向かい合う言論」では、まずは今回の東日本大震災からの復興を主なテーマとして議論を行い、この国自体の「復興」をかけた議論を展開していきます。
 そして、言論NPOの評価活動を安定させるためにマニフェスト評価委員を拡充し、定期的な評価を継続、また、評価委員との議論を言論スタジオ等で定期的に実施します。
 
 さらに、政党のマニフェスト評価以外に、今年こそ、政治家評価の仕組みをつくり上げたいと考えています。そのための手段として有識者を対象としたアンケートを随時実施するほか、有権者が政治を判断するための材料として、政治家個々人にも積極的に議論に参加していただき、その発言を広く公表していきます。


2.「世界とつながる言論」

 日中の国民間の相互理解を深める場として、今年は第7回目の「北京-東京フォーラム」を北京で開催します。
 東日本大震災を契機に、日中間で連帯の気運が高まっていますが、昨年9月の尖閣諸島問題でも明らかになった通り、依然として日中両国民間の信頼関係は脆弱であり、安定的な相互理解の仕組みがますます必要になっています。こうした状況の中で行われる第7回フォーラムでは、政治対話、経済対話、メディア対話、安全保障対話、地方対話の5つの分科会が行われますが、いずれも会場とパネリストが一体となる参加型の対話を行い、またいくつかの対話では、その内容をインターネットで中継し、会場外の人も参加できる仕組みを導入します。

 また、言論スタジオで外交分野の議論を活発化させるとともに、昨年開設した英語サイトでの発信頻度を高め、世界に対する議論の発信を強化します。


3.「市民を強くする言論」

 今回の震災では、非営利組織に限らず、当事者意識を持って課題に挑戦し、活躍している多くの人々の姿が各地で見られました。「市民を強くする言論」では、市民社会におけるそうした人々に焦点を当て、ともに考える議論を行い、そのプロセス、結果を全て公開します。
 
 また、非営利セクターが課題解決に向けて質の向上を競い合う環境をつくり上げるために、「「エクセレントNPO」をめざそう市民会議」の活動に全面的に協力し、「エクセレントNPO」の評価基準を広く普及すると同時に、優れた非営利組織を評価するアワード大会(仮)を開催します。


 4.「次の日本をつくる言論」

 「次の日本をつくる言論」では、日本が未来に向かうために、「みんなで考えよう」をテーマに、「議論の力」を通じて課題の解決やこれからの日本の将来像や方向性を描く取り組みを行います。
 ここでは、言論NPOのメンバー(基幹会員)を中心としたいくつかの議論チーム(民間版審議会(仮))を結成し、そこで期間を区切ったオープンな議論を実施、毎回必ず成果を公表することで、政治や社会に対して影響力のある提案を行って行きます。 
 
 また、こうした活動を通じて、常に言論NPOの会員がウェブサイト上で議論をしている体制を整え、会員の定着と同時に会員増加にもつなげていきたいと思います。


II. 資金基盤の多様化に目標を持って取り組む

  今年度は、一昨年から始まった3カ年計画最後の年であり、当初掲げた目標を達成すべく、資金基盤の多様化及び拡充に覚悟をもって取り組みます。
 2011年度は、会費収入と事業収入で5割、残りの5割を寄附で支えるということを目標とし、会費と寄附、そして事業収入で安定的に運営される非営利メディアとして社会に対する影響力を一層高めていくことを目指します。


1.会員組織の拡大

 言論NPOの活動を持続的に発展させるために会員組織が最重要との認識のもと、この活動のミッションに共感し、ともに活動に参加する会員に対するサービスを充実させると同時に、その拡大に目標を持って取り組みます。
 

a)会員ケア/会員サービスの充実化


 今年度は、メンバー(基幹会員)を対象とした「メンバーフォーラム」を定例化して多数開催し、メンバーがこの活動に参加し、メンバー同士の交流を深める場を積極的に設けていきます。また、上述の「言論スタジオ」や「次の日本をつくる言論」において会員がコンテンツ運営に参加できる仕組みを導入します。
 また、ウェブサイトリニューアルに伴い、会員限定サイトの充実化も図ります。
 

b)会員拡大


 会員拡大の目標を、メンバー(基幹会員)を200名、一般会員を500名と定め、今年度でこれを達成すべくこれまでにない取り組みを行います。
 具体的には、主としてメンバーの拡大を目的として、言論NPOの活動を深く理解してもらうための「活動報告会」を定期的に開催する他、ボーナス期である6月、12月に会員拡大のためのキャンペーンを行う予定です。


2.戦略的な寄付集め

 会員拡大と同時期の6月、12月にキャンペーンを行い、大々的に寄附を呼びかけていきます。
 また、11月には設立10周年パーティーを開催し、「チャリティーパーティー」として位置づけた上で多くの方の参加を呼びかけます。


3.事業による資金の多様化

 言論NPOの資金基盤を多様化させるために、上記「会員組織の拡大」「寄付集め」に加えて、今年度は「事業収入の獲得」に力を入れます。
 具体的にはまず、言論スタジオなどの企画と連動させながら、一般の方が参加できるオープンフォーラムを多数開催し、フォーラム収入を増加させると同時に、こうしたコンテンツを書籍化することで、この活動のさらなる普及に務め、出版事業の拡充に取り組みます。
 さらに、新しい試みとして、コンテンツ配信料の収入化にも取り組んでいます。JFN系列のラジオ番組「On The Way Journal」の他、インターネットメディアなどへのコンテンツ配信を通じて、安定的に収益化できる仕組みづくりに取り組んでいきます。

  これらの会員・顧客基盤の強化・拡大による会費収入と事業収入の増加及び寄附金収入を増加することにより、平成23年度は、会費収入および事業収入が全体の5割、残りの半分を寄附収入で成り立たせる資金基盤の多様化を目指します。


4.組織体制の強化

 事業基盤を固めるために、アドバイザリーボードや理事会を定例化し、「言論NPOの活動方針を絶えず見直しながら実行していく体制を整える他、メンバーを中心として企画委員会や編集委員会を立ち上げ、それぞれ言論NPOの事業戦略やコンテンツ展開について、会員の参加を得ながら進めていきます。

 さらに、今年度より年間の活動をお伝えする年報や会報誌(季刊を予定)を発行し、会員を含めた顧客との意思疎通を一層深めるほか、今年度は、新しい顧客システムを導入し、戦略的な会員集めや寄付集めを可能にするシステムの運用を開始します。また、今年度は常勤スタッフの増員や社会保険制度の拡充に取り組み、安定的な雇用体制への取り組みも始めています。