言論NPOとは

平成26年度 言論NPO事業計画

 言論NPOでは、平成24年度からの3年計画で「中立、独立、非営利のネットワーク型シンクタンクの完成」を目的とした基礎固めに取り組んできました。平成26年度はその最終年度となります。

 昨年度の活動を通じて、言論NPOがどのようなシンクタンクを目指すべきなのか、私たちはその姿を明確に捉えることができました。私たちが昨年から提唱している「言論外交」は、当事者として課題解決に取り組む有識者間の対話を通じて健全な輿論を形成するとともに、その社会への発信を通じて課題に向かい合う世論を喚起する取組みです。これは外交だけの問題にとどまらず、民主主義を強く機能させることに他なりません。いま日本に問われているのは民主主義の問題であり、課題解決に向かう輿論の力です。言論NPOは、日本を取り巻く国内外の課題に対して、そうした輿論を顕在化させる発信力を持った、課題解決型のシンクタンクを目指します。

 私たちはその完成目標を、東京五輪が開催される平成32年(2020年)と新たに設定しました。五輪の終了までに、山積する課題に向かい合い解決していく強い民主主義を機能させないと、日本の将来は非常に厳しいものになると私たちは考えます。言論NPOは何としてもそれまでに、輿論と課題解決が連動し、強い民主主義が機能する仕組みを作りたいのです。

 今年度は、そのような機能を果たす非営利のシンクタンクを完成させるための基盤作りに極めて重要な節目の1年となります。今年、私たちは言論外交と民主主義の取組みでこれまでの集大成を行うとともに、次の準備に取り組まなければいけません。次年度からは、「東京-北京フォーラム」が新しい10年間の枠組みに入るほか、日米中韓のマルチ対話の実現、民主主義の機能検証など、言論NPOは新たなスタートを切るからです。

 こうした取組みを成功させるために、3年計画で打ち出したシンクタンクの基礎固めを確実に成功させなくてはなりません。そのためにも今年度中に、会員からの寄付、各事業に対する企業からの寄付、そして国内外の財団からの助成金という、3つの安定した資金基盤を構築することが必要です。これが今年度の計画のもうひとつの柱となります。

 平成26年度は、そうした資金基盤を実現すること、そして「言論外交」と強い民主主義を機能させるための議論という2つの取組みに注力します。


Ⅰ.輿論の顕在化と2つの言論活動

 言論NPOはまず、「言論外交」と日本国内で強い民主主義を機能させるための議論作りに取り組みます。その柱は、課題解決の意思を持つ世論、つまり輿論の姿を国内外で顕在化させることです。冷静な輿論の存在を常に顕在化させ、当事者として多くの人が課題に取り組むことで、輿論と課題解決が連動する仕組みが動き出すのです。言論NPOはそのために、民間外交と、国内の民主主義の2つの分野でこうした取組みを進めます。

輿論を顕在化させる仕組み作り


1.東アジアに平和で安定した環境を作るための「言論外交」の展開

 今年度は、中国との2か国間対話「東京-北京フォーラム」が第10回目の節目を迎えます。これを成功させ、昨年合意した「不戦の誓い」を具体化し、両国関係を改善に向けて動かすとともに、11回目以降の開催に向けた新たな体制作りに取り組みます。

 韓国との間では「第2回日韓未来対話」を開催し、両国民の感情的な対立は乗り越えるべき課題であるという認識の共有を目指します。また、国交正常化50周年となる平成27年に向け安定的な対話のメカニズム作りを進めます。

 こうした2か国間対話に加えて今年度は、東アジアの平和と安定に向け、主要な関係国とのマルチ(多国間)対話の実現に向けた枠組み作りを始めます。そのためにまず、日米対話の実施に着手します。その一環として、ワシントンで日中・日韓の世論調査結果を基にしたワークショップを開催することを検討しています。この対話を通じ、言論NPOは米国内の有識者ネットワークを構築します。

 こうした米国との対話チャネル確立により、日本、中国、韓国、米国の参加する様々な多国間枠組みが可能になります。今年度中に4か国の有識者ネットワークを完成させて安定的な議論を行う仕組みを作り、次年度のマルチ有識者アンケート、マルチ対話実施に向けた準備を進めます。

 東アジアの様々な課題をめぐる関係国の輿論を絶えず顕在化させ、それを基にした対話を継続的に実施することで、紛争回避と、東アジアにおける平和で安定した環境作りに私たちは取り組みます。


2.強い民主主義を機能させるための取組み

 言論NPOのネットワークに参加する国内の多くの有識者の声を輿論として顕在化させながら、日本の課題に関する議論を定期的に行い発信していきます。インターネットで毎週1回動画配信している「言論スタジオ」の公開化を進めるとともに、有識者アンケートと連動して議論する仕組みを強化していきます。

「輿論」と「世論」 また、従来から実施している政権評価は、ただ結果を発表するだけではなく、評価プロセスそのものをメディア等を通じて発信していくことで、国民が主体的に政治を考えるための舞台として発展させていきます。

 さらに、言論NPOに参加する有識者のネットワークを軸にして、日本の民主主義を総点検する作業に取り組みます。戦後民主化のプロセスがどのように進められ、現在の日本社会において民主主義が実際にどのように機能しているのか、検証していきます。また、世論形成者として重要なメディアの在り方について、有識者による評価を行うための準備を行います。


市民社会を強くする取組み

 今年度は、「エクセレントNPO大賞」の3年目となる表彰を11月頃に実施します。この表彰に前回を上回る多くの非営利団体の応募を集めるとともに、年間を通じて市民社会についての議論を深め発信していくことで、市民性・社会変革性・組織安定性という優れた非営利団体の3条件を、非営利団体のみならず社会全体に広く浸透させることが今年度の目標です。この取組みを通じ私たちは、市民一人ひとりが当事者として課題解決に取り組む、強い市民社会を目指します。


Ⅱ.3つの資金基盤を確立する

 こうした活動を継続的に発展させていくため、今年度は資金面の基盤固めに特に力を入れて取り組んでいきます。平成25年度に獲得した外務省からの補助金は、今年度も継続することが決定しました。しかし事業を安定的に進めていくためには、単一の資金源に頼ることなく、財源の多様性を保つ必要があります。

 そのため今年度からは、次年度以降の取組みを見据えた早い段階での資金確保を進めます。会員からの寄付金に加え、企業からの寄付金と、国内外の財団からの助成金という3つの資金基盤の確立に取り組みます。

 個別事業では、中国事業において当初日中間で合意した10回のフォーラムが終了し、11回目以降の開催に向けた新たなスタートを切ることになります。そのため今年度のフォーラムが終了する9月以降すぐに、次年度以降のフォーラムに向けた本格的な資金調達を開始します。韓国事業についても安定的な資金基盤を早期に確立する必要があります。また、新たな試みとなる東アジアにおける多国間対話の実現のため、今年度はまず日米対話を実施するための資金調達を行います。このため、5月の訪米時に在米の助成財団との会合を持つなど、既にアプローチを開始しています。

 さらに、強い民主主義を機能させるための様々な取組みに対し、クラウドファンディングなどオープンな形で小口寄付を広く集める仕組み作りの検討に入ります。これにより、より多くの人に支えられた運動を実現したいと私たちは考えています。


Ⅲ.会員組織運営


 
 言論NPOの活動は多くの方の協力があって初めて成り立つものであり、会員組織はその基盤を成しています。今年度は、会員が言論NPOの活動そのものに参加できる機会を増やし、共にミッションの実現に向けて歩んでいける仕組み作りを行います。さらに会員拡大に取り組み、より多くの方に支えられた強い影響力を持った運動を目指します。


1.活動への参加機会の充実

 前年度から実施しているモーニング・フォーラムは、ハイレベルのゲストスピーカーを交えた議論の場として、今年度も継続開催していきます。また、会員交流会を定期的に実施し、最新の取組みを共有するとともに会員相互の交流を深めていきます。

 これに加えて今年度は、活動の柱となる「言論外交」や民主主義を機能させるための議論において、新たな参加機会作りに取り組みます。会員を対象に「言論スタジオ」の中継・収録現場を公開し、各分野の有識者による第一線の議論に参加していただける機会を作ります。また、メディア評価など民主主義を機能させるための新しい取組みについて、主体的に議論作りのプロセスに関わっていただける仕組み作りを進めます。

 その他、ウェブサイトでの会員認証サービス導入の検討を進め、会員限定の情報発信やフォーラムとの連携など、ウェブを通じた新しい議論参加の仕組み作りに取り組みます。


2.会員拡大への取組み

 会員拡大における今年度の最優先課題は、メンバー(基幹会員)200人の目標達成です。活動参加機会の拡充を通じて言論NPOの活動に主体的に参加するコア会員層を増やし、新メンバーの紹介依頼等を通じてこの目標を早期に達成することを目指します。

 一般会員は300人を目標とし、コンテンツ・事業の展開に合わせたタイミングでのダイレクトメール送付や、フォーラムや講演会での勧誘により着実に会員数を拡大します。

 こうした会員拡大のための基盤として、言論NPOからの情報発信の対象となるデータベース登録者を増やすことが必要です。昨年度、言論NPOの活動はメディアの高い注目を浴びたもののウェブサイトの訪問者数は思ったように伸びず、これをどう顧客基盤の拡大につなげていくかが課題です。ウェブサイトやメール、拡散力の高いソーシャルメディアでの情報発信を見直すなどし、様々な活動のベースとなる顧客基盤の強化を図ります。
会員数とデータベース登録者の目標