言論NPOとは

平成30年度 言論NPO事業計画

平成30年度の事業目的と方針


運営の基本目標と目指す組織像

 言論NPOは、平成29年度、「責任ある自由」「民主主義」を守るため、創設以来15年間で築き上げてきた、日本国内外の課題解決に挑む独自のネットワーク型のシンクタンクの形をさらに発展させ、カウンシル(協議会)方式の組織体制に移行するための準備に取り組みましたが、一部、取り組みが遅れています。また、より組織基盤を強化するための対応がさらに必要になっていることも明らかになっています。

 依然、世界では民主主義や自由といった、これまでの世界秩序の規範が挑戦を受け、深刻な状態が続いており、それは日本も例外ではありません。私たちは、こうした歴史的な課題に取り組むためには、言論NPOの組織をより強いものにし、今ある課題解決に取り組むためにも、多くの人が議論するプラットフォームをより強化する必要があります。

 そのため、より強い組織力とミッション実現のために影響力を持った、持続的な組織に言論NPOを発展させる、という私たちの目的は堅持し、平成30年度、そのために再度チャレンジを行います。

 今年度、私たちが中核事業に掲げた3つの事業について目指す目標は以下の通りです。


言論NPOの3つの中核事業の30年度の目標

 私たちが平成30年度に行う3つの中核事業のポイントは以下の3点です。


  • 2020年を目途に「東京会議」を世界のベストカンファレンスの1つに発展させるため、世界のシンクタンクとのリレーションをさらに強化し、各シンクタンクがもつ有識者の声を世界に発信する仕組みを作る。

  • 北朝鮮問題を含む北東アジアの平和構築に向けて、有識者や市民の理解を促すため、二国間対話やマルチ対話と連動して、世論調査や各国での有識者調査を実施する。また、日中間では新しい政治文書に繋がる「平和宣言(案)」を提案する。

  • これまで行ってきた政策評価や実績評価だけではなく、「選挙」や制度の立てつけなど、民主主義の根幹を改めて考え活かすために、民主主義のチームを立ち上げ、多くの識者を巻き込んでいく。


世界的な課題解決

 「世界的な課題解決」では、東京発で世界の課題に取り組み、その結果をG7議長国に提言する「東京会議」を2020年3月までに、世界のベストカンファレンスの1つに発展させることに目的があります。

 2回の「東京会議」を経て、言論NPOと世界を代表する10か国のシンクタンクとのリレーションは深まってきました。そのリレーションをより強固なものにすると同時に、世界のシンクタンクが有する有識者ネットワークを活用しながら、世界の有識者の声を、世界の課題解決に向けて世界に発信していくサイクルを作っていきます。

 同時に、世論調査を活用して、多くの市民が世界の様々な課題に対して考えている声を世界に提供していきます。

 また、こうしたグローバルな問題に関して国内でそれを議論する場をより強化するために、専門家が集まって機動的に課題解決に取り組む舞台を作り出し、その議論を公開して、より多くの人たちが課題解決に向けて考えられるようなサイクルをつくり出していきます。こうした取り組みを通して、課題解決の意志を持った世論を日本国内に作り出していきたいと考えています。

 さらに、議論の中核となるべき若い世代の声を発掘し、大事にしていきたいと思います。


アジアの平和構築

 「アジアの平和構築」においては2020年に北東アジアに平和秩序を構築するための多国間の対話メカニズムを発足させるという目標を実現させるため、「『アジア平和会議』準備会議」を昨年度に立ち上げました。この準備会議では、本準備会議が日中や、日韓、そして日米の二国間対話の母体となり、多国間対話の準備を行うと同時に、日中平和友好条約締結40周年となる2018年に、日中両国がこの地域の平和と発展に「厳粛な責任」を果たすため、「平和宣言」(仮称)を取りまとめる、努力を行うことになります。

 北朝鮮の非核問題は、朝鮮戦争の終結や朝鮮半島の将来などの課題と、それぞれが絡み合いながら、動こうとしています。今年は、朝鮮半島の完全な非核化を巡る動きに民間としても参加し、出口に向かう協議を開始し、それを北東アジアの平和向けた多国間対話の舞台づくりにつなげていきます。

 そのため、昨年、1年前倒しで立ち上げた「日米対話」は今年、常設的な対話を目指します。2年前倒しで行った日米共同世論調査、さらに「日韓未来対話」や日米中韓の4カ国の世論調査を軸とした「4カ国対話」も、この目的と連動して機能させていきます。

 そして北東アジアの平和構築に向けて専門家のみならず、有識者や市民の理解を広げるために、こうした事業と連動して、様々な公開フォーラムを機動的に行います。


民主主義

「民主主義」の問題については、今年もアジア各国での世論調査を実施し、課題を明らかにした上で、その解決に向けた議論を戦略的に進めていきます。

 同時に、国内においては「選挙」は有権者が政治参加するための民主主義の根幹であり、「選挙」を活かすための取り組みとして、単なる評価結果を公表するだけではなく、信頼性を高めるために多くの人たちがそのプロセスで判断材料として使えるような材料を提供していきます。また、民主主義に関する中核のチームを立ち上げ、民主主義全般の教育や課題に多くの識者を巻き込む形で議論を開始し、機動的にフォーラムを行っていきます。

 また、日本の市民社会の受け皿となるべき非営利組織の強化のために、エクセレントNPO評価基準活用のサイクルをつくるために、今年もエクセレントNPO大賞に伴う様々な活動や市民社会自体の強化のための作業を行う。

 こうした取り組みは多くの人に広く理解され、新しい動きとして支持される必要があります。そのため、日本国内メディアとのリレーションを強化すると同時に、海外メディアとの関係、海外シンクタンクとの意見交換、企画を共有できるような連携を作っていきます。

 こうした3つの事業はいずれも2020年に成果目標を掲げており、この3年間で計画的に事業を進め、2020年にはそれらを言論カウンシルの中核的な事業として発展させていく予定です。


組織基盤の強化に向けた4つの目標

 昨年は主に組織のガバナンス強化に取り組みました。平成30年度は、そうした強化が組織運営の中で定着して活用されることが重要な目的の一つとなります。

 その上で、私たちが本年度さらに強化しなければならないのは、会員組織の強化と積極的で戦略的な広報の2点です。

 言論NPOの活動は問題意識を共有する多くの人たちの協力で成り立っているものです。そのためには、多くの人たちが様々な形で私たちの活動に参加し、協力してもらえるような体制を作らなければ強い組織はできないと考えています。

 言論NPOの活動は、他のシンクタンクに比べて多くのメディアで取り上げられます。
私たちが、ほとんどの議論を公開し、さらにメディアでの報道を強い意識を持っているのは、強い市民こそが強い民主主義を作るという基本意識のもとで、私たちの活動をより多くの人に知ってもらい、参加してもらうという方針を貫いているからです。

 しかし、残念ながら、まだまだ言論NPOが、平和や民主主義のために取り組んでいるということが多くの人に知られておらず、新しい議論を作り出す影響力を持つに至っていません。そのため、私たちは組織運営の強化と同時に積極的な広報戦略という問題に、今年は注力して取り組まなければいけないと考えたのです。

 その上で、私たちの活動の目標を以下の4点に定めました。

  • 言論NPOの活動を多くの知識層や一般の人に理解してもらうために、既存メディアとの連携や協力、機動性を持った多様な情報発信やフォーラムなどの戦略的な広報発信。
  • 多くの有識者や専門家の参加を軸とした、3つの事業を運営する会議体自体の強化や、各会議間の連携強化。
  • 会員が参加できる各種フォーラムや活動報告などの強化と、会員や活動への参加者の計画的な新規開拓。
  • 資金源の多様化のための一般寄付の開拓と国内外の助成金への計画的な申請。


戦略的な広報発信

 言論NPOの活動をより多くの人にお伝えするために、既存のメディアとの協力や連携を進めていくと同時に、政治家や調査機関や専門家やジャーナリストに、言論NPOの活動を定期的に伝えていきます。

 また、言論NPOの活動の原点を踏まえ、より整理された議論の報告を書籍や著作物で伝えていきます。また、多くの人たちが自らの問題として考える機会を広げていくために、SNSを使ったウェブサイトや様々な教育を目的として、誰もが学べるような機動力を持ったフォーラムや議論を行っていきます。

 また、世界の有識者やシンクタンクとの連携も強化し、共通のテーマに基づいた議論を様々な形で行い、その内容は英語でも世界に発信します。

 議論発信は国内外に向けて行われ、ウェブのアクセス数を現状の2倍強程度に拡大します(昨年の実績は年で423,454PVから90万PVへ)。

 また、私たちが直接、情報を発信でき、様々なアンケートを届けることができる、議論の参加登録者は現状の1万人から2万人規模まで増やします。


各会議自体の強化と各会議間のネットワークの強化

 言論NPOが行っている前述した中核の3つの事業は、「東京-北京フォーラム」の実行委員会、ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)、「アジア平和会議準備会議」、マニフェスト評価委員会を始めとして、多くの人たちが参加しています。こうした各会議自体の運営の関る参加者増やすほか、民主主義の議論や評価に関するチームを新設します。

 これらの運営チームは各会議が横でつながり、連携して協力し合えるようなコミュニケーションチャネルを徹底していきます。


会員などの参加者がより、言論NPOの活動に参加できるような取り組みと新規開拓

 さらに、言論NPOの会員やメール登録者など、言論NPOの活動に継続的に参加していただいている人たちに、参加者限定の情報発信を進めると同時に、公開、非公開を問わず定期的なフォーラムや勉強会を提供していきます。

 さらに、参加者には、私たちが取り組むアンケートを定期的に行い、参加者間で課題を共有すると同時に、各アンケートで出た課題や問題に点について議論していくような、参加者間でフィードバックを進める議論を行います。

 そのほか、一般の参加者も含めた多様な対話やフォーラムを機動的に運営することで、言論NPOへの参加者のすそ野を広げます。

※昨年度の議論には年間で延べ約600人が聴衆として参加したが、今年度は2000人規模を目指します。
※昨年度は6回の有識者アンケートに対し1423人から回答があったが、今年は定期的に実施すると同時に2倍程度の3000人を目標にします。


資金基盤の多様化

 言論NPOの経営基盤をより広範な社会の指示や理解に支えられるものとするために、資金源をより多様化し、戦略的な発信に合わせて、幅広い寄付を集めるための取り組みを行います。そのためには、これまで以上に国内外の助成機関に言論NPOの事業への助成申請を計画的に行い、特に欧米の財団への申請を強化し、その一環として、ワシントン窓口の設置も検討します。

 さらに、昨年末に一部で実施した「ふるさと納税」を今年も早期から着手し、本格的な寄付金集めを計画的に実施していきます。


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