言論NPOとは

理事紹介:石黒光

石黒光(東京大学前監事、NPO法人日本医療政策機構理事)
いしぐろ・ひかる
profile
1958年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、ハーバード・ロー・スクール修士。住友銀行、ソロモン・ブラザーズ、メリル・リンチほか内外投資銀行、金融機関等を経て、2004年4月より現職。ニューヨーク州弁護士、CFA、CFP。


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Q. 言論NPOに参加されたきっかけは何ですか?

 言論NPOの活動には、フォーラムに参加したことがきっかけで会員加入して顔を出すようになり、ボランティアで事務局長を務めたのち、理事に就任しました。工藤さんとは、そのフォーラムでお会いしたのが初めてだったと思います。


Q. 石黒理事から見て、代表工藤とはどんな人ですか?

 工藤さんは、モデレーターというか、コーディネーターというか、人を集めて特定のテーマで議論をし、その中から一定の論点や結論を引き出すという才能に長けている人だと思います。人の懐に飛び込んでいくのが得意で、説得も上手い。皆が何故か「この人に協力したい」と思ってしまうような人ですね。言葉が適切かどうかはわかりませんが、"人たらし"と言いますか、いわゆる"母性本能をくすぐるタイプ"という感じがします。


Q. 言論NPOの活動内容について教えてください。

 工藤さんはもともと『金融ビジネス』や『論争 東洋経済』など「紙媒体」での議論づくりを行っていましたが、言論NPOでは、この紙媒体に加えて「インターネット」「フォーラムやシンポジウムなどの人の集まり」を合わせて、我々はこれを「三位一体」と呼んでいるんですけれども、これらを組み合わせた議論形成を行っていこうと話していました。つまり、これら3つの媒体が相互にシナジー(相乗効果)を効かせながら言論活動を行っていくということです。日本において、このような「三位一体」型の議論形成と真っ向から競合するメディアはおそらくないと思います。論争雑誌は紙媒体ですし、新聞も、最近ネット展開に力を入れたりシンポジウムを開催したりしていますが、その目的は議論形成とは異なっています。その意味で、この「三位一体」型の議論形成は非常に意味のあるやり方だと思います。


Q. 言論NPOが設立当初から掲げていた「言論不況からの訣別」とは何を意味しているのでしょうか?

 ここで言う「言論」とは、国家レベルの政策形成のための言論だと私は考えています。つまり"言論不況"とは、国レベルの政策形成のためのさまざまなプレーヤーと、そのプレーヤーが集う場所が不足しているという状態であり、そこからの"訣別"とは、プレーヤーを増やし、そのようなプレーヤーが集い、活発な議論が行われる場所を作っていくということです。日本は国民の教育水準は世界の中でもトップレベルですが、国家政策の話が一般有権者の間で議論されることはほとんどなく、それゆえに、政策を掲げての選挙というものも行われないというのが現在の状況です。この状況を打開するには、情報の交流を通じてもっと政策に関する議論が活発に行われることが必要だと思います。


Q. 「活発な議論」のために必要なのは何でしょうか?

 例えば、学問の役割が挙げられます。学問と政治との距離についても、従来は「学問に政治を介入させない」との意識から、学問の側が政治から非常に距離をとっていました。大学の政策研究も、具体的な政策を打ち出すことでどこかの政党に与していると思われることを恐れていました。しかし、大学の中立性をしっかりと保てるなら、政策を思い切って発信すべきです。そうすることで、カウンターパートが育ち、一般有権者が「国家レベルの政策形成」を行う上での貢献にもなると思います。


Q. ご趣味は何ですか?

  高校まではピアノを習っていました。また、大学時代はスキー部に所属しており、競技スキーの選手でした。スキー部が、長野県北安曇郡の栂池高原にロッジを保有しており、合宿を行うのですが、四季それぞれに自然を楽しむために今もよく訪れます。ロッジは、雪を見たことがない留学生と一緒に白銀のゲレンデを滑って、交流を深めることにも使用されています。


Q. 言論NPOのサイトを訪れた方に対して、メッセージをお願いします。

言論NPOの活動を通じて政策形成・実行プロセスが飛躍的に充実していくことをあらためて期待します。

言論NPOは言論不況からの訣別を掲げてその活動をスタートさせました。その当時は、経済も不況であり、世界的にも存在感が希薄な中で、ここで言論を喚起しなければ、このまま日本は沈んでしまうという危機感がありました。その後の底入れがあったものの、現在、世界の多極化傾向と将来の制約条件が顕在化する中、活発な言論を通じて、わが国の進むべき道、とるべき方策を明らかにし、政策の実行を監視していく必要性がさらに高まっているといえます。

言論によるリーダーシップが一段と強く求められています。


インタビュアー:
インターン 弓岡美菜(東京大学)