言論NPOが20年で果たしてきた役割と、期待すること(地球規模課題編)

2021年12月13日

従来の国際的な枠組みが機能しない中で、言論NPOが行う新たな枠組みとしての対話に期待
~世界課題に対する言論NPOの取り組みと、今後への期待~

 1999年より世界保健機関(WHO)西太平洋事務局・感染症地域アドバイザーを務め、今回のコロナ禍においても、政府の新型コロナ対策分科会メンバーでもある押谷仁氏(東北大学大学院教授)に、今回のコロナへのWHOはじめ各国が行った対応や国際的な協力の現状について、こうした中で、言論NPOが果たせる役割について、お話を伺いました。(聞き手:工藤泰志、西村友穂)


今後もパンデミックは起こる可能性が高いものの、
どのように対応していくのか、世界でのコンセンサスは存在しない


 ―新型コロナの世界的パンデミックや気候変動などの深刻な環境問題を受け、世界は今、どのように変わろうとしているのか、どういう変化が始まっているのか。(あるいはどのように変わるべきなのか)

oshitani.jpg押谷:世界は色んな危機に直面していて、感染症の問題だけでなく地球温暖化の問題や経済危機など様々な課題があるかと思いますが、様々な危機がグローバル化の進展と共に、世界的に連動するような危機が起きていることが原因だと思います。コロナの流行がいつどのように収束するのか見通せない状況ですが、この傾向は、仮にコロナが収束するとしても、この様な危機に直面しているという現状は変わらないと思います。今後も必ずパンデミックは起こると私は思っており、2009年は、例外的に病原性が低いウイルスが起きましたが、今後起こるパンデミックはより厳しいものが考えられていています。それに対して、どう対応していくのかは今一つ世界中がきちんと見通せていない状況だと思います。

 今回の新型コロナウイルスのパンデミックに対しても世界的な色々なメカニズム、米中の問題など、そういうグローバルヘルスの問題点というのも明らかになっており、必ずしも適格な対応ができていないと思います。こういう状況の中、今後どうやっていくのか検討していく必要があります。特に、一般的に先進国によりコロナの症状が強くなる傾向ですが、科学技術に対する過信みたいなことも今回のパンデミックで問題になったと思います。検査やワクチンが出来て、これで収束するとヨーロッパやアメリカなどでは言っておりましたが、実際には収束出来ていません。自然科学だけでは解決できない問題という事も明らかになってきている中で、どのようにしてこうした問題に取り組んでいったらいいのかという事が世界でよく見えていない、という状況に陥てるのではないかと思います。


これまでの国際的な枠組みが機能しない状況では、
言論NPOが行っている二国間対話を始め、様々な対話のチャネルが重要に


 ―言論NPOは20周年ようやく迎えましたが、言論NPOがこれまで果たしてきた存在・役割をどう御覧になっていたのか。我々今後に期待することは何か

押谷:まず、これからどうあるべきか、という事ですが、21世紀に入って次々に感染症の問題において新しい問題が出て来ていて、2002~2003年に起きたSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行から始まり、エボラ出血熱等、他の感染症の問題もありました。そうした自然からの警告に対して世界は真摯に向き合っていく必要があると思います。向き合わなかった結果が、今の状況を生んでおり、コロナによって500万人以上の人が亡くなってしまう。実際に亡くなった人はそれよりは遥かに多いと推定されているのですが、そういう状況を生んでしまっている。やはりここで立ち止まらないといけないと思います。元の社会に戻せば、今後も感染症の流行、より厳しい感染症の流行というのも起こり得ます。新型コロナの問題もまだまだ続くし、これに対してどのように対応していくのかということをきちんと考えていかないといけない。グローバル化した社会というのは、こういう感染症だけではなく、色んな危機に脆弱な社会になってしまっています。

 私も言論NPOの活動に少しずつですが参加させて頂いて、言論NPOの役割は今後ますます重要になってくると思います。今回のパンデミックを通して、これまでの国際的な枠組みがほとんど機能しなかった。WHOも必ずしも機能しなかったし、国連も2010年の時には安全保障理事会が決議を出したりしましたが、今回は国連本体も動けなかった。今までの感染症の危機は主にアジアやアフリカで起きていて、それに対してWHOはある程度機能することはできました。しかし、今回の問題は、これまでの世界を牽引してきたアメリカやヨーロッパ等の国々がより厳しい状況になる中で、これまでのグローバルな枠組みが機能しなかった。そうした状況下では、言論NPOが行っているようない日中、日韓等の二国間対話が役割を果たさなければいけない状況が強くなっていくのではないかと思っています。私自身もそれ以外にも、色々な国の人たちと個別に話をしていますが、そうした対話が必要で、第三者的にこれまでの枠組みではない形で色々な対話をし、益々必要になって来るのではないかと思っています。


 ―いつ収束するのか?

押谷:日本もまだまだ流行は起こると思います。欧米やシンガポールの状況など見ているとワクチンだけでは解決しておらず、中国なども無理やり抑え込んでいる状況で、中国ワクチンはより効かないというデーターははっきりしています。どこかのタイミングで中国も感染爆発は起こると思います。北京オリンピックまでには何とかしようとしていると思いますが、それ以降厳しくなっていくと思いますし、韓国も今厳しくなってきている。そういうことを考えるとまだ時間がかかると思います。今年の春以降、特にこの冬にはかなり厳しくなると想定しています。ヨーロッパはこれから70万人死ぬかもしれないというデーターをWHOが出していますが、そういう中で暫くは収まらないのではないかと思います。


 ―パンデミック禍で米中対立が深刻化し、世界が分断に向かうのではないかという心配があり、国家だけでは国境を越えた問題に対応できないのではないか、また、色々なアクターが動かないとパンデミックを乗り越える状況に向かえないのではないか。現代において、国家主導の傾向が強まっており、こういう状況について専門家としてはどう見ているのか。これに対して、我々はどういう風に対応していかないといけないのか。

押谷:WHOがインディペンデント・パネルのレポートを今年5月に出していて、その中で新型コロナのパンデミックを封じ込める機会があったとすると去年の2月。2020年の2月が最後の機会だったというレポートが出ています。あの時期に国際社会が協力して、この問題にきちんと対応することができなかった背景には、中国とアメリカの国家間対立が強く出てしまったことは一つの大きな問題だったと思います。本来はこういったグローバルコモンズというような、全世界共通の課題に対しては、世界が協力して対応する必要があったものの、それが出来なかった。こういう事が現在のパンデミックの状況を生んでしまって、国ごとに対応も違うし、そういう中で変異株が出て来てしまった。最初の頃WHOのドクター・テドロスが「ソリダリティ(団結)」と言ってましたが、実際にはそういう形にならなかったし、今もなっていない。この問題をどういう風にして解決していくのか。従来の枠組みの中で議論していくのは難しい問題なので、言論NPOのような組織が何らかの打開策を見出していくことが必要なのかなと思います。


 ―言論NPOの果たすべき役割とは?

押谷:複雑な問題が出て来て、自国ファーストという考え方にシフトしていく中で、グローバルな問題に対して従来の枠組みで解決は難しく、新たな枠組みを作る必要があると思います。国連やWHO等枠組みが必ずしも機能していないため、補う何かが必要だと思います。NPOの活動も今後大きな役割を担っていくと非常に大きな期待をしています。

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