「なぜ今、日韓間で民間対話が必要なのか」識者3氏が語ります

2021年9月08日

現代民主国家の外交は政府だけではなく、民間が果たす役割が極めて大きい

sugiyama.png杉山晋輔(前駐米大使)

 条約締結など外交の最終的な仕上げは政府同士の仕事です。しかし、そこに至るまでの外交交渉において、民主国家では国民世論が大きなファクターになることは当然です。

 しかも、自国内の世論のみならず、相手国の世論にも働きかけることが大事になってきますが、それはもはや政府だけではできず、国民全体の力が必要になってきます。

 例えば、国民の代表である議員同士の外交がそうです。また、民間の有識者間の対話など国民間の幅広い対話のチャネルも重要な役割を果たすことになります。もはや19世紀の宮廷外交の時代とは異なり、現代民主国家の外交においては政府だけでなく、国民が果たす役割は非常に重要なのだということを、これまでの外交官人生の中で私は強く実感してきました。

 こうした民間外交の中でも、私の印象に特に強く残っているのは、2013年の「東京―北京フォーラム」で合意した「不戦の誓い」をめぐる言論NPOの交渉です。徹夜で細かい文言の調整を行う交渉はまさしく外交そのものでした。

 現在、言論NPOはありとあらゆる課題について、内外の様々な有識者と議論をしています。こうした幅広いレベルで意見の交換や交流こそが、政府間の外交の基礎となるものであり、決定的に重要であると考えています。

1 2 3