世界が大きな課題に直面する中、日中両国の若い世代が考える日中関係とは「第18回東京-北京フォーラム」青年対話 報告

2022年12月08日

 中国側からは、若者関係の事務を所管する政府系団体「全国青年連合会」の孟洋・国際部部長は「本日の分科会を聴いていて平和、発展、協力、対話がキーワードだと思った。認識を共有して協力を深めてゆく。まさに青年交流の現場作業に携わる者にとって大きな励みになる」と歓迎の意向を表明。過去50年の青年交流を振り返って「政党、政府、議会などの公のルートだけでなく、地方、メディア、企業などいろいろな分野で活発に行われている。今年さまざまな問題はあるが、前向きなシグナルもたくさん見られる」と指摘。続けて「青年は未来だ。若者同士の民間交流があれば、将来は麗しいものになると信じている。中国最大の青年団体として、今後も共通した発展にしかるべき貢献をしたい」と抱負を述べました。


日本人が公平で客観的な等身大の中国を知ることが、関係改善のスタートに

017Z9847.jpg 続いて日本側メディア代表として共同通信外信部の山上高弘記者が見解を表明しました。中国を含めて海外赴任経験はないことから「一般日本人の立場・視点としての発言」と断った上で「国交正常化50年だったにもかかわらず、あまり盛り上がらなかったのではないか。政治も両国の緊張があって難しい状況にある」と印象を語りました。その上で、両国の若者が共通してサブカルチャー分野に関心を持ち始めたことは「良い兆し」と歓迎する一方で、社会全体に及んだ韓流ブームまでは至っていないと分析。さらに「シビア」な日本の若者気質に触れて「中国に関わることがプラスになるのかどうかを丁寧に伝えることが求められている」との考えを示しました。

 「中国最大のメディア」であるCMGアジア・アフリカ地域センター日本語部の劉叡ディレクターは「日本の対中国認識が不十分だ。断片的な情報しかないことが最大の問題である」と指摘。自身が担当した「相談番組」に寄せられた日本の留学生による良好な中国滞在経験などが、日本では報じられることが少ない点に不満を示した上で「メディアは社会のホットなイッシューに焦点を当てやすいけれども、私が紹介した事柄は現代中国の特色を映し出している。もっと公平で客観的に等身大の中国を知ってほしい。これこそが関係改善のスタートだと思う」と語り、日本の報道姿勢に注文を付けました。

山下智博.jpg この点に関して、日中コンテンツプロデューサーの山下智博氏(株式会社ぬるぬるCCO)が2012年から上海で約8年間にわたって、中国の若者向けに日本のカルチャーを紹介する動画を配信して日中交流の一翼を担った経験を披露。さらに帰国後には、民放番組で中国の動画を紹介するなどの体験を踏まえて「10年ごとの節目は関係が良くなかったが、45周年の時は良かった記憶がある。なぜなら中国からたくさん日本に来始めたからだと思う」と述べ、コロナ禍で中断した人的往来が復活すれば、正常化55年に向けて再び関係が改善してゆくのではないかとの期待感を表明しました。

 日本に8年間留学していた北京分音塔科学技術有限公司の郝磊総裁(欧米同窓会留日分会青年委員会委員)は「個人的には中日関係は悪くない。子供を日本に留学させたいという人たちが周囲に20人もいる」と述べました。さらに山下氏の発信するコンテンツの「ファン」「フォロワー」であり、中国向けの動画を制作してきたことに謝意を示しました。


若者目線で見る、日中関係を改善するために必要なこととは

 一連の議論を経て、日本側司会の西村氏が「日中関係を改善するために何をすればいいか」と問題を提起しました。
 「日本のメディアがホットイシューしか報じない」との中国側の指摘に対して、山上氏は「メディアの話から外れてしまう」と断った上で「いかに交流を増やすかに尽きる。共通のSNS・プラットフォームがないことが一つの問題だ」と指摘。日中双方のメディアが共通のサイトを設けて共同企画に取り組むことや、地方自治体の交流機会を増すことも重要ではないかと提案しました。

 中華全国青年連合会国際部の孟洋執行部長は「50年前の先人達が植えた木のお陰で今日がある。両国の若者が歴史を鏡に未来に向かう。友好のバトンをしっかりと受け継いで、友達をたくさんつくる。両国のパートナー関係をより良く発揚し、学び会って共通の発展を促さなければならない」と訴えました。

 また、日本外交を自民党外交部会が「牛耳っている」ように映る現状について、野党の若手国会議員である太氏は「新しい発想でやってゆくべきだ」と述べ、①中国のCPTPP加盟申請の後押し、②日中ホットライン設置加速、③中国語学習の促進──の3点を主張しました。
 郝磊氏も中日関係の改善の観点から①交換留学生制度の推進、②日本のサブカルチャー輸出促進、③宗教交流──などが、両国の関係改善に役立つのではないかと述べました。

 中国のサブカルチャーに詳しい山下氏も「日中関係改善のためにはアイドルしかない。日本人と中国人が両方推せるアイドルが非常に大事。韓国の文化政策を見ると火を見るより明らかだ。ライブ会場では争いが起きない。自分の好きなものを推しているという幸せな環境を幾つかつくることが大事だと思う」と呼びかけました。

 この点に関して、劉叡氏も「SNSを利用して交流することが重要だ」と応じ、WeChat、Weibo、TikTokなどの活用促進を訴えました。さらに日本の視聴者に向けた中国語学習用アプリを提供していることにも言及しました。

 最後に日本側司会の西村氏が28年後の「2050年の日中関係」に向けて、パネリスト全員に見解を求めたところ、パネリスト全員からそれぞれの立場で日中平和友好に資する取り組みに尽力する意見が表明されました。最後に次回以降も「青年対話」を継続することで一致し、約1時間半にわたった議論が締めくくられました。

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