「第5回日韓共同世論調査」結果発表記者会見 報告

2017年7月22日

⇒ 言論スタジオ「第5回日韓共同世論調査」をどう読み解くか
⇒ 孫洌氏インタビュー「日韓両国政府に求められる賢明な外交とは何か」
⇒ 「第5回日韓共同世論調査 」日韓世論比較結果


IMG_2139.jpg 7月29日に開催される「第5回日韓未来対話」を前に、言論NPO(工藤泰志代表)は21日、東京・日本プレスセンターで「第5回日韓共同世論調査」の結果を発表しました。韓国の東アジア研究院(EAI)と共同で、2013年から継続して毎年、行われており、6月中旬から約1ヶ月かけて実施されました。記者発表には日本側から工藤代表、韓国側から孫洌・延世大学国際学大学院教授(東アジア研究院日本研究所チェア)が立会い、今回の調査データの読み方を解説しました。

 隣国同士でありながら、お互いが相手のことを知らなさ過ぎる現状を明らかにしてきた調査ですが、日本人の韓国に対する印象は、前年の「良くない印象」が44・6%だったのが、今年は48・6%とやや悪化しました。調査を始めた2013年からの数字は、37・3%、54・4%、52・4%と悪化が進み、昨年、改善したものの、再び印象を悪くしています。

IMG_2286.jpg これに対し、日本に対する印象を「良くない」と回答した韓国人は56・1%で、2015年の72・5%、昨年の61%から漸次、改善傾向にあり、今回は5割台にまで改善しました。対照的に、「良い」と回答した人も、昨年の21・3%から26・8%に増加しています。調査開始時(13年)の「良い」が、12・2%と「低すぎた」(孫教授)こともあり、その意味では相当、改善されてきたと言えるでしょう。「韓国と日本は、安全保障の面で利益を共有しており、お互い民主主義国家という共通点があります。韓国人の日本に対する良い印象も、3割ぐらいまでいってほしいです」と、孫教授は未来への明るい数字を挙げました。工藤代表は「訪日経験のある韓国人の47・5%が、日本に対して良い印象を持っています。訪日したことのない韓国人の65・4%が日本に対して悪い印象を抱いているように、お互いに訪問したり、知人がいたりする直接交流が盛んになることで、相手国への感情も変わってきます。メディアなど間接交流のあり方が大事になります」と、両国関係のより一層の理解の深まりに期待をかけました。

 一方、日本が韓国に対して「良くない印象」を持っている最大の理由は、歴史問題などで日本を批判し続けるからという回答が76・5%を占めました。次いで、竹島をめぐる領土対立があるからが38・9%で、大統領の不正や弾劾など、韓国政治の動向に違和感があるからは、8・4%でした。工藤代表は「私個人の意見ですが、日本人は批判され続けることに、またか、と疲れてしまっているのでは」と、日本人の胸中を代弁するようでした。

 日韓で避けられない北朝鮮の核開発問題ですが、対抗策として、韓国が核武装することについては、韓国人の67・2%が「賛成」と答え、昨年の調査より8ポイントも増加していました。これに対し、日本の核武装については、両国民とも75%前後が「反対」と答えましたが、昨年よりは若干、ポイントを減らし、その代わりに、「賛成」と答えた人が数ポイント増えていました。核開発問題は解決するのか、という問いかけには韓国人の71・3%、日本人の68・9%が「解決は難しい」と答え、米国などの軍事行動については、韓国人の43・1%が「起こらないと思う」とし、それとは逆に日本人の42・7%は「起こると思う」と不安をのぞかせています。この対比は、北朝鮮とは60年以上も休戦状態が続く、韓国人心理の麻痺なのでしょうか。先行きが懸念される北朝鮮の動向です。

 両国が抱える問題で、認識の大きな違いが浮き彫りになったのは慰安婦問題でした。日韓合意に対する評価について、「評価する」と回答した日本人は41・8%で、「評価しない」の25・4%を大きく上回りました。しかし、「評価する」は昨年の47・9%から減少し、IMG_2252.jpg「評価しない」は昨年の20・9%から増加しました。韓国人では「評価しない」が昨年の37・6%から18ポイントも増え、55・5%と半数を超える数字を残しました。この点について、今回の調査では、韓国側のみ日韓合意に対する賛否の理由を尋ねました。「評価しない」理由で一番、多かったのは「当事者である慰安婦の意見を反映させずに合意したため」で、77・7%。次いで、「法的責任が明確ではなく、謝罪も不十分なため」(49・6%)、「金銭で解決しようとしたため」(49・6%)という理由もそれぞれ半数近くありました。

 日本人の5割、韓国人の7割が、日韓合意によっても慰安婦問題は「解決していない」と考えている現実をどう捉えたらよいのか。孫教授は、「慰安婦が何を思っているのか、もっと話し合うべきでした。それを聞いてみるのも、問題解決への一つの方法でしょう。しかし、再交渉したとしても、合意は難しい。韓国政府は慎重にアプローチしていくでしょう。日韓関係が発展しても、歴史問題は解決しない、これは答えのない問題です」と話し、工藤代表は、「歴史問題が解決しないと、日韓関係は解決しない、と思っている日本人が増えています」と返しました。孫教授は、日本の書店で、嫌韓バッシングの類の本を目にする時、近くて遠い隣国関係の難しさを痛感しています、と語りました。

IMG_2246.jpg その後、日韓のメディアから質問が寄せられ、活発な質疑応答が交わされました。そして最後に、言論NPO事務局から「第5回日韓未来対話」について説明がなされ記者会見が終了しました。今回の世論調査を受けて言論NPOでは、「第5回日韓未来対話」についての準備を加速させます。対話の詳細については、言論NPOのホームページで随時公開していきますので、ぜひご覧ください。