東日本大震災について

2011年3月11日

田中弥生(言論NPO理事、大学評価・学位授与機構准教授)

 国際公共政策博士、専門は非営利組織論、評価論。政府系金融機関、東京大学で客員准教授を経て現職。P.F.ドラッカーのもとで非営利組織の経営・評価について学び、同氏の著書を翻訳。東南アジア、南部アフリカなどのNPO、NGOの支援・研究に着手。著書に「NPO新時代 市民性創造のために」(明石書店)、「NPOと社会をつなぐ」東京大学出版会、「NPOが自立する日 行政の下請け化に未来はない」日本評論社など。

【その他】私は市民社会と政策評価の視点から、議論に参加させていただきたいと思っています。

 阪神・淡路大震災の時のように、市民のボランタリズムが大きく開花していることは確かです。しかし、今回の震災を理解するにあたっては、阪神・淡路大震災などこれまでの震災の経験から作られた固定観念を拭い去らねばならないことを、最近、ようやく認識しはじめたところです。震災後、最初の1週間において最大のニーズは命を守ることだったと思いますが、このニーズに最も迅速かつ効果的に対応したのは誰だったのか。今後、最大のニーズはおそらく、高齢者を中心とした介護と、そして雇用創出。この2つのニーズに、市民社会の中で応えうるのは誰か。そのように考えると、阪神・淡路のときのような一般的なボランティアやNPO(当事者は法人格のないボランティア・グループ)が、必ずしも中心軸にあるとは限らないように思えます。少なくとも、より広い視点で、市民社会の動きを見据える必要があると思っています。

 さらに、そのような視点で、政府の支援策をみると、阪神・淡路大震災に捉われすぎているように見えてきました。被災地の課題とその課題に最も効果的に対応している者やグループと、現行の政策とのギャップを明らかにし、言論NPOの復興議論の場で、ディスクローズし、より多くの有権者と共有することが重要だと思っています。

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