「政治の崩壊」を有権者はどう直視すべきか

2011年6月29日

2011年6月2(木)
出演者:
増田寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問)
宮内義彦氏(オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長・グループCEO)
武藤敏郎氏(株式会社大和総研理事長)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


 6月2日、都内にて、言論NPOの第三回アドバイザリー・ボード会議が開催されました。今回は代表工藤のほか、増田寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問)、宮内義彦氏(オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長・グループCEO)、武藤敏郎氏(株式会社大和総研理事長)が参加しました。

 まず代表工藤は、「衆議院本会議では首相の不信任決議案が議決される重大な局面だが、今日はこの事態を含めて、日本の政治は今どんな局面にあるのか、そしてこれをどう変えていけばいいのかという点について議論をしたい」と述べました。

 まず、日本の政治の現状について、増田氏は、「今、日本が抱えている危機に対して、今の政治は全く対応出来ていない。3月11日を経て、様々な問題が顕在化して日本の政治の弱さが明らかになった」と述べるとともに、「この政権は我々がたった二年前に政権交代によって選んだ政権。単におかしいといっただけでは本当の意味での責任は出てこず、我が身の不明を恥じるということに結局は戻らなければならない」と述べました。また、宮内氏は現在の政党について触れ、「綱領がないのに集まるというのは何なのだろうか。政治を行うにはふさわしくない集団になっているのではないか」と指摘、武藤氏も、「二大政党制と言っても、ほとんど同じ政策を「より徹底してやります」ということが政党間の政治の論争になっている」と述べ、明確な対立軸がないままに、政党が政党としての役割を果たしていないことをともに批判しました。

 そして、日本の政治がこの国の復興に向けて次に進むために必要なことを問われると、武藤氏は「極端な話をすれば、政治がどうであれ、日本国民は必ず乗り切っていく」と前置きした上で、「最も望ましくて、かつ可能なシナリオは、選挙をすること。それまでの暫定的な政権を作り、選挙を機に、新たな政治に転換していくしかこの問題は整理がつかない」としました。増田氏も同様に、「どんな形になったとしても、民主的な正統性はない以上、いずれかの時期において、選挙によって解決するしかない」としながらも、「それまでに、社会保障やエネルギー問題といった、そもそも解決を迫られていた課題に対して整理する期間を置き、次の選挙で何をかけて国民に問うのかを明らかにする必要がある」と強調しました。最後に宮内氏は、政治空白をつくってはならないとするメディアの論調に疑義を呈した上で、「必要であれば、解散や政権の枠組みの変更もありうる。これだけ政党政治が崩れている状況であれば、残念ながら、国民が気付くまで、何度も解散しながら政党というものをつくり上げていくことをしないと、本当の二大政党制にはならない」と指摘しました。

 最後に工藤は、「最も気になっているのは、政治側に、日本の未来にとって現状がかなり厳しいという現実感がないこと。今こそ現実感を取り戻すべき時期であり、国民もそこからスタートしなければならない。言論NPOは、多くの人々が共有しなければならない議論をどんどん公開していきたい」と述べ、本会を締めくくりました。

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