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 訪米「中間報告」 ~ ワシントンで続くシンクタンクの混乱と、ニューヨークではっきり感じた意識変化~

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 現在(13日)、私はワシントンで開かれたCoC(*)総会を終え、ニューヨークにいます。少し肌寒いけれど、新緑がまぶしい季節です。

 ニューヨークに来たのは、私たち言論NPOが進める「米国対話」のパートナー候補と資金提供者候補の人たちと相談するためです。同行した私たちのスタッフが努力して多くのアメリカの方々に連絡を取ってくれたおかげで、数多くの有力者と会うことができました。面会したシンクタンクや財団のファンドの責任者との会談で、私が一貫して言い続けたことがあります。「日本とアメリカの関係をもっと強いものにしたい。強いものにするということは、市民に支えられた日米関係をつくるということです」と。

(*)アメリカ・外交問題評議会(CFR)が主催し、世界主要25カ国26団体のシンクタンクが参加するシンクタンクの国際ネットワーク


日米の市民間の対話は脆弱なまま

 これまでの日米関係は、ある意味で安全保障に偏っており、専門家の対話チャネルはあるのですが、市民間の対話は脆弱なままです。それを痛感したのは、2年前に私たちがシカゴ外交問題評議会と一緒に行った世論調査でした。確かに両国の国民は共通の規範――自由や民主主義――を持ち、アジアや世界共通の課題について協力し合うこと望んでいるわけですが、いかんせんお互いのことほとんど知らないという現実が浮かび上がりました。トランプ政権が誕生し、アメリカの民主主義が大きく揺れ動く中で、アメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱し、日本の対米貿易黒字を二国間の通商問題として持ち出してくるのも、それを正当化できるお互いの不十分な理解が、その背景にあると思うのです。

 私はかねてから、グローバルな規範=リベラルデモクラシーや多国間主義に基づく国際協力を、日本が積極的に主張すべき出番が訪れたと言ってきました。それは戦後の日本の発展の背景には、そうした規範の存在があったからです。それで私はお会いしたみなさんにこうお伝えしたのです、「日米で本気のパートナーシップをつくりたい。そのパートナーシップのもとに、いま世界が直面している民主主義の危機やアジアを平和にするために、協力する関係がつくれないだろうか。言論NPOはすでに中国を代表にアジアとの議論のチャネルを持っているので、そこにも参加してほしい。日米が協力して新たな秩序づくりにリーダーシップを発揮すべきではないか」と。

 こうした議論は、トランプ政権が発足した今年1月の訪米時にも行っていたのですが、その時と比べて今回は間違いなくアメリカにも変化が起きているのを感じています。当時は私たちの行動に強い関心を示さなかった多くの人たちが口を揃えるのです。「15年も前に言論NPOを立ち上げて、よくここまで事業を発展させてきた。あなた方の言っていることは、まさに今アメリカが求めていることだ」。


行き場を失う米国のシンクタンク

 ワシントンで、多くのシンクタンクやジャーナリストのみなさんと議論をした時に、私は複雑な思いを抱きました。これまで世界の課題に先進的に議論を組み立ててきたシンクタンクが、大きな影響力を失いつつあります。トランプ氏はワシントンを壊すと、選挙中に言っていましたが、まさに混乱は収まっていないように見えました。多くの市民に自分たちの主張を伝えるため、慣れない様々な発信に取り組んでいる、という話を、多くの関係者から聞きました。

 トランプ政権は十分な体制が整っていません。多くの要職が空席のままです。そうした中で「回転ドア」と例えられるように、シンクタンクの有力者は政権との行き来をしていました。それがトランプ政権の発足によって、シンクタンクは行き場を失い、事業モデルに不安を抱いています。こうした混乱を見て、シンクタンクも基本はビジネスなのだと感じたのです。そのシンクタンクが市民に向かい合い、課題に取り組もうと苦しんでいる。そうした状況を見て、私が15年前に、非営利で民主主義とアジアの平和に取り組む「言論NPO」を立ち上げた時の状況を思い出しました。

 当時は、日本のジャーナリズムや知識層も市民から浮き上がり、課題解決の中心的な役割を果たすことを放棄してしまった状況でした。だからこそ、アメリカの苦悩に、実現すべきミッションを軸にアメリカでも、シンクタンクの民主主義に向けたイノベーションが問われている、と実感したのです。

 しかし、ニューヨークに来て、著名な助成財団のトップたちに会うと、明らかに意識が変わっていました。それぞれとの面談は言論NPOが進める事業について突っ込んだ意見交換となりました。

 世界で自由民主主義という規範が崩れかけ、アジアの平和が大きな危機に直面する中で、ある財団のトップは「今の中東依存の様々な事業を見直さないといけないかも知れない。民主主義の危機に対応する方向へ資金をシフトさせないと」と語りました、私たちと同じ思いを持ち、悩んでいる姿に直面し、日本とアメリカのパートナーシップを組める可能性を痛感したのです。


韓国系アメリカ人の言葉に感銘

 ニューヨークから車で2時間ほど離れたコネチカット州行ったときは、時差ボケも手伝って非常につらく、車の中で半ば気を失いかけましたが、着いた時にはもっとびっくりする経験をすることになりました。

 面会した方は韓国系のアメリカ人です。北朝鮮問題が深刻化する中で、日本と韓国の対立を非常に心配しておられました。先の大戦に対する日本の責任は私も忘れたことはないが、その方はそれを踏まえたうえで、「対立の背景にそれを煽る韓国側の問題がある。私はそれが恥ずかしい。日本と韓国は似た国民性を持っている。本来なら協力すべき時に対話が全くなくなっている。言論NPOが唯一対話を行っているので、それを何としても続けてほしい」と頼まれました。

 アメリカの中にも冷静にアジアの未来を考えている人がいることを知り、私はひどく心を打たれました。

 ニューヨークでは、財団の幹部だけではなく、シンクタンクの資金集めを行う責任者とも意見交換を行いました。言論NPOのアジアや世界での活動、何よりも民主主義の取り組みに関心が高く、共同で事業を計画できないかと、複数から提案もありました。


ファンドレイジングは本当に厳しい作業

 ある人からはこう言われました。「ファンドレイジング(資金集め)をするということは大変なことだ。うちでは99件断わられても、最後の一つからもらえれば成功、と考えて努力をしている」と。これを聞いて言論NPOはまだまだ努力が足りないと思いました。もっとも別の人からは「10のうち一つは合格しますよ。言論NPOのやっていることからすれば」と激励もいただきました。どちらが本音か冗談かわかりませんが、言論NPOが目指している日米の本当の対話、日米がアジアや世界の課題解決に向けて協力し、それを多くの市民が支えるという提案に、アメリカの多くの人が共鳴してくれたことに、私たちは大きな力を得た思いがしました。

 こちちらに来ているのは私も含めて3名。2人のスタッフは西村友穂・国際部長と佐藤文(あや)次長です。彼女たちは時差ボケに苦しみながらも夜も寝る間もないほど、提案や議論の準備に追われていますが、実際の議論でも私の頼もしいパートナーです。アメリカの要人と一歩も譲らぬ熱い思いがあるからです。

 いよいよ、この1カ月間にもおよぶ私たちの旅も終盤です。
 ニューヨークで多くの人との議論を終え、これから電車でもう一度ワシントンに戻ります。ワシントンでは「北朝鮮問題」「民主主義」「トランプ政権の100日評価」を行うために、多くの要人たちとの会議を設定しています。いま私はこうした議論を経て、アメリカに言論NPOの足場を築こうという決意で一杯です。
 次は再びワシントンから報告します。

 

2017年5月15日 15:22

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