政府の震災復興への取り組みにもの申す

2011年5月13日

2011年5月13日(金)
出演者:
石原信雄氏(地方自治研究機構会長、元内閣官房副長官)
武藤敏郎氏(大和総研理事長、元日銀副総裁)
増田寛也氏(野村総研顧問、元総務大臣)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)



 まず、発災後これまでの政府の対応について、増田氏は、「自宅避難者も含めれば、今も実質上の避難生活者は20万人近くに上っているが、市町村ごとの瓦礫処理や仮設住宅の建設に差が出始めており、瓦礫処理がほとんど手に付いていない地域もある」と述べ、政府による一刻も早い対応を求めました。武藤氏は、様々な制約はあるだろうとした上で、「例えば義援金も、配っていく中で最終的に公平になればいいのであって、最初から公平な配り方などというと動かなくなる。やり方をもっと工夫すべきだ」としました。阪神淡路大震災の際に内閣官房副長官として司令塔の役割を果たした石原氏は、「震災発生直後の体制は、阪神淡路と比較しても機能していた」として評価しつつも、「政務三役だけが中心で動いて実務に当たる役人が指示待ちとなっており、その後の体制がうまくいっていない。決定をする際に最初から各省次官や担当の役人を入れるべきだ」と述べ、現在の政治主導の問題点を指摘しました。

 次に、今後の復興に向けた政府の動きについて議論が行われました。政府の復興構想会議について、増田氏は議論がクローズなまま行われていることを問題視し、「被災者が共感を持てる議論をするためにも、今からでもこの会議における議論をもっとオープンにすべきだ」と指摘、武藤氏は、「日本の将来を踏まえた、発展の核となるアイデアを出したいというのは十分理解できるが、しかしこれはある意味で、復興の原則である「地域住民主体」ということと相容れないこと」と述べ、その覚悟を持った上で、地元重視の具体的な議論を行う必要性を訴えました。さらに石原氏は、阪神淡路の際に自社さ政権で一致団結して国会が機能した経緯について触れ、「今回も与野党はこれまでの体面はひとまず棚上げし、被災地の復興第一で、法案ごとに早く意見を統一し、政策合意をしていくべき」としました。

 最後に、復興に向けた今後の展望について、石原氏は、「まず政治が決めるというスタイルではなくて、被災地のために、政官一体となって対応してもらいたい」と強調しました。増田氏は、「被災者の方が体を動かしてお金を稼げるような場を、無理をしてでもいち早くつくっていくいことが大切」と指摘するとともに、「現実に世界のサプライチェーンが止まっていることを考えれば、今回の東北の復興が、日本のためにも世界のためにもなるような復興にしなければならない」と述べました。武藤氏は、「新しい組織を作るのではなくて、今ある行政機構を活かすべき」として、県と市町村の密接なチャネルを今こそ有効活用すべきだと指摘、さらに財源の問題についても触れ、「国民が将来に不安を残さずに処理をしていくか、形はどうであれ、国民の負担をきちんと説明していかなければならない」と述べました。

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