世界の課題に挑む

世界25ヵ国の頭脳が評価した「グローバルイシューに対する国際協調進展の通信簿」-最優先課題は「核拡散防止」-

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世界25カ国の頭脳が評価した「グローバルイシューに対する国際協調進展の通信簿」-最優先課題は「核拡散防止」-

 米朝首脳会談を直前に控えた5月7日(米国東部時間)、アメリカ・外交問題評議会(CFR)が主催し、世界25カ国の主要なシンクタンクが参加する国際シンクタンクネットワーク「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」の第7回年次総会がニューヨークで開催され、代表の工藤泰志が参加しました。今回の総会では、昨年に引き続き、2018年版のグローバルイシューに対する国際協調進展の通信簿(レポートカード)が発表されました。

 CoCは、米国外交問題評議会が各国の有力シンクタンクに呼びかけて設立したネットワークで、各国の外交政策や世論形成に影響力を持つ世界25カ国のシンクタンクが横断的につながり、課題解決に挑む取り組みとして注目されています。国際協調進展の通信簿は、世界が直面する10分野の課題について、加盟各シンクタンクのトップが今年1月にそれぞれ評価を実施したもので、昨年に続き4回目の発表となります。トランプ政権1年目となった2017年は、北朝鮮の核ミサイル問題の深刻化、依然として解決のめどが立たないシリア内戦など、不確実性が極度に高まっており、レポートカードの公表が待たれていました。

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国際協調の総合評価は、昨年と同じ「C-」

 今回のレポートカードの総合評価は、昨年と同様に「C-」とやや精彩を欠く結果となりました。CFR会長のリチャード・ハース氏は、この結果の背景として、米国の変容を指摘。新たに米国大統領に就任したドナルド・トランプ氏が、大統領選時から掲げてきた「米国第一主義」を実行し、リベラルな国際秩序に対する長年にわたる米国の関与に疑問を投げかける行動を繰り返したことを踏まえ、「米国は世界経済システム、長年の同盟関係、国際合意や組織に疑問を投げかけ、(同国は)国際秩序の最大の守護者からかく乱者となった」と辛辣な評価を下しました。

 ただ、それでも前年から総合評価が下がらなかったことの要因としては、二つの理由が指摘されています。一つ目は、実際の米国政府の行動が、これまでのところ事前に懸念されていたほど酷くはなかったこと。二つ目は、米国以外の国々が特定の分野、たとえば気候変動において大きなリーダーシップの負担を引き受け、米国が必ずしもグローバルイシューの解決に「必要不可欠な力」ではないと示唆したこと、であり、CoCはこうした要因によって「C-」評価で踏みとどまったとの見方を示しています。


「核拡散防止」の評価が急落

 「2017年度における国際協力の取り組みへの評価」(個別課題)10分野のうち、前年からの評価の低下が顕著だったのは、「核拡散防止」でした。北朝鮮による核実験やイラン核合意の瓦解危機を受けて、前年の「B-」から"失敗"に近い「D+」へと急降下しました。

 こうした点について、韓国・東アジア研究院院長のイ・スクジュン氏は、北朝鮮について「各国際機関および各国政府は、北朝鮮の核兵器開発に関する重大な懸念を緩和させることに失敗した。開発したミサイルは今や米国本土へ到達する可能性があり、韓国と日本の核武装のリスクも増大している」とコメント。イランについても「ドナルド・トランプ大統領の政策により、イラン核合意が失敗する可能性も増大した」と分析。こうしたことを踏まえ、CoCも「核拡散防止」を2018年における最優先課題と位置付けました。

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経済分野では前年から評価が上昇

 同レポートカードでは10分野のうち「進展がみられた」を意味するA評価は一つもなく、「やや進展がみられた」というB評価も3つにとどまるなど、昨年同様厳しい評価となっています。

 そうした中でも、「国際貿易の拡大」と「国際経済システムの管理」など、経済分野では前年からの評価の上昇がみられます。特に、「国際貿易の拡大」は、前年の「D+」から「C」へと評価を上げ、各国のシンクタンク代表たちも「トランプ氏の反貿易、反グローバリゼーションのレトリックにもかかわらず、2017年の世界の成長率は3.7%に加速した。ここ7年で最速のペースであり、世界貿易は3.6%増加した」などと肯定的な評価をしています。しかし同時に、世界貿易の拡大は活発な世界経済の成長に依存しており、貿易面での対立や地政学的緊張から生起する大きなリスクと不確実性は、依然として世界経済の脅威である、と注意を促す指摘もみられます。


「国際テロ対策」も評価上昇。しかし楽観はできない

 その他、課題解決に向けて前年から進捗したと評価されたものとしては、「国際テロ対策」があり、「C」から「B-」へと上昇しています。CoCも「イラクとシリアの領土の大部分をイスラム国(ISIS)から奪還したことは大きな進歩だ」とし、その進展を高く評価しています。

 もっとも、COCは世界の指導者たちに対して、引き続き「国際テロ対策」への取り組みを強化に注力するよう助言するなど、決して楽観できる状況ではないことも示唆しています。

 COCは、上記の「核拡散防止」や「国際テロ対策」だけでなく、「国内暴力紛争の防止と対応」なども含めて「2018年は厳しい安全保障課題に焦点を当てるべき」と指導者たちに呼びかけており、全体的に安全保障に対する問題意識を強く打ち出したレポートカードとなりました。


⇒ COCの総合評価を詳しく読む(COCサイトへのリンク)      ⇒言論NPOの評価を読む


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