言論スタジオ

地方議会は機能しているのか

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2015年4月10日(金)
出演者:
上神貴佳(岡山大学法学部教授)
河村和徳(東北大学大学院情報科学研究科准教授)
砂原庸介(大阪大学法学部准教授)
名取良太(関西大学総合情報学部教授)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)



 シリーズでお届けしている「日本の民主主義について考える」。4月10日放送の言論スタジオでは、4月12日と26日に実施される統一地方選挙に先駆けて、「地方議会は機能しているのか」と題し、上神貴佳氏(岡山大学法学部教授)、河村和徳氏(東北大学大学院情報科学研究科准教授)、砂原庸介氏(大阪大学法学部准教授)、名取良太氏(関西大学総合情報学部教授)をゲストにお迎えして議論を行いました。


全体の利益のために動いているのではない地方議会

工藤泰志 まず冒頭に司会の工藤から、今回の議論に先立って行われた有識者アンケートで、有識者の約6割が現在の地方議会が「役割を果たしていない」と回答し、「役割を果たしている」との回答は1割にも満たなかったこと、その理由などを紹介しました。そして、多くの有識者は「地方に深刻な課題があるのにも関わらず、地方の民主主義の仕組みが十分に役割を果たさない。それどころか、むしろ地方議会にはそうした役割を担う能力がないと思っている」と問題提起しました。

 これに対して名取氏は、地方自治法で地方議会の役割や方向性が明確に定められ、強く制約されていることを指摘した上で、「地方自治法の制度の中での役割ではなく、それぞれの有識者がその方なりに望ましい地方議会の在り方についての考えを持っているからこそ、現状を評価する際に、どうしても厳しくなる」と語りました。

 上神氏は地方議会の役割として、形式的には首長の独走を監視するという役割があり、問題が起きていない限りは本当にチェック機能を果たしているのかが見えにくいと指摘する一方、「実態面では、地方分権の流れなどを受け、地方自治体に求められるものが大きくなり、地方議会がそれを担えるかという点に疑問符がついているからこそ、厳しい評価に繋がっている」と分析しました。

 砂原氏は、首長の発言に対して必要に応じて反対する、というのが地方議会制度の中で求められている役割であり、それはある程度果たしていると語りました。しかし、「本来、中長期的な戦略を持って首長の発言に対して反対を行うことが必要だが、ほとんどの地方議会では議案が提出されたときに、『はそれを聞いていない』というような止め方をする。その結果、そんな反対なら必要ないという感情を持ちやすい。だからこそ、議員は次の手をどのように打つかを考えながら議会に臨むことが求められている」語りました。

 河村氏は、現行選挙制度の下では仕方がないことを強調した上で「特に地方では利益団体や特定の分野のみが関心事である議員がバラバラに活動する状況が生まれており、全体の利益のために議会が動いているのではない。有権者はそこに問題意識を感じているのではないか」と現状を分析しました。


地方議会が活性化するには、予算提案権を議会に与えることが必要

 こうした意見を踏まえながら、「では議会が果たすべき役割とは何なのか」という点に議論は移りました。有識者アンケートで「議会が果たす役割は何か」を尋ねたところ「地域の課題について条例制定などの政策機能を果たすこと」(38.2%)との回答が約4割となったことを踏まえ、工藤から、議会の役割として「単なる監視役ではなく、議会そのものが逆に提案力を高めて課題に向かわなければいけないのではないか」という意見が多数を得ているが、そうした動きになっているのかと問いかけました。

 これに対して砂原氏は、現状を変えることを前提に首長案と議会案から選択肢を選ぶわけではないので、議会が対案を積極的にぶつけることは困難であることを指摘。その理由として、「現行選挙制度の下、議員が個人として選出されることから、地方自治体の中にある個別利益を統合する機能を持ち合わせていない」と説明しました。また河村氏も砂原氏の考えに補足し、「予算をともなう条例は、首長の承認がなければ提出することができないことが法律で定められている」ことから、首長の提案を議員は聞かざるを得ない状況があるのも事実だと主張しました。

 こうした状況を変えるために、名取氏は「予算提案権を議会に与えることで議会は当然活性化する」と語りました。


場合によっては有権者の0.5%の得票で選出されることもあり得る地方議会

 続いて、「地方議会のどこに問題があると思うか」について有識者アンケートで尋ねたところ、「そもそも議員の質が伴っていない」との回答が50.7%と半数を超えた他、「今回の統一地方選挙で地方議員の候補者に求められる能力」については「政策立案能力」が50.0%となったことなどが紹介されました。

 この結果に対して河村氏は、地方議員を選んでいるのは私たち有権者自身であることを強調した上で、「昔行った調査では、首長を選ぶ基準と地方議員を選ぶ基準を、有権者は使い分けている。その意味で有権者の選び方にも問題がある」と指摘しました。また上神氏は「国政や大きな選挙では政党がバックにつくが、地方議会には議員の質を保証する組織がない」との問題点を指摘し、名取氏は「かつては地方議員の経験者が県議会議員や国会議員になっていく道筋が存在したが、今ではそうしたキャリアアップの道筋が消えてしまい、使命感以外に何も得るものがないのではないか」と分析しました。

 砂原氏は、特に地方議員の定数が多いことについて言及し、「例えば世田谷区の区議会議員選挙では定数が50であることから、投票率が25%であれば単純計算で0.5%の得票で選出されることになる。一部の人に質の高い主張を行えば議員になることができる」と低得票でも当選してしまう現状の問題点を指摘しました。これを受けて河村氏は「議員は自分たちで定数を決めることができるので、全国各地で議員定数の削減の動きは出ているが、1人、2人とゆっくりしか進んでいない」と現状を語りました。


政策形成力の研さんと、住民に開かれた地方議会を

 続いて工藤が「個別の政策立案能力を高めた人が選ばれる仕組みを作るにはどうしたらいいか」と問いかけると、名取氏は、行政側にスタッフや情報が集まっており、政策の原案を作る点では行政側にはかなわないと述べた上で、「地域の意見を吸い上げながら、行政の原案にいかに意見を述べられるのかが重要で、政策立案というよりは政策形成力が求められるのではないか」と主張しました。また上神氏は「会派を中心に動く議会の基本的なメカニズムも一般には分かりにくいし、議員一人ひとりがどのような考え方を持っているのかもわからない」と話し、住民に開かれ、関心を持ってもらうような地方議会をつくっていく重要性を指摘しました。


現在の地方議会に多くを期待することは難しい

 その後、人口減少や地方消滅など、地方が直面する様々な課題に地方議会が役立つかについて議論が移りました。ここで工藤から、「地方消滅の議論については地方自治体の住民全員が当事者で、議員も課題の共有化を行い、一丸で政策の提案を行うことができるのではないか」と問題提起ました。これに対して砂原氏は、「消滅や衰退に立ち向かうためには、痛みをともなう改革が求められる。長期的な視野でものを言う議員はあまり評価されない傾向にあり、対応は難しいのではないか」と述べました。また名取氏は「大選挙区制度で地域代表の性格が色濃い議員が当選する現行制度化では、まとまって何かをやるのは非常に難しい」と指摘するなど、現在の地方議会に多くを期待することは難しいとの意見が多数となりました。


求められているのは、広範なネットワークを活用できる地方議員

 最後に工藤が「4月の統一選挙でどのような人を選べばいいのか」と問いかけると、河村氏は、福島県の事例を出しながら、「議員として活躍している人は、応援に来た研究者やNPO団体などと協力することができている。外と繋がることができ、広範なネットワークを活用できる議員が求められている」と主張しました。他の3氏もその主張に同意し、特に砂原氏は「一人ですべてをこなすことのできる議員はいないからこそ、誰かと協力して活動できる議員が必要だと思う。それをより実現するためには政党化も必要で、それにともなって今後は選挙制度改革も必要になるかもしれない」と将来の選挙制度の改革への示唆も含めながら答えました。

 今回の議論を振り返って工藤は、「各自治体が直面する課題が深刻化する中、中央や地方の政治がどうやってそれを解決していくべきなのかを有権者一人ひとりが考えていく必要がある。今後、地域の中で大きな変化が始まることを期待したい」と語り、今回の議論を締めくくりました。


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