【議事録】2007.2.16開催 アジア戦略会議 / テーマ「アジア外交」(会員限定)

2007年2月16日

070216アジア戦略会議

工藤  皆さん、朝からありがとうございます。

去年の東京-北京フォーラム、皆さん本当にありがとうございました。その後、ちょっと疲れちゃって、この会議がなかなかできなかったんですが、何としてもこれを再開しようと思って、きょうはとりあえず1回目の口火を白石さんからきっていただこうと思いまして、きょう再開することになりました。

今年の目標ですけれども、何としても今年実現したいことがありまして、1つは、去年言っていましたが、北京-東京フォーラムは、10年間事業ですからやっていきますので、ここの舞台でも中身についていろいろ話し合っていきたいと思っています。

もう1つは、外交を絶えずウオッチして、それで発言していく形にこの会議の性格をだんだん変えていきたいなと思っております。従来は、日本の将来の戦略をつくるということでずっとやってきたんですが、それは継続しますので、この会議は3つの性格をこれから持っていくだろうと思っています。とりあえず今年は、日本にとっては政治の季節で、7月に参議院選があるんですが、言論NPOの別のところでは評価はしているんです。やはり各政党、日本のビジョンとか将来選択肢をきちっと考えた上で国民にきちっと説明してほしいと思っておりますので、そういう議論をずっとやっていって、場合によっては、政治側にあなたたちは将来どう考えていくんですかということを参院選前に問いかけたいと思っております。

そういうことで、4カ月間ぐらい休みがあったんですが、きょうをもってこれを言論NPOとしては何としても始めていただきたいと思いまして、松田さんとかみんなにご苦労いただいたんですけれども、きょうになったわけです。よろしくお願いします。

松田  配付した資料に基づいて簡単にご説明します。

1つは「2030年の将来に向けた日本の選択肢」ですが、2005年の2月に言論NPOが国際シンポジウムを開催した際に、こういう議論をいたしました。このアジア戦略会議は、戦略形成の方法論ということで、ステップを踏みながら、世界の中長期的な潮流の把握、日本のパワーアセスメント、日本が追求すべきアイデンティティー、さらに第4、第5とステップを重ねていくということでやってきました。

2005年のシンポジウムでは、第1段階の日本を取り巻く中長期的潮流の把握と、第二段階のパワーアセスメントの上に立って、第三段階の日本の将来のアイデンティティーを描くという手順になるのですが、この第三段階に入る前に、パワーアセスメントで日本の強さと言われた科学技術の先進性であるとか、経済の強靱性であるとか、あるいは環境の先進性であるとか、大衆文化の国際的影響力だとか、そういった日本の強さをもたらしている中長期的な要因は何か、それは30年後においても成り立つかどうか。成り立つのなら、それをどうやって生かしていけばいいか、成り立たないのなら、それはどうやって克服していけばいいのか、そこに制約条件があるのであれば、それをどう突破していけばいいのか、あるいはそれは克服できない制約条件なのか、こういった議論をまず行おうということになったわけです。そして、その際に、政治に向けて、2030年に向けて幾つかのソリューションスペースをつくって、選択肢を提示して、それをぶつけようということで、当時の自民党、民主党、公明党の政調会長に来ていただいて、こういう議論をぶつけました。そのようなことを我々はやってきたということをご確認いただきたいということです。

この資料には、その際の2030年の日本の選択肢ということで、3つの軸を提示しています。世界の潮流からの軸で言えば、アジアがキーワードになる、日本に問われる課題という軸であれば開かれた日本である。それから、パワーアセスメントの軸では、いろいろな日本の強さが出ましたが、課題解決能力を活用していこうということが強調されました。加えて、国際環境や国内環境など、それぞれの分野ごとに、例えば日本が高齢化社会でも、持続可能な社会システムをつくっていくには、どうしたらいいかという意味での選択肢など、選択肢の提示を行いました。そこには、それぞれ太字で、言論NPOとしてはこれがいいんではないでしょうかということを、項目ごとにそれとなく出しています。

最後に総括のところで、結局、そういった議論を踏まえれば、日本は「世界のソウト・リーダー」として、それも指導的な意味ではなく、アジアの「知」の創出のプラットフォームをつくりながら、「課題先進国」から「課題解決先進国」になることを目指していくということが、1つの仮説的な結論として得られたわけです。

こうした日本の戦略の議論は、当面、今度参議院選もありますので、我々が既にこういう選択肢を政治に示したことを踏まえながら、どんな選択肢を我々は政治なり、あるいは国民に示していくべきであろうかという議論を、これからしばらくしてみてはどうかというのが、とりあえず主査としての案です。これを今後どうするかについて、きょうご議論いただければと思っております。

もう1つの資料が、きょう後で議論いただければと思いますが、「日中関係についてのアンケート調査」がお手元にあると思います。これは、毎年北京-東京フォーラムの際に日中同時アンケート調査を行っていますが、今回の世論調査の案です。去年行ったものを少し修正しています。

どこを修正したかというと、去年10月に日中首脳会談が再開されたことを踏まえた若干の設問の技術的な修正、例えば5ページの問15あたりに、安倍政権になってから云々というのがございます。こういう修正でありますとか、あるいは去年の時点では、非常にホットイシューだったものを、今回は落としたり、その代わり、中国の環境とかエネルギー問題についてはどう思うかみたいなものは残している。そういう形で少し修正しています。

幾つか古くなった、例えば国連常任理事国入りに中国が反対していることをどう思いますかというものも、今年は落としていまして、ただ、常任理事国入りについてそもそもどう思うかは残しているという感じで、すごくホットイシューだからつくった質問については落としたりしているという意味です。

皆さんにお知恵をいただければと思うんですが、その後、去年から今までの間に日中の間で世論調査で聞いてみるべき問題なり何なり、何かこういうことがあるんじゃないかということがあれば、ぜひ出していただきたいと思います。とりあえず私の案で恐縮ですが、去年から落とした質問数の分だけ新しい質問を加えていまして、日本が中国側に求めるべきこととしてとか、あるいは日本が中国に対して行うべきこととしてということで選択肢をつくってみたり、あるいは、先ほどの2030年の日本の選択肢の中にも最後の方に出ているのですが、日本がアジアに提唱する価値としてどういうものがいいか。これを日本側に聞いてみる。もしかしたら中国側に聞いてみたらまたおもしろいのかもしれない。これは単なる案なので、これよりもこういうのがいいというのがあれば、ぜひこの会議で出していただければと思います。

工藤  このアンケートは、日本側としては来週あたりにある程度固めて、その後翻訳して、3月に北京に行って、北京大学の人たちと議論したいと思いますので、今月中には日本側としての案を固めたいと思います。きょうの話を踏まえてやりたいと思いますのでよろしくお願いします。

福川  所用でちょっと遅くなって失礼しました。

議論は白石先生のお話を伺った後でまとめてということでよろしゅうございますか。
それでは、白石先生、ご苦労さまでございました。

白石  お手元にございますのは、普通に話しますと、多分1時間を超えてしまうので、ごくかいつまんでポイントだけ申しますと、一言で申しますと、冷戦が終わって、特に1980年代の半ばからこれまで20年ぐらいの間に、アジアの事実上の経済統合が進展して、中国が台頭しているということで、日本の位置が政治的にも経済的にも非常に変わった。それをどういうふうに理解すればいいんだろうかというのが、ここのお手元にありますレジュメの基本的な発想です。ですから、当然のことながら、日米グローバル・パートナーシップをどういうふうに考えればいいのかというのが1つ。2番目にアジア経済連携をどういうふうに理解すればいいのか。3番目に中国の台頭にどう向き合うのか。そういう構成になっております。

実は、基本的な発想は、昨年の8月に『中央公論』の9月号に、安倍政権成立後を見据えて、日本としてどういうアジア外交をやるべきなのか、何を考えておくべきなのかという、原稿用紙で20枚ぐらいのエッセーを書きましたが、そこにほぼ同じ発想のものは書いております。

そこで、ごくかいつまんで、最初に日米グローバル・パートナーシップです。ご承知のとおり、冷戦が終わりまして、日米同盟は非常に大きく性格が変容してきている。そこでの一番大きいポイントはグローバルということが重要になってきて、単に日本の安全、もう少し広く東アジアの安定、あるいは安全保障というだけではなくて、グローバルに日米同盟が意味を持つようになっている。特に中東、中央アジアにおいて意味を持つようになっている。

ところが、どうも日本の中で、冷戦が終わったことの意味がきちっと理解されていないのではないかという気が私はしております。それはどういうことかと申しますと、冷戦の時代はバイポーラリティー、つまり、二極構造の時代で、アメリカの対外政策は、常にソ連がどう出るかということとの関係で実は決まっていた面がある。つまり、国際政治の構造的な要因が実は非常に重要だ。ところが、ユニポーラリティーといいますけれども、一極構造になりまして、そういう国際政治の構造的な要因が非常に小さくなった。そうすると、対外政策、あるいは外交政策は、国内政治の結果として決まることになるわけです。

それでは、アメリカの場合には、国内政治はどういう合意の上に行われているかというと、これは経済でいいますとオープンドア。オープンドアというのは、日本では歴史の門戸開放なんていうことで理解されていますけれども、実際には、要するにアメリカの経済的繁栄のためには、世界的な自由主義貿易体制こそが不可欠なんだ。それがあって初めてアメリカの経済的繁栄はあり得るんだという発想ですね。それがオープンドアという考え方。それから、政治的にはちょうどそれに対応する形で、アメリカの安全保障のためには、世界がアメリカのようになることが最も重要なんだ。これはウィルソン主義と普通言われています。こういうオープンドアとウィルソン主義が共通のバイパーティザンの前提になっていて、その上にアメリカの外交政策は、国内政治のアウトカムとして決まってくるのが、ユニポーラーシステムにおけるアメリカの対外政策の基本的な特徴だと私は思うんです。

そうしますと、当然のことながら、オープンドアもウィルソン主義も、実は非常に介入主義なわけです。つまり、常に外国に対してインタベンションを行う。イデオロギー的にそういう非常に強い傾向を持った考え方で、だから、当然のことながら、帝国のリソーシーズの限界を超えて外に介入していくという意味でのインペリアルオーバーリーチの危険性は常に高まり、同時に、だけれども、それでコストが高くなると、その反動として、やっぱりやめたといって、すぐ引こうとする。それが最近は『軽い帝国』なんていう本が出ていますけれども、エンパイアライトと、コカ・コーラライトと同じですね。そういう言い方がされてくる。まさに今、アメリカの国内政治と外交との動きは、こういう中で現に今、イラクをめぐって起こっていることはもうご承知のとおりだと思います。

ですから、こういう特性を持った、いわばヘゲモンとどうおつき合いするかということを抜きにして、実は日米グローバル・パートナーシップの問題は考えられないというのが一番重要なポイントです。それでは、どういう争点があるんでしょうかというと、実は中東の問題が今のところ非常に重要で、ここで1点だけ申しますと、イラクがまだ当分の間重要な問題としてとどまる。

実は、昨年の11月に、中間選挙のちょうど直後にワシントンに行く機会がありまして、そのときに何人かの人に、要するに、イラクにおけるワーストフィアーズとは何なのかと私は聞いたことがあるんです。そのときに、私が挙げたのは、クルドが独立して、トルコだとかイランによるクルドの人たちもそれに参加しようとして、それでトルコが、例えばイラクのクルドの地域に介入してくるというものですね。それから、シーアとスンニの内戦が周辺諸国にスピルオーバーしていく。それから、イラクがジハーディスの拠点になる。それから、イランが核を持って、地域的なヘゲモンとして登場する。サウジでイスラム革命が起こる。アメリカで9・11の再発のようなことが起こる。どれだと言ったら、全部だというのが、実はアメリカの今の政策当局者だけじゃなくて、民主党の論客も大体そういう言い方をしております。

かつてのベトナムとの最大の違いは、こういう脅威というか、あり得る危険性に対して、それをどうやって封じ込めるかといううまい手が余りないことなんです。クルドの問題は、恐らくクルドの地域にアメリカ軍を置いておけばコンテインできる話ですけれども、それ以外の問題は物すごくコストが高いんですね。ですから、そういう意味で中東の問題は、イラクの問題を1つとっても非常に深刻で、これからの2年間はもちろん、次の政権も恐らく中東の、特にこの問題で忙殺されるだろう。ということは、2012年までは、アメリカ政府は、少なくとも中東の問題で時間とエネルギーをとられて、アジアの問題には余り精力も時間も使えない。

2012年というのは、ご承知のとおり、胡錦涛から次の政権に移る時代ですので、どうも2012年というのは、アジアにおいては非常に大きい転機になる可能性がある。だから、とりあえず時間的な軸で申しますと、2012年ぐらいまでのところはある程度は読めそうというか、大きいラディカルな変化は余りないでしょうから、オンコースでいろいろなことを考えることができるけれども、その辺で何か非常に大きな変化があり得るんだということを考えておく必要があるだろう。

そういう中で、では、アジアにおいてはどういう問題があるかというと、基本的には、アメリカの関心は東南アジアから北東アジアに明らかに移った。これは第1次ブッシュ政権から第2次ブッシュ政権で移って、そこで、もうご承知のとおり、北朝鮮の問題、韓国の問題、これは同盟関係の問題だけじゃなくて、実は最近、ワシントンなんかでちょっと言われているのはニューアチソン・ラインという考え方で、要するに、アジアにおけるディフェンスパラミットはどこに引くかという話で、それほど大きい議論じゃないですけれども、韓国は要らないんじゃないか。朝鮮半島と日本の間に引いていいんじゃないか。それから、台湾の外側に引くのもあり得るんじゃないかという議論もちょっと出始めているんです。ですから、その辺でディフェンスパラミットはどう引くかという問題。それから、東アジア共同体構築にどう関与するかという問題が、アメリカの方から見ると、アジアでは懸案になっているだろう。

そういう中で、では、日米関係はどうかと申しますと、今年のゴールデンウイークに安倍さんがワシントンに行って、そこでブッシュとのケミストリーがどうなるかというのは、1つ非常に重要な問題だろうとは思いますが、そんなに心配することはないだろう。重要なのは、イランの問題は、日本政府は事実上ワシントンに同調するという選択をしたと思いますので、1の問題はほぼ片づきましたが、2番目の安全保障で、特に沖縄の基地の問題ですね。要するに、日米同盟と安全保障はいいんだけれども、その社会的コストをどういう形で日本の国内で処理していくのかという問題は残っている。このくらいでしょうか。

2番目に、東アジア共同体構築の問題は、皆さんよくご存じのことだと思いますが、事実上の経済統合が進展して、そういう中で、アジアの多くの国で、雇用創出、貧困削減が政治的に非常に重要な課題になっている。だから、その意味では、多くの国で、かつては権威主義体制のもとでやっていたような成長の政治を、今度は民主体制のもとでどうやってやるのかというのが1つ大きいかぎになってくる。

もう1つは、中国が台頭してきて、それにどういうふうに関与するのか。全員が合意するような共通のルールをつくって、それでお互いに縛り合いましょうというのが一番望ましいやり方ですけれども、それが果たしてどこまで進むんでしょうということです。それが東アジア共同体構築ということでいろいろな分野で、ASEANを大体ハブにして地域協力が進んでいますけれども、一番重要なポイントは、こういう事実上の経済統合をどういう形で、いわば制度的に支えていくのか。そういう中で、どうやって成長の政治を再建するのか、どうやって中国を統合するのかということが課題になっているんだろう。

今、現にいろいろな問題が出てきておりますが、先ほどぱらぱらと「2030年の将来に向けた日本の選択肢」を見まして、それとの関係で申しますと、課題の一番下です。日本のマーケットを使ってどうやって日本として、日本にとっても利益になるし、アジアのほかの国にとっても利益になるであろうというようなさまざまのシステム、例えば、きょうはちょっと持ってきませんでしたが、昨年の12月にアジア・ゲートウェイを紹介しろと言われたので、日本経済新聞の「経済教室」にちょっと書いたことがあります。

その中で、例えば省エネのシステムは、日本では官民でなかなかいいものがあるので、こういうものを地域化していくということは、日本にとっても、ほかの国にとっても利益になるんじゃないかということを書いたことがあります。そういういろいろな分野でそういうシステムは考えられますし、別に私は、日本のシステムじゃなきゃいけないとも思っていません。ほかの国でもっといいシステムがあれば、それを地域化していけばいいんですけれども、ともかく専門資格だとか、それ以外にもいろいろな省エネだとかリサイクルだとか、いろいろなシステムをどうやって広げていくのかというのが、私は1つ今から重要な課題だろう。

もう1つは、その上のところでASEANへの戦略的てこ入れと私は書いていますけれども、実は、東アジア共同体構築は、事実上は別に共同体をつくろうということじゃないわけです。実際には東アジアに共同体をつくりますという大義名分を掲げて、いろいろな地域協力をやるのが実際に起こってくることです。ところが、地域協力の一番の前提は、それぞれの国に協力する能力があるのが前提ですけれども、実は、しばしばそういう能力はないわけです。一番いい例が鳥インフルエンザなんです。鳥インフルエンザの地域協力といっても、例えばインドネシアには、そもそも国の中で鳥インフルエンザに対処する能力が相当怪しい。そういうときに、それでは、どうするんですか。ありませんねというだけじゃ話にならないわけで、そこで、それでは、その能力をどうやってつけていくんですかという問題は、例えば日本のODAを考えるときには、これから非常に重要になってくるのではないだろうかと思っております。というのがアジア共同体構築ということで申し上げたいことです。

最後に、中国にどう関与するかですけれども、ここでは、基本的には2つの考え方が入りまじっております。1つは、これは日本でもそうですし、アメリカでもそうですけれども、中国はこれからどんどん力をつけてくる。そうすると、当然のことながら、この地域のバランスが変わってくる。そういう中で、中国は長期的に中国中心の秩序をつくろうとするんだろうか、それとも今のように、国境、地域さえ、あるいは中国の周辺さえ安定していれば、基本的には中国の国内的な発展と安定が重要なんだから、対外的にはディフェンシブなままにとどまるんだろうか、こういうディベートがずっとあります。これは答えの出ないディベートなんですね。何でかというと、中国の指導者すら知らないわけですから。だけれども、それにもかかわらず、こういう問題の立て方から対中政策をどういうふうに考えていくかとやる考え方が1つです。

もう1つは、それを考えてもしようがないと。むしろ重要なことは、中国がこれから世界においても、地域においても、ますます重要なプレーヤーになってくる。そのときに、中国が力をつければつけるほど、中国がアメリカと同じように一方的行動をするんでは困るので、どうやって一方的行動をしないように、できる限り協調的な行動をしてくれるように促すにはどうしたらいいのか。それは当然のことながら、一方的行動をするとコストが高くなるようにして、協調的行動をすると利用度が大きくなるような、そういう政策のパッケージを考えていくわけですけれども、そういう発想ですね。この2つの発想が入りまじっているのが、実は対中政策の基本的な考え方のところにあるんだろう。

アメリカについて申しますと、1つは米中関係が基本で、要するに、中国にとって重要なことはリスポンシブルステークホールダーになることだと。つまり、協調的行動をとれというのがゼーリックの考え方ですね。2番目に、余りそういうことは考えずに、いや、一番重要なことは、日米関係を初めとする同盟関係さえきちっとしていればいいんだというのがアーミテージの考え方で、3番目に、いや、中国は必ず敵になるんだから、それに対して対抗できるようにしておかなきゃいけないんだというのがラムズフェルドの考え方で、重要なことは、この人たちはアメリカの政権の中から全部いなくなった。

では、だれが対中政策をやっているかというと、ポールソンがやっている。ということは、セキュリティーを中心とした政治じゃなくて、実は経済の方だけ今見ていて、セキュリティーに関わるような問題については、アメリカは今、判断停止状態にある。むしろゼーリック流のリスポンシブルステークホールダー論で、中国がどこまでちゃんとお行儀よくするのかということを見ているのが恐らく今の状況かな。恐らく次の大統領選挙のときに出るとすれば、この問題が出てきますし、今度の大統領選挙で出てこなければ、2011年の大統領選挙でその問題が非常に重要になってくる可能性が高いのではないかなと思います。

そういう中で、それでは、日本にとってはどうかといいますと、これは、実はたしか小島 さんのところだったと思うんですけれども、要するに、2050年ぐらいまででそれぞれの国のパーチャスインパリティーで、それぞれの中国、日本、アメリカ、そのほかの国の経済の規模がどうなるかという推計をやっていましたね。あれを見ていて非常におもしろかったのは、2030年から2040年ぐらいは、ひょっとしたら、一遍パーチャスインパリティーでは中国の方がアメリカよりも大きくなるかもしれない。だけれども、2050年ぐらいになると、またアメリカの方が大きくなるだろう。そこが結構おもしろいこととして......。

小島  人口動態から......。

白石  そうそう。

小島  今、人口動態は、中国は少子化を人為的にやっているけれども、その影響が出てくる。少子化と高齢化のマイナスが出る前に働く人口がどんどん膨らんで、要するに、人口のシフトの中間でボーナスが出て、それが一巡すると、次は負担になる。日本のこれからみたいな、その次が2040年か2050年という感じ。

安斎  2030年ぐらいね。

小島  そうすると、それが逆サイクルになって経済にフィードバック。経済と出生率とかそういうものの相関関係をずっと分析していった結果を、ずっと日本、アジア全体で比べてみたのが結論なんです。

白石  あれを見ますと、ああいうことが日本人の意識の中で非常に強く意識されるようになったときに、恐らく日本としては、果たして今のままの日米同盟中心路線でいいのかとか、あるいは米中の間で日本はどういう位置取りをするのか。そういう議論が本格的に多分出てくるんだろうと思うんです。

私のポイントは、もう1つあそこでおもしろいことは、日本の経済の規模は、中国、アメリカの3分の1ぐらいになるはずなんですけれども、にもかかわらず、日本がどっちにつくかで、明らかにそっちの方が力のバランスとしてはよくなるわけですね。だから、最悪というのは、日本が自分が独立のアクターだと思って、バランス・オブ・パワーゲームをやるのが、実は一番不安定の要因になるというのが私の申し上げたいことで、だから、日本は余りうろちょろしちゃだめなんだ。そういうときには、ますます日米同盟をあくまで堅持して、その枠内で自主外交はやらなきゃいけない。

それは今もそういう議論がありますけれども、2040年ぐらいにかけてますますこれから重要なポイントになってくるだろう。そういう中でも、短期的には中国がステークホールダーにふさわしい行動をとるかどうか見ますし、それからステークホールダーとして、つまり、協調的な行動をとってもらうようにするにはどうしたらいいかというのが、基本的な問題の立て方になるんじゃないでしょうかというのが、中国についての私の考え方であります。

何か雑駁ですが、ですから、私の非常に大ざっぱな考え方だけ説明させていただきました。あとはもう自由に議論できればと思います。

福川  ありがとうございました。

大変大きな筋のお話でございまして、皆さんもいろいろご意見がおありかと思います。きょうは、白石先生のご議論で、将来、北京-東京フォーラムで何をどういう格好で議論するかということの方向づけもできればとは思います。また同時に、さっきの世論調査の案も松田さんからお話がありましたが、少しご意見があれば、これは本席でもいいし、あるいは別途でもいいでしょうが、それについてもコメントをいただきたいということのようでございますので、工藤さん、先行きの点についての今の白石先生のお話をお聞きになって、何かオリエンテーションはありますか。

工藤  アンケートとか何かじゃなくて?

福川  何でもいいです。

工藤  白石さんの話に対しては、とりあえず皆さんにまず意見を聞いてもらってからの方がいいです。

安斎  先生にちょっと質問ですけれども、民主党になったらどういうふうに変わるのですか。また以前と同じように、ゼーリックじゃないけれども、もう米中が大事なのだと。ポールソン財務長官の考えの延長線みたいになって、そこを中心に動いていくのでしょうか。

白石  私自身は、別にゼーリック流の、アメリカからすると、米中さえしっかりしていれば、日本は軽なんだという考え方でも一向に構わないと思っているんです。

安斎  そういうふうになりますかという質問ですが。

白石  それはなり得るんじゃないですか。ただ、それにしても、アメリカと中国の力がバランスすればするほど、アメリカにとっては、実は日本はますます重要になるわけです。だから、ほっておけばいいんです。余りそのことを心配する必要はないだろうと。ただ、民主党になると―民主党といってもいろいろな人がいますので、人によって違いますけれども、例えば民主党になって、ひょっとしたら国務長官あたりになるのかと言われているホルブロックなんかも会いましたが、ホルブロックは明らかに米中関係さえしっかりしていればいいという考えのようですね。

安斎  あともう1つは、中国ばかり注視していますけれども、人口が資源だとすれば、インドの方が2015年からには追い越していくような状態になって、どちらが経済規模が大きくなるかわからないと思うのです。インドは今、宗教問題を克服できるかどうかが非常に大変になる。片方、中国には宗教問題がないですね。しかし、それでは、能力とか勉強の仕方という面で言うと、片方はそろばんで商業主義で、片方は数学で技術革新その他は生みそうな感じがしますね。そういうふうに考えると、日本のアプローチの仕方も変わってくる。

白石  グローバルに見て、インドがこれからどういう意味があるのかというのはすごく重要な問題で、私自身、まだよくわかっていないんですが、多分宗教の克服はほとんど不可能ですね。3000年とか4000年の歴史のあるものが、これから100年や200年で大きく変わるとはとても思えないと。だけれども、それにもかかわらず、おっしゃるとおり、インドの中にはごく少数の、だけれども、非常に優秀な人はいる。あれだけの人口の中でごく少数というのは、絶対的な数としては非常に大きいと。だから、よく言われますけれども、そういう人をどうやってうまく使えるかということが、実は多分インドにとってはかぎになるので、インドそのものが中国と同じような1つの経済的なユニットとしてどうなるのかというのは、どうでもいい話じゃないかと。

安斎  中国の方は中産階級というのがぐっと大きくできる余裕がある。しかしインドは、宗教問題もあって、中産階級の部分が大きくなる経済にはならないんじゃないかと。

白石  せいぜい10%ですね。だから、10%でも1億数千、日本よりも大きいぐらいの中産階級が成立しますので、それはそれで重要なんです。日本との関係で申しますと、私は去年気がついたんですけれども、インドから日本が輸入している品目の一番重要なもの、大きいものはダイヤモンドなんですね。ということは、実はどのぐらい経済的な統合が進んでいないかということを示しているので。

安斎  ただ、ヨーロッパとの関係では、システムなんかで相当取引が急拡大して来ている。

白石  すごい。ヨーロッパはそうなんです。だけれども、日本とインドということになりますと、実は、これはもう本当に東アジアの経済統合が進んでいる世界とは違う世界にインドはあるので、東アジアサミットなんかではインドは入っていますけれども、あれは経済の方から見ますと、余りメクセンスしないんじゃないかと私は思っています。パワーポリティックスとかバランス・オブ・パワーの考え方から言うと、引っ張り込んで構わないんですけれどもね。

福川  インドのリーダーたちが日本に来ると、日本人は、すぐカースト制度を問題にし、中産階級が起きないというのですが、全く誤解だと主張するんですね。インド人には、日本がインドを正しく理解していないという人が多いです。

白石  だけれども、僕はアメリカで随分インド人を知っていますけれども、特にブラミンなんていうのは、自分以外は人間じゃないと思っていますからね。

福川  今のロシア、ヨーロッパを加えると、先生の構図ではどういうことになるんですか。

白石  これはアメリカのユニポーラリティーの問題に一番かかわってくるところですけれども、最終的には、僕は、ヨーロッパはアメリカのジュニアパートナーに、日本と同じような、日本よりは多分行動の自由度は高いですが、それでも基本的にはジュニアパートナーにとどまるんじゃないかなと思っています。ですから、そんな意味で、グローバルなバランス・オブ・パワーから考えると、EUが新しい1つの極になってバランシングをやるというふうには、フランスは常にそういう気持ちを持っていますけれども、そうはいかないんじゃないかなという気はします。

ロシアは、僕はよくわかりません。よくわからないという意味は、社会危機があれだけ進行して人口が減るような社会で、どうして政治が安定するのかがよくわからない。唯一の説明は、エネルギー価格が高騰しているので、とりあえずのところ国にお金がある。だから、そのリソースでかなり強引に買収し、弾圧しているから安定しているのであって、エネルギーの市場次第ではもう一遍不安定になるんじゃないかなと、素直に考えるとなるけれども、どうもよくわからない。だけれども、これから30年ぐらいのスパンで考えますと、そういう国は余り大きなプレーヤーにはならないんじゃないかな。

福川  上海協力機構のようには動いていかないと。

白石  あれは、ある意味では今一番顕著なバランシングの例です。つまり、これは国際政治の教科書的な議論ですけれども、ヘゲモンが出てくると、周りの国はバランシングをしようとしますねというのが普通のリアリズムの議論ですね。そういう観点から申しますと、ユーラシア同盟みたいな形で上海協力機構みたいのができるのは、一番典型的なバランシングの例とつかまえることができる。

だけれども、非常におもしろいのは、圧倒的にヘゲモンが強いときには、バランシングするとコストが高いわけですね。そうすると、実は余りバランシングせずにバンドワゴンをやることもあり得るわけで、実は東アジアの国際関係は、過去1000年ぐらいで見ますとそうなんですね。中国が台頭してくると、日本だけが実は違っていて、ほかの国は全部バンドワゴンなんですね。それでは、日本だけ何でバンドワゴンにならなかったかというと、要するに、海があったからだというのが僕の非常に単純な説明なんです。

だから、その意味で、アメリカがこんなに軍事的に強いときには、上海協力機構ぐらいのところでコストが余り高くなければ、バランシング的なことはしますけれども、本格的に何か新しい対抗するような同盟をつくることを、例えば中国だとかロシアがするか。コストが大き過ぎて、今のところ、少なくともやらないんじゃないのかという気がいたします。だから、こっちの方のどこかに、アメリカ中心の構造は維持するが、米国は穏やかな衰退と、100年ぐらいのスパンで見れば多分そうなんですね。

松田  2030年の将来の日本を議論した際にとらえたアメリカの長期的衰退傾向というのは、一応、50年~100年のスパンで想定したものです。

白石  それぐらいならいいんですけれども、つまり、これも時間のスパンをどのくらいとるかでもって......。

工藤  2025年ぐらいだと思います。

白石  要するに、アメリカのユニポーラリティーはどのぐらい持続するかというのは固定インダストリーになっているんですけれども、それを見ますと、最終的には、これは時間の問題ですねと。10年でなくなるのか、30年もつのか、100年もつのか、そういう話ですよねと。そこで、国際政治の違う理論的な立場で違う答えが出てきているという世界なんです。

周  いま先生がおっしゃられた世界情勢の根底にあるのは、経済のグローバリゼーションなんですね。その意味では、中国とアメリカの関係と中国とロシアの関係から見ると、中国にとってはロシアとの経済関係は薄いです。アメリカとの経済関係は大変強いです。アメリカの対中政策も経済関係にかなりシフトしているところがあるのではないでしょうか。

白石  それはリバーリズムの立場に立てばそうなんですけれども、私みたいな人間は、どうしてもリアリズムの立場に立って国家のビヘービアをまず考えますので。そうすると、経済的な統合はもちろん1つの非常に重要なファクターですけれども、それが一国の外交政策を必ずしも決めるわけじゃないと。ですから、米中の方が経済的な関係ははるかに密接だから、そうすると、中国はアメリカに対して協調的な対応をするかというと、必ずしもそうはならないわけでしょう。

周  かなり大きなファクターですね。

白石  だから、大きいファクターだけれども、それで中国の、例えば対米政策が決まるというと、そうじゃないですよね。

安斎  これは全部共産主義体制が維持されていくという前提ですか。

白石  だから、そこはもうブラックボックスなんです、国内政治の問題というのは。

安斎  アメリカ側から見ると、今の体制を維持してもらった方が、グローバル的にアメリカが動く場合も、対中を考えれば、コストが一番安いんじゃないかと見えるんですね。

白石  ただ、ブラックボックスだという意味は、私は非常にプラグマティックに考えていまして、中国の国内体制を外の勢力が、アメリカといえども左右する能力はない。そうすると、考えてもしようがない。それは起こったときに考えればいいと。

安斎  だけれども、ポールソンだって、これだけ経済関係が強まってくると、ソフトランディングを望みますよね。逆に言うと、ソフトランディングを望むということは変わらないで欲しいということでもあるんですね。

周  10年のスパンとか20年のスパンを見ると中国は間違いなく大きく変わります。

安斎  いやいや、どういうふうに変わるのか。

白石  だけれども、それは見なきゃわからないわけですからね。考えるだけむだじゃないかと。

周  半年向こうで過ごしている人間から見ると、改革しようとする力は、内部では物すごく大きいです。天安門事件からこれまで政治改革は止まったのですけれども、いまは政治改革に対する期待は非常に大きくなってきています。もう1つは、政治改革が進まなかったこの10数年間においても、社会構造は相当変わってきたんです。

白石  それは、僕も実はよくわかっているつもりですが、ここでの基本的な考え方は、現在の大きい構造が、大体趨勢的に今のまま伸びていけばどうなりますかという発想なんですね。ですから、これは常にエクスプロレーションの誤謬があって、大体間違うんですよ。それは、だから、もうよくわかった上でこういう話をしているんです。それは何でかというと、コンテンジェンシーの話はわからないんですね。

ところが、アジア経済危機がいい例ですけれども、だれも、実はあんなすごいことになるとは予想していなかった。96年ぐらいには、ひょっとしたらタイは危ないぞなんていうことは言っていた人はいるけれども、あんなことになるとはだれも予想しなかった。だけれども、あれで東南アジアの政治経済の構造は相当変わっちゃって、だから、ああいうのは起こったときに考えるしかない。だけれども、この辺はベースにはなるでしょうというのが僕の考えなんです。

それでは、中国がどうなるか。変わるんだと思います。これは僕じゃなくて、リカインが言っていることですけれども、彼は毎年中国に行くと、江沢民、胡錦涛以下全部会う。彼は、ここもう10年ぐらい毎年行って、会うたびに、中国はこれから50年先どうなるかと聞く。そうすると、中国の指導者は常にそれはわからないと答える。だけれども、10年から15年先には恐らくこうなっているだろうと彼らは常に答える。その意味は、要するに、彼らは自分の子供の世代が何をするかはほぼ予測できると考えているけれども、自分の孫が何をしようとするかはわからないと考えているんだ。それは、特に今はそうだと。つまり、次の世代までは、例えば胡錦涛の世代はある程度わかるけれども、もうその先になると、第2言語からして変わってくる人たちが出てくる。そのときにはもうわからないと彼らは考えているんだとリカインは言うんです。

僕はこれは洞察だと思っていまして、そのくらいの気持ちというか、心構えで中国のことは、少なくとも外の人間は見ておくしかないんじゃないかという気はいたします。
周さんは半分向こうの人ですので。

安斎  最近は半分アメリカにいる。

工藤  日本の2030年ぐらいの役割というんですか、どういうことを日本は主張し、構造の中でどういう存在になる?

白石  ここから間違いなく言えることは、日本はうろちょろしちゃだめだということです。ともかく日本がバランシングをやろうとするぐらいこの地域を不安定化させることはない。だから、日本はじっと黙ってこうやって必死で座っていなきゃいけないんだというのが、1つまず間違いなく言えることなんです。

2番目に言えることは、少なくとも日本にとっても、多くのアジアの国にとっても、第2次大戦後、この地域に成立した政治経済的な秩序をラディカルに変えることは望ましいとは思っていない。

それは、実は僕、先週東南アジアに行っていたんです。例えばインドネシアでユドヨノに会いましたけれども、ユドヨノなんかは、ここまで言うのかと思うぐらい、プライベートなところでははっきりと言いますね。つまり、彼は2030年と言いますけれども、2030年になると、アメリカと中国は同じ経済のサイズになる。そのときに、中国がサイノセントリックオーダーをつくろうとするくらい、それのようなことをすると、それは非常に脅威になる。それに対しては、ファインバランシングという言葉を彼は使いましたが、それが徹底的に重要だ。

そういう意識は、実は随分強くあると思うんです。それは中国にとっても重要なことなので、そういうラディカルに変わるんじゃなくて、中国が次第に東アジアの秩序の中に統合されていくことで、あれだけ大きい国を統合しますと、秩序そのものが変わっていく。だけれども、それはいわば連続的な変化、エボリューションですね。それをどうやってマネージしていくかが、もう1つすごい大きなことじゃないか。

だから、僕は、日本の国内政治の文脈で、政治的にアジアのリーダー日本みたいことを言うのが、聞こえのいい言葉だということはよくわかっているんですけれども、実際には日本に期待されていることは、そういう意味でのリーダーシップじゃないだろう。むしろ常に安定した、読める存在として日本がいて、エボリューショリーな変化を促すような国が、僕は日本にとっては一番重要な役割じゃないかなと思っています。だから、僕のポジションは極めてコンサーバティブなポジョンなんですね。

福川  それはいいんですけれども、見えるようにするのが1つなんですが、じっとしていると、だんだん腕がなまってきて、鍛えられなくなってきて、日本の政治がどうなってしまうか。白石先生にでも政治に出てもらわないと、日本の政治は、もしそういう選択をとったらますます力が下がっていく。私は鍛える機会がないとだめなんじゃないかと思うんですが、どうなんですか。

白石  いや、だけれども、我慢してじっと座っているのは相当エネルギーが要るんじゃないですか。

福川  それはそういう立派な方ならいいんだけれども。

安斎  歴史的にそういうことをやったことがないんですね。鎖国といってやっていたことはあるんだけれども。

福川  鎖国はあるね。

安斎  それは大国ですよね。

福川  いや、本当の質のいい国だったらできるんですね。

安斎  大国ということなわけ。いずれ両方とも頼んでくるんだから、じっと待っていると。

福川  だから、そのために本当に社会の力というか、いろいろな創造力だとか知力だとかがずっと高まって、なるほどというふうに政治を持っていければいいけれども、多くの場合、コップの中の嵐みたいなことをやって、日本の政治がそういうつまらないことにうつつを抜かすようなことになりがちですね。

安斎  そういうのはレベルが低いから、世界の人たちが見て耐えられないと。

福川  そうなるんだ。

安斎  だから、つき合ってもしようがないと、こうなっちゃうもの。

福川  そうなるものですよ。

工藤  要するに、アジアも中国も含めて、じっとするというのは、こっちは変化がいっぱい動いているわけだから、その中に合っていなきゃいけないわけですね、その変化に。

白石  だから、直そうとしないでいいと。どっしり構えているのが一番重要なことなんだと。

工藤  難しいですね。

白石  それから、今までやってきたことを粛々とやっていればいいんだというのが実は僕の、だから、例えばそれは、具体的に言いますと、実は日本には戦略がないだとかなんとかといいますけれども、少なくとも戦後の日本のアジア外交は、結果的には極めて戦略的にやっているんです。これはだれも戦略的に考えていないんだけれども、それにもかかわらず戦略的にやっていると。非常におもしろい。何でかというと、1つは日米同盟なんですよ。これがあるから、その枠内で日本が何かしようとすると、やれることの幅が限られていて、それがある意味では、日本の外交に対して非常な安定感を実はもたらしていたんです。だから、それで基本的には縛りなさいというのが1つですね。

もう1つは、日本は経済協力がもう1つの大きいアジアにおける原則で、経済協力の基本的な考え方は、例えば中国は、国際的な経済システムに入ってくれば入ってくるほど、協調的になるだろう。それはそのとおりなんですね。だから、それはこれからも同じようにやっていけばいいんだ。だけれども、そこではいろいろな問題はあると。だから、そこの問題は一緒にルールをつくり、システムをつくって処理できる体制をつくっていけばいいんだ。これは、実は今の経済連携の基本的な考え方ですよ。だから、今のままでいいんだと。というと、余り迫力ないですか。

福川  そうなんだと思うんだけれどもね。

小島  日本は、30年後というのは、これは2年前の内閣府のあれで、30年たった日本の貯蓄率はゼロ。貿易黒字はなくなるという仕組みなんですね。

安斎  必然的に黙っている世界になる?

小島  いやいや、だから、それをどうやってそうでなくするかというのが、おっしゃったように、今出ている議論なんです。労働人口はどっと減るわ、もう既に減り始めているでしょう。30年たったら高齢化は本当にすごいですよ。ピークになりますしね。だから、そういう課題に日本がどう取り組んで、今と違った経済モデルをつくるか、社会モデルをつくるかということ。それは相当の技術の進歩、技術の組みかえも必要だし、それができるとしたら、これは環境であれ、その先端技術、いろいろな技術、日本の貢献する余地は出てくるし、それは何も外交でやるんじゃなくて、国内をしっかりすることによって、影響あるカードになるんじゃないかと思うんですね。

白石  それは本当にそうです。ですから、そこはむしろ日本の国内的な課題なんです。

小島  だから、今は日本は一番だめだと見ているところがある。もう少ししゃんとすることですよ。やらなくちゃいけない課題はだんだんわかってきたから、あとはやるかやらないかなわけでしょう。

安斎  この間タクシンが来たから食事をして話しました。日本に来て、もし自分が自由になったら、日本との関係で何をしたいかと聞いたら、沖縄をこういう特区にしてくれというんですよ。それは高齢者の医療、介護、それを自分で金を出してつくりたい、タイから女性たちをいっぱい呼んできて看護師、介護士をさせると、沖縄に日本の高齢者がどんどん集まってくる。そうすると、他の県もやれという議論になるではないか。日本はこのままでは人口どうのこうのといって、幾らやってもふえない。そういう格好が一番いいんじゃないかと。それの先駆けをさせてくれということを言っていましたね。

小島  これは1つのツールのシナリオなんですけれども......。

安斎  日本人の一番今のつらいところでもあります。

小島  そういう特区は、今の行政の発想からすると認めないんですよ。そうでしょう。特区が大成功することは、今の行政が失敗であることを意味するわけです。だから、いろいろな特区をつくるけれども、現実には大失敗しない。しかし、小さな成功は見せるという条件で、いわゆる縛りをつけた特区しか生まれないんです。失敗したら、これは行政のまた責任になるし、大成功しても......。

安斎  しかし彼は、自分の責任で金を投資するからさせてくれというのです。

小島  だから、それを認めるかどうかというのは政治の課題です。特区というのは本当に重要なんだけれども、今の各役所は成功しちゃ困るんですよ。そうしたら、これまでやってきたのが意味がないことを証明されてしまうわけですから。

福川  今たまたま見ている僕が言うのはおかしいけれども、小さく生んで......。

小島  小さく育てる?

福川  できることなら殺しちゃいたいというんです。

小島  絶対そうですよ。特区の発想はそうですよ。

福川  今やっていることは、僕が言うのもおかしいけれども、そういう感じがします。

小島  本当に強い政治のリーダーシップでやる必要がある。これだけは特区でやれと。例えば沖縄を使うのも1つの発想かもしれませんけれども。

安斎  本当に困ってくると、この国民はワアワア言わないんですか。

小島  言わない。

安斎  みんなどっしり構えてじっと我慢すると。

深川  口ではいろいろ言っているけど、社会全体ではまだまだ追い詰められた実感が乏しく、本当に困っている人たちの声が小さいままなのが問題なんです。本当に困ったらやりますよ。

福川  今のままがいいと思っているんですよ。

小島  今の程度でいければいいなと。

深川  このまま安楽死、ずるずるいけばいいと、そういう発想でしょう。

福川  だから、白石先生のやり方でいくと、国内がじり貧になりゃせんかと。

白石  だから、これはあくまで僕の対外政策です。国内政策は、僕は開かれた日本というのはかぎだとは思いますね。開かれた日本をやれば当然......。

安斎  世界でこれほど我慢して国内が政治的に混乱のない国は珍しいよね。

福川  珍しいですよね。

安斎  今の人は困らないし、労働争議したことないもの。

深川  でも、もっと社会が壊れてくれば、下流がどんどん蓄積して、犯罪率が上がって、もう社会がもたなくなってきたとき。

福川  そこまでいかないとだめなんですな。

深川  でも、ゆっくりゆっくり進むから気がつかないですね。慢性病みたいな感じなので。

小島  消極的な抵抗が若い人のフリーターですね。あるいは年金を払い込まないとか。システムに対する反逆をしているわけですね。若い世代はいろいろ議論をしても、先が暗いから考えること自体を停止してしまう。

深川  得意の思考停止。老人も停止しているけれども。

小島  若い世代は将来を考えていない、考えたくないという空気なんです。

福川  みんな指示待ちなんですよ。

小島  考えたくない。だから、積極的な意識もない。こういう人になりたいとかこういう社会にしたい。それは自分ができるわけじゃないしという受け止め方ですよね。

安斎  だけれども、世界に比べれば、本を読む、新聞―新聞はとっていないかもしれないけれども、そういう能力のレベルは物すごく高いところにあるわけですね。

深川  いや、今やもう学力はどんどん落ちて、下流といわれるグループだと読み書きはかなり怪しいですよ。

周  私の中国の友人の息子が中国で大学試験に落ちまして、それで日本に来て半年勉強して慶應義塾大学に入りました。日本語を勉強しながら日本の大学受験のスタイルで勉強し直して合格しました。

安斎  慶應の方が楽だというの。

周  慶應は二つの学部、経済と経営、両方合格しました。さらに一橋大学にも合格したんです。

工藤  本当は優秀だったんじゃないの。

安斎  いやいや、違うんだ。レベルが低いといっているのですよ。

周  もう1つは、私の友人で千葉大学の先生を今やっている方がいまして、その前に中国の清華大学に数年いました。子供は清華大学付属小学校に通っていたのですが、数年後日本に連れてきたときに一番感じたのは、中国の小学校の教育と日本の小学校の教育のレベルが全然違っていたことだったと言います。宿題の量などは、日本は中国の10分の1だそうです。

深川  でも、上は余り落ちていないんですよ。上はむしろよくなっているんですよ。それは環境がよくなっているから。

安斎  私共のような小さな銀行で採用していても、決して学生のレベルが低いとは思いませんが。

深川  いや、それは先生のところに行くのが上の方だからですよ。

福川  官庁が今一番ひどいんです。

深川  下はすごいですよ。

福川  東大から入らないんだもの。

深川  でも、それはいいことで......。

福川  いや、それはいいんだけれども、別に東大がいいわけでも何でもないんだけれども。

深川  でも、逆に悪いことで、三流の役人ほど、変わることができないから権益に執着するんですね。頭が悪い役人ほど救いがないものはないじゃないですか。だから、前はソーシャルエリートとしての気概があったから、まだ大きなことが考えられたんだけれども、もっとどんどん、平均点は悪くないかもしれないですが、考えが浅くてちっちゃい人が役所に行くという今以上の危機的サイクルに入るかもしれませんね。それを越えて、多分霞ヶ関が自戒すれば少しはなんですけれども、速度が遅いからもうそのときまで間に合わないんですね。

安斎  もともとあのようにグラジエートばかり採って1年ごとにポストが変わっていくというシステムをずっと続けていくことがだめになっている。同じポストに5年、10年といるようなシステムに変えれば十分やっていけるんですよ。

福川  さて、いつまでにどういう......、来週まで?

工藤  3月中旬に行くと思うので、来週中にアンケートを固めたい。それと、今度いろいろ議論して翻訳したりとか結構あるんですね。だから、もし気づいたことがあれば、ちょっと言ってもらうと非常に助かります。今回は何を聞けばいいか。継続的な質問は必要なんですけれどもね。

福川  金の方は大丈夫なの。

工藤  いや、全然。これから......。

福川  この間は一応東芝財団の方は決めてもらいましたが。

工藤  新しい方? 今年の......。

福川  今年の分は、まだ予備段階だけれども、多分大丈夫だと思うんです。一応進めるという方向で今やってもらっていますけれども、ちょっと黙っていてね。

工藤  世論調査のお金が今年まだめどがないんですね。

安斎  アンケート調査?

工藤  去年は笹川が急遽出してくれたんですけれども。

安斎  世論調査?

工藤  世論調査は600万円ぐらいかかったんですけれども、今年は今ちょっとないんですよ。日にちが決まったらまた動きますけれども。でも、どっちにしてもこのアンケートについて。

福川  また秋にやるの?

工藤  8月の末ごろがいいんじゃないかなと思っています。参議院選が終わってから。

福川  夏休みの終わりぐらいということで。

工藤  それがいいんじゃないですか。

安斎  どういう結果になっても落ちついているだろうと、そういう考えですね。

福川  日本の内政がごたごたしているかもしれないね。

工藤  日本が内政ががたがたしちゃう可能性があるんですね。

福川  してもしようがないね。

工藤  あと、夏休み、あの時期じゃないとなかなか行けないから。

福川  皆さんお忙しいから。

安斎  8月にやるといったんだから8月でいいですよ。

福川  では、8月の下旬と思っていればいいわけ。

工藤  そういうことで進めます。
あと、これからこの前の分科会の話もそうですが、それもちょっといろいろ話さなきゃいけなくて、去年の分科会でかなりいろいろ合意しているんですよ。だから、それがとまっちゃったのは何だとなっちゃうので、それを皆さんといろいろ、個別も含めて話してということになると思います。

横山  アンケートの第39問についての感想として、「日本も成熟して時代とともに若い人が、勉強しない」とのご意見がありましたが、志論がちょっと薄い時代において、この39問はアンケートとして大変興味深い質問と思います。

中国は、人によるとはいいながら、経済面での付き合いだけでなくパートナーの相手の方々に非常に強い志が感じられます。例えば事業や組織を成長させて、世界ナンバーワンの企業になると常に目標を立てながら、志をより高くして取り組んでいる。この39問が、いろいろな質問の中で最後に出てきますが、アンケートの内容を吟味して価値をどう提唱していくのかに於いて重要な質問と思っています。

松田  これはもともと、国際シンポジウムをやった際に、最後にも出しているものです。日本はアジアにどういう価値を提唱する国になればいいのか。まさに日本のアイデンティティーを追求するときの議論で提唱しているのですが、我々はせっかくこういう議論をしているのに、その後世の中に何も問うていないので、この際、こういうことを聞いてみると、次の議論展開でおもしろいのではないかということで、あえて入れてみた次第です。

さきほどの白石先生の話との関連で言えば、日本はじっとしている国であるとしても、こういうものを何かアジアに唱えるというのはどうですか。それを唱えながらバランシングをとっていく、そういうことはあり得るのではないかと思いますが、考え方としていかがでしょうか。

白石  ちょっと僕の言っていたのをひょっとして誤解されているんじゃないかと思って、1つだけ確認の意味で申しますと、日本は、今は余りうろうろしないでも、そこそこちゃんとした存在感がある国なんです。だから、例えば東南アジアでも中国とバランスするというと、すぐ日本を考えるわけですね。だから、そういう日本の存在感は前提でして、そこで、先ほど小島さんの問題、いや、それは、だけれども、国内の課題ですと申し上げた。そこができなくなると、これはもうアウトなんですよ。ですから、僕は、日本の大きい問題というのは、まさにその意味で対外政策じゃなくて、国内なんだということでして、では、そこで日本はどういう社会と経済をこれからつくっていきたいんでしょうかということなんです。ですから、39のところもそこにかかわってくると思うんです。

小島  あと、日本でも中国でも共通に設問として立っていてほしいのは、日中の首脳会談の後、世界経済閣僚会議ができたり、具体的な共通の利益の分野で何か協力しようという話に動いているわけですね。共通利益について、例えば幾つか考えられるとは思うので、どこまで期待しているのか、期待していないのか。その程度をちょっと探れるようなものがあったらいい。あるいは関心度とかね。もしそういうのは全然関心ないし、できないということであれば、閣僚レベルでいろいろ協力の会議をやって模索しても、余り支持もないし、あるいは可能性もないかもしれないし。だから、ちょっと空気が変わったところで、本当に日中で協力しなくちゃいけない分野、できる分野、期待できる分野とか、またエネルギー協力もそうですし、環境もそうですし、技術の問題、いろいろあるでしょうし、具体的なテーマを拾って、双方に可能性を問うてみたらいいんじゃないんですか。

工藤  そういう設問は今年は結構増やします。去年大きく変わっているのは事実ですから。去年は最悪な局面でのアンケートなんですよ。本当にもうどうなるかというときのアンケートだから、ちょっと......。

深川  これは10年やることになっているじゃないですか。10年間時系列で探れるような基礎的な、毎年毎年同じことを聞く比重と、微妙にそのときに変えるもののシェアを大体決めておいた方がいいと思うんですね。だから、10年さかのぼれることは非常に大事なので、それは例えば半分とか6割とか、もうちょっとあった方がいいですね。多分6割とか7割とかあって、残り3割ぐらいは、そのときにフレッシュなものを聞いたらいいと思うんです。

福川  2割か3割ですね。

小島  相手に対する基本的イメージとかね。

深川  それは多分ずっと同じことを聞き続けるしかないんですね。

工藤  そういうものを聞きます。
今の小島さんみたいな何かそういうご提案は非常に助かるんですが、これは、もう今週、来週にある程度のものを決めないといけないものね。

白石 ちょっと細かい点ですけれども、問9で、中国が直面していく重要な問題といっていろいろなのを挙げています。多分入っているのかもしれないけれども、雇用創出は入れておいた方がいいんじゃないかという気はいたしますが、どうでしょうか。

工藤  雇用の創出ですね。

白石  要するに、職をつくるという、貧困削減もあるんですけれども、農村の貧困となっていますが、雇用創出、貧困削減みたいなのが何か決定的じゃないかなという気がするんです。

もう1つ、どこでしたっけ、何が中国で嫌かというのがどこかにありましたね。いや、もう1つあったんですけれども、どこだったか忘れました。

福川  周さん、都市問題というのは中国ではどうなりますか。あなたの得意のさ。これは非常に大問題になるんですね。

周  最大の問題になります。農村人口がこれからどんどん都市に流れてきますから。もう1つ、社会構造そのものが変わろうとしています。政治構造が変わらなくても、社会構造をつくり直すことになっていまして、例えばナショナルミニマムをきちんと構築しようとしています。それによって地方と中央の関係も大きく変わろうとしています。

福川  それは難しいけれども、重要な問題というと......。

周  社会構造の変化は中国を見ていく上での重要なキーワードです。

工藤  だから、それはそういうニュアンスの言葉に7番とか変えますよ。

福川  7番?

工藤  7番ですね。7番をそういう形に変えたら。

安斎  輸出と投資ばかりなんだよ。国内需要に響かせるシステムができていないんですね。日本もそういうところがありますけれども。

周  いま中国の経済政策の大きなテーマの1つは内需拡大です。昨年、財務省と中国国家発展委員会の仲間と、長江で船を借りて1週間近くずっと会議をやったんですね。いかに内需を拡大させていくか。

安斎  それがないんです。

周  それもないですね。

工藤  それは問9のことに関係する、選択肢に入れるということですね。

安斎  ずっとアメリカに輸出だけしていって、それで経済が潤うのにはもうそろそろ限界が来ている。若い政策というのはそういうことなんだよね。それをどういうふうにして国内に持っていくか。

周  内需拡大政策の一環として、中国の格差社会のこれ以上の広がりを止めて、ボトムアップをどう図ろうとするのか。ナショナルミニマムをどうシステム化させていくのか、いま全部政策的議論に入っています。

安斎  日本もそうですけれども、中国も格差ということじゃなくて、何で経済発展するかというと、中産階級がふえることによって実現するのですね。だから、日本もこれから格差の問題というより、中産階級のウエートが落ちないようにどうするかなんだよね。そういう部分をどこかに入れておいた方がいいと思うんです。格差、格差といっているけれども、それは中産階級がなくなるという意味の大問題なのです。経済政策という意味では、中産階級が少なくなっちゃうことをどう考えるかなんですね。

工藤  基本的にそういうところは直します。あと、日中間の理解を尋ねるところは今後も継続して、交流の度合いを尋ねるところも継続しますし、情報、どこからどうだというところは全部継続して、すべての項目と連動してクロスで見られるように、ここは全部やっていきます。

あと、この前、安倍さんと首脳会談をしたので、その評価と今後に対する認識と、さっきの協力に対する期待のところを入れていくと。ただ、経済関係のことを言っていたら、おととしはウィン-ウィンだったのに、去年は脅威だという形に日本側が変わっていっているわけですよ。日中との経済関係をどう考えるかという設問に、2年前はウィン-ウィンだという認識が強かったんです。お互いが発展すると。去年あたりからは、中国は脅威だという認識に結構変わっていっているわけです。だから、そういうものは継続的に聞いていきます。

周  もう一つ先生がおっしゃっていたように東アジアの経済統合がいま進んでいるんですね。それをどう日中間で認識し、制度的にサポートを強化させていくのかについて、このアンケートの中で先取りして、具体的にしていく作業をある程度やったらおもしろいかもしれないですね。

工藤  簡単なメモでいいから何かくれませんか。というのは、これはつくるのが意外に結構大変なんですよ。案をいただいた方が僕は助かるんです。

安斎  そういうものを促すのは、結局、標準というか、共通な基準でやることでないとだめなんですね。そこに経済がずっとお互いに。そういうふうに基準にアンバランスがあると、必ず壁にぶつかりますね。だから、土俵の標準化。

周  結局は、協力と協調の仕組みをどうつくり上げていくかということです。

福川  これは、松田さん、太文字になっているのが新しいもので、普通の字で書いてあるのは今までと同じなんですか。

松田  ゴシックのものはそうです。

工藤  ちょっと太字が松田さんが直したものです。

福川  新しいもので......。

松田  新しく加えています。

福川  その他のものは今までと全く同じと。

松田  そうです。それを少し修正しているところはありますけれども、基本的には同じです。

福川  では、認識としてはそれでいいんですね。

松田  はい、そういうことです。

福川  そうすると、変化しているものは余り多くないわけだね。

松田  余り変えていないです。

福川  3問か4問しかないわけだ。

松田  継続性の観点からそんなに変えていないです。

工藤  でも、もうちょっと変えても大丈夫です。歴史問題も余りくどい......。

周  これと関連しているんですが、先生が今おっしゃられた専門資格の地域化については、僕は前からずっと思っていましたが、専門資格の地域化が意外に大変重要です。これを具体的にアンケートの中で表現させていくことが大切です。

工藤  アジア・ゲートウェイ構想かなんかをちょっと織り込みますか。

白石  あれはもうホームページで出ていますので。

安斎  これも僕が言ったのと、地域化というより、地域統一なルール。

白石  地域に広げるということですね。

工藤  実を言うと、これをちょっと急いでいる理由は、北京大学と今回はかなり議論したくて、というのは、去年日本側でやっているものが中国がアンケートから外しちゃったのが結構あるんですよ。ちょっとしたことが外してある。例えばさっきの30年後の日中間の経済的な位置づけはどうなっていますかなんてあるじゃないですか。これはあっちはないんですよ。どうしてかというと、設問の中に日本が孤立するとか、ありとあらゆる可能性を言ったんですが、中国が孤立するというのがよくないとか、結構あるんですよ。だから......。

福川  それは大変ですね。

工藤  だから、かなり外されているんですね。報道の自由については勘弁してと言って、わかりましたとか結構あるもので、ちょっとつくって、なるべく一緒に。

福川  では、松田さんのところに来週いっぱい?

工藤  来週の初めぐらいなら。

福川  来週前半まで。

工藤  何かあればいただければと思います。

福川  きょうは、白石先生、大変高邁な説を本当にありがとうございました。本当にいい勉強になりました。

それでは、そろそろ時間で、よろしゅうございますか。きょうは本当にありがとうございました。ご活躍を。

<了>