言論外交の挑戦

日韓の共同世論調査に見る基礎的認識の違いをどう乗り越えるか ~「第3回日韓未来対話」セッション1報告~

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 日韓国交正常化50周年を翌日に控えた6月21日、東京都内の国連大学にて、「第3回未来対話―日韓両国の未来に向けたビジョンと相互協力」(主催:言論NPO、東アジア研究院)が開催されました。
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150621_japan-korea_session1_kudo.jpg 議論に先立ち、挨拶を行った言論NPO代表の工藤は、「アジアの未来に向けて日韓両国に何ができるのかを民間レベルで話し合い、両国の国民がそれらを自分の問題として考える材料を提供したい」と今回の対話に向けた決意を語りました。韓国側の主催者である東アジア研究院院長の李淑鍾氏は、「今日の対話には様々な期待を持っている。日韓がより未来志向の国に発展していくきっかけとなるような議論をしたい」と述べました。

150621_japan-korea_session1_ogura.jpg 続いて、日本側座長を務める小倉和夫氏(元駐韓国大使、国際交流基金顧問)は「日韓の関係はグローバル化しているが、国と国との関係という意識が重荷になっている。地球市民として日韓が同じ側に立ち、共通の課題を議論してほしい」と呼びかけました。韓国側座長を務める申珏秀氏(国立外交院国際法研究所所長、元駐日大使)は、「なぜ相手国が重要なのかを議論し、両国の間に共通の利益があると認識することが関係改善の原動力となる。新たな局面を迎えている日韓関係の回復にプラスになる対話ができると信じている」と語りました。


現状を心配しているが、その解決策を見出せていない日韓両国の国民

 セッション1では、5月に発表された「第3回日韓共同世論調査」の結果を基に議論が進められました。

 初めに、日本側から工藤が、世論調査の結果について基調報告を行いました。

 工藤はまず、相手国に「悪い印象」を持っていると答えた人の割合が依然として高い水準にあることを紹介する一方、相手国に友人や渡航経験を有する人、また若い世代ではその割合が相対的に低い水準にあるという分析を示しました。また、日韓間の国民感情の現状を「望ましくない状況であり、心配している」、「問題であり、改善する必要がある」と答えた人が両国とも併せて6割を上回ったことを報告した上で、「それをどう解決すればよいか、国民が答えを見出せていない」という懸念を示しました。

 さらに、韓国人の56.9%が日本を「軍国主義」、また日本人の55.7%が韓国を「民族主義」だと認識していることを報告し、「相手国への基礎的な理解に関する危険な食い違いがなぜ起こっているのか、その背景を議論してほしい」と参加者に呼びかけました。

 そして、中国の台頭による北東アジアの勢力変化において日本と韓国が同じ境遇に直面していることに触れ、「アジアの平和的な環境づくりに向けて日本と韓国がどのように協力できるのか、なぜお互いの関係が重要なのか、私たちは議論を怠ってきたのではないか」と問題提起して、基調報告を締めくくりました。


日韓世論の裏側に隠されている、課題解決への前向きな声

150621_japan-korea_session1_chung.jpg 続いて韓国側の基調報告を行った鄭在貞氏(ソウル市立大学教授)は、「日韓関係は重要である」との回答が日本側の6割、韓国側の8割を上回ったことや、韓国人の68%が日本の国際平和に対する取り組みを肯定的に評価しているという別の調査結果などに触れ、「『最悪』と表現される関係の裏側には、慎重ながらも課題解決への前向きなメッセージが隠されている」との見解を示しました。

 また、相手国への認識をめぐるすれ違いについては、「韓国人には過去の植民地支配のトラウマがあるので、日本の安全保障法制などの動きには過敏に反応してしまうのではないか」という認識を述べました。

 そして、今後の日韓関係について「国交正常化からの50年、韓国は日本をキャッチアップすることで発展してきた。これからの50年は、対等な関係の中でお互いに影響し合う双子のような国をつくっていきたい」という展望を語りました。


政治家、市民、メディアの間にある悪循環をどう断ち切るか

 続いて発言した近藤誠一氏(近藤文化・外交研究所代表、前文化庁長官)は、「グローバル化と地政学的な不安定化の中で国家の独立と尊厳に対する脅威感が増し、世論が感情的になり右傾化している。そうした厳しい環境からどう脱していくべきか議論すべきだ」と問いかけました。

 そして、「政治家はナショナリズムに、市民はメディアに、メディアは政治家の建前論にそれぞれ左右されて相手国の批判を始める悪循環に陥っている」と述べた上で、政治もメディアも組織である以上は建前論を述べざるを得ないと指摘し、本音を語ることのできる市民や有識者こそが、感情を抑えて未来志向で議論すべきであると主張しました。


世論調査には表れない、対中関係をめぐる両国民の複雑な意識

150621_japan-korea_session1_choi.jpg 崔載千氏(新政治民主連合国会議員)は、世論調査の「日韓関係と対中関係のどちらが重要か」という問いで「どちらも重要である」という回答が両国とも最も多かったことに触れ「日韓とも、中国の膨張にどう対処するかという議論を対中脅威論につなげてはいけない。地域の共同体を構築するため、日中韓の緊密な対話が必要である」と述べました。

 藤崎一郎氏(上智大学特別招聘教授、前駐米国大使)は対中関係をめぐる世論調査結果について「韓国の多くの人は、実際には、民主主義や言論の自由といった価値観から日本との間に信頼関係を感じている。ただ、『対中関係とどちらが重要か』という二者択一的な問いの設定では、それが表れていないのではないか」という解釈を示しました。


歴史認識の議論と将来課題への対話を並行して進めることが必要

150621_japan-korea_session1_nishino.jpg 続いて、西野純也氏(慶應義塾大学法学部准教授)は、「歴史認識とその他の問題を分けて議論することは賛成だが、歴史問題が取り残されることを意味しない。90年代に日本が行った和解のための努力や、韓国の過去の痛みを尊重していくべきだ」と述べました。同時に、高齢化やエネルギーなど共通の課題に対しては戦略対話を深めていく取り組みが必要だと訴えました。


留学生など、民間人による直接交流の必要性

150621_japan-korea_session1_yeon.jpg 廉載鎬氏(高麗大学総長)は、相手国への渡航経験のない人が日韓とも7割を超える現状を強調して「相手国へのイメージが政府やメディアだけによって形成される恐れがある」と述べ、国民間でより多くの直接交流が必要であると訴えました。

150621_japan-korea_session1_asao.jpg 浅尾慶一郎氏(衆議院議員、日韓議連幹事)も相互交流の重要性に触れ、「韓国から日本に長期滞在する人を増やすための環境や、米中など第三国で留学生が交流できる仕組みを構築していくべきである」と提案しました。

150621_japan-korea_session1_yoshioka.jpg 吉岡利代氏(ヒューマン・ライツ・ウォッチ シニア・プログラム・オフィサー)は国際協力や科学技術などの分野で両国の民間人による交流が進んでいることを紹介した上で、「若い世代が活用しているSNSなどのメディアを用い、一人ひとりが正しい方法で発信していくことが重要だ」と述べました。

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韓国における「日本は軍国主義」という誤解をどのように解くか

150621_japan-korea_session1_sakata.jpg 阪田恭代氏(神田外語大学国際コミュニケーション学科教授)は、「日韓関係は悪いけれども、重要だ」という両国民の認識を引き出したという点で、今回の世論調査には意義があったと述べました。また、韓国において日本を「軍国主義」だととらえる見方について、「その理由は韓国側の過去のトラウマにあるが、日本にも、戦前の軍国主義を否定し平和を追求してきたという自国の戦後のアイデンティティが攻撃されているという意識がある。そうした両国の認識を解説していくことが必要だ」と指摘しました。

150621_japan-korea_session1_kim.jpg 金世淵氏(セヌリ党国会議員)は、「なぜ誤解が生じているかを把握し、誤解を解くことが急務だ」と強調した上で、「日本の市民社会にも、政治指導者とは異なる様々な意見がある。そうした声が韓国にも伝わればいい」と述べました。そして、若い世代ほど相手国に抱くマイナスの印象が薄いことに関し「民族や国家を背負う従来の教育だけでなく、世界市民としてのアイデンティティを育てる教育が長期的には重要だ」と訴えました。

150621_japan-korea_session1_sohn.jpg 孫洌氏(延世大学国際研究大学院院長)はこれに関連し、「韓国人が日本に対して感じる『軍国主義』は、『民族主義』の異なる言い方なのではないか」と指摘しました。そして、「グローバル化や低成長の中で極端な民族主義が現れ、互いの国民感情を逆なでしている」と述べ、日韓双方が国内の不満を相手国に向けている現状からの脱却を求めました。


メディアが果たすべき役割と、メディアを取り巻く日韓間の環境の違い

150621_japan-korea_session1_komatsu.jpg 小松浩氏(毎日新聞社論説委員長)は、「日本のアジアに対する経済的な優越感が揺らいでいることによる心理的な不安定感が、国民感情の摩擦を起こしていることの根本的な原因ではないか」と指摘しました。そして、中国の中華思想や、韓国の日本に対する文化的な優越感にも言及し、「メディアはこうした序列的な思考にとらわれず、日韓関係の現状に問題意識を持つ『静かな多数派』に対して冷静に訴えることが求められている」と述べました。

150621_japan-korea_session1_sunwoo.jpg 鮮于鉦氏(朝鮮日報国際部長、元東京特派員)は、「韓国のメディアは最近、『過去の問題が現在の安全保障問題に影響を与えてはならない』という考えから反日的な報道を自制し始め、政府の立場にも反映されてきている」と紹介しました。そして、韓国の反日とは異なり、一般市民が「嫌韓」の動きを主導している日本では、「メディアが置かれた環境は韓国よりも悪いのではないか」と懸念を示しました。

150621_japan-korea_session1_lee.jpg 李源宰氏(希望製作所ディレクター)は、インターネットを通じて市民が自由に発信できるようになったことにより、これまで表に出てこなかったマイナスの感情がすぐに伝わるようになっているという理解を示し、「有識者や専門家が率先して、憎悪表現を自制していくべきだ」と訴えました。


国境と無関係に広がる経済のWin-Win関係を強めることが必要

150621_japan-korea_session1_fukagawa.jpg 深川由起子氏(早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科教授)は、「日本も韓国も国境という意識にとらわれすぎている」と指摘しました。そして、企業のサプライチェーンや人材採用などの面で、アジア各国の利害は国境と一致せずWin-Winの関係にあることに触れた上で、「規制緩和の成功事例をつくるなど、制度の面における競争意識を持つべきだ」と訴えました。

150621_japan-korea_session1_lees.jpg 最後に、韓国側の司会を務めた李淑鐘氏が「日韓関係の現状にはプラスの面も数多くあることが分かった」と議論を振り返りました。そして、両国民間の理解を促進するためにメディアやSNSなどがより積極的な役割を果たすよう訴え、セッション1を締めくくりました。

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⇒日韓関係はお互いの国にとって、本当に重要なのか ~第3回日韓未来対話 セッション2報告~

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