「第3回日韓未来対話」を振り返って 日韓パネリストインタビュー

2015年6月21日

日韓が共に未来をめざすために、重要な転換点となる2015年

聞き手:工藤泰志(「第3回日韓未来対話」日本側主催者)

[日本側パネリスト]  西野純也
(慶應義塾大学法学部 准教授)


工藤:今回、日韓未来対話に初めて参加していただいたのですが、どんな感想をお持ちでしょうか。

西野:日本と韓国は今、非常に難しい関係ではありますが、市民社会レベルではこういったかたちで交流が続いていて、「このままではいけない」という意思が強く感じられました。かつ、未来に向けてともに手を携えていこうという意気込みを感じることができました。

工藤:EAIと私たちは「未来対話」という言葉を3年前につくったのですが、なかなか未来の議論ができず、どうしても過去の話題になってしまっていました。過去を軽視しているわけではないのですが、今回、かなり未来に向けた議論になったと思います。このような議論になった背景を、どのようにご覧になっていますか。

西野:私は韓国によく行っていますので、韓国側の事情としては、やはり歴史の問題にあまりに焦点を当てすぎて、経済や文化、市民レベルの交流といったその他の領域に悪影響が出る恐れがあるのではないか、あるいはもうすでに出ているのではないかという懸念がかなり強くなってきています。「もちろん歴史も重要だけれど、それ以外の部分も育てていく必要がある」というのが、これまでの50年の日韓関係の歩みだったし、今後もそうであるべきだという思いが韓国側でも強くなってきていますし、日本側でもそういった思いを受け止める準備はできていると思います。

工藤:未来を含めたかたちで議論する一つの大きな転換点、局面が変わる時期に遭遇しているわけですね。

西野:そうですね。ただ、一方で、世論調査でも表れた通り、お互いに対する認識や、東アジアの情勢に対する認識に違いがあるのは事実ですから、なぜ違っているのか、どういう背景で違いが出てきているのかということについては、お互いがお互いをより見つめながら考えていく必要があります。それを踏まえて、共にできることは何なのか、未来のためにどういうかたちで協力することができるのかを考えていく一つのきっかけ、重要な転換点になる年であることは間違いないと思います。

工藤:今回の対話でも、そうした認識のギャップの問題も含めて、未来をどう考えればいいかという議論になったのですが、まだまだその点では議論を深めた方がよいと思います。

西野:その通りだと思います。市民からの参加というかたちで対話が行われているのは非常に良いと思いますが、今回初めて参加してみて思ったのは、まだまだ形式的な対話という側面があるということです。より突っ込んだ、頭と頭を突き合わせた対話になるために、今後もっと、言論NPOとEAIで取り組んでいただけたら非常に嬉しいと思います。

工藤:分かりました。最後に、会場から西野先生に名指しで質問が来ていました。それは、「朝鮮半島の統一が実現した場合に非常に大きな問題が起こると思うが、そういう議論が日本国内でなかなか出ていないのはどういうことなのか」という質問でした。一言、お答えいただければと思います。

西野:世論調査でも統一に関する質問がありましたが、日本側は韓国側に比べると「統一しないだろう」という意見が多かったと記憶しています。やはり、日本人は当事者ではないので、やや遠目に見ているというか真剣に考えたことがないのだと思います。一方、韓国は当事者なので、希望的な観測も含めて「いずれ統一しなければいけないし、するだろう」という考えを持っています。ここに日韓の考え方の違いがあるわけです。

 北朝鮮の問題についても、日本は拉致問題があるので非常に厳しく見ている一方、韓国は当然、今の北朝鮮の政権に対しては厳しいけれども、それでも2000年代以降は同胞意識がかなり芽生えています。こういった、お互いの北朝鮮に対する見方の違いを日韓でもう少し語り合って理解する、その上で、長期的な観点で統一ということを考えていく。結局、日本として重要なのは、いずれ現れる統一朝鮮半島がどういう国であるのかということです。当然、日本との関係が友好的な国であることを期待しているわけですから、そういう国をつくっていくための準備は今からしっかりしておかなければいけません。その上で、やはり日韓関係は友好的でなければならないと思います。


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