言論外交の挑戦

公開フォーラム第1セッション「2019年日韓共同世論調査結果に基づいて日韓関係の問題を分析する」報告

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【公開第1セッション:動画前半】
 言論NPOは、6月22日の午後、「第7回日韓未来対話」の公開フォーラムを開催しました。フォーラムには、両国を代表する政治家、ジャーナリスト、研究者、外交関係者、経済人など計30氏が参加しました。


政府間関係が困難だからこそ、民間対話が「特別な役割」を果たす必要がある

kudo.jpg 冒頭、主催者挨拶に立った言論NPO代表の工藤泰志はまず、対話に先立つ共同世論調査の実施や公開での開催という、この対話の特色に言及。その理由を「両国の国民が当事者として日韓間の課題を考え、その解決に向けて行動を起こさなければ、日韓関係は未来に向かうことができないからだ」と強調しました。

 そして、この1年間、徴用工訴訟での判決やレーダー照射問題などを受け政府間関係が厳しい状況に陥る中で、韓国に対する厳しい見方が日本社会に強まったことに触れ、「今回の対話も実施そのものが危ぶまれたが、『困難な局面だからこそ対話が必要だ』という言論NPOの呼びかけに賛同した300人近くから寄付が集まり、無事に実現できることとなった」と、開催の経緯を紹介。政府に先んじて相互理解を深め、政府間外交が動き出す環境をつくるという、「民間対話の特別な役割」を果たすことへの決意を語る工藤でした。

 最後に工藤は「1965年の今日、6月22日に調印された日韓基本条約だが、条約に基づく両国関係の基本的な構造が揺らいでいるという見方がある。この歴史的なタイミングでの対話に、ぜひ参加してほしい」と、集まった約80人の聴衆や日韓両国の報道陣に呼びかけ、挨拶を終えました。


日韓関係の当事者は、両国の国民一人一人

ogura.jpg 続いて、日本側パネリストを代表し、小倉和夫・元駐韓国大使が登壇。日本では「韓国と対話しても仕方ない」という主張が見られる中、対話の実現自体に勇気と決意が必要だった、と振り返り、両国の関係者や寄付者への感謝を述べました。

 そして、思想家・柳宗悦の「一国のあり方は政治経済ではなく、文化で決まる」という言葉を紹介。平昌五輪での日韓両国の選手同士の交流や、韓国での日本料理ブーム、日本の韓流ブームなど文化面の動きを挙げ、「日韓関係全体が悪いわけではない」との見解を示しました。

 一方で、「両国間に深刻な事態が起こっているのは事実だ」とも述べ、両国の国民に二つの注文をつけました。第一に、「国家、政府」と「国民、市民」を区別し、政府の行動が国民全体の意思だという認識を捨てること。第二に、日韓間の問題を互いの政府やメディアのせいにするのではなく、民主社会の一員として「自分の問題だ」という自覚を持つことです。

 小倉氏は、両国のパネリストらにも、「せめて『過去』でなく『現在』のことを話し、『未来』に役立つ対話となるよう祈念したい」と訴えました。


0B9A0316.jpg 韓国側主催者のEAIで理事長を務める河英善氏は、「今回の対話は過去7年間で最も重要だ」と切り出しました。同氏は、日韓関係がさらに悪化し、「韓国のない日本」「日本のない韓国」になれば、「日本も韓国も敗者になるのは明らかだ」と述べ、日韓の互いにとっての価値という視点を提示。さらに、「米中対立が深刻化する中、アジア太平洋の秩序の再構築が本格化しつつある。新しい秩序づくりに日韓両国がどう貢献できるか」という側面にも触れ、「未来の視点に立ち、現実を新しく見直すことが求められている」と主張しました。

 また河英善氏は、19世紀以来、政府の富や繁栄を基盤にしてきたこれまでの日韓関係と異なり、「21世紀には、文化や技術など新しい舞台が登場している」と発言。それを象徴するエピソードとして、建築家・安藤忠雄が末期がんと闘いながら建てた上海の音楽ホールで、韓国の鄭明勳氏の指揮によりベートーベンの「運命」が演奏されたことを紹介。「本日の討論にも、そのような厳かな雰囲気を期待したい」と締めくくりました。


日韓の国民感情はなぜ悪化に転じたのか

 「日韓共同世論調査結果に基づいて日韓関係の問題を分析する」と題した第1セッションでは、まず、今月12日に発表された同調査をどう読み解くのかという観点から、日本側の工藤、韓国側の孫洌・EAI院長が問題提起を行いました。

 工藤は初めに、世論調査において現在の日韓関係を「悪い」と答えた日本人の割合が昨年の40.6%から63.5%へと急激に悪化し、今後の日韓関係についても「悪くなっていく」が13.5%→33.8%に増えたことを紹介。一方、韓国側では現状を「悪い」と見る人が54.8%→66.1%に増えたものの、今後も「悪くなっていく」は13.5%→18.7%という結果となり、特に日本世論で、日韓関係への厳しい見方が顕著になっています。

 また、相手国に「悪い」印象を持つ人の割合は、日韓とも同じ49.9%でした。日本側では、昨年は改善した韓国への「悪い」印象が再び悪化に転じています。他方、韓国側でも、2015年から続く「悪い」印象の改善傾向は続いていますが、その伸び率は大幅に鈍化しています(5.5ポイント→0.7ポイント)。

 日韓両国民に、なぜそうした認識が生まれているのか。日本側では、韓国への感情悪化の要因として、徴用工問題やレーダー照射、また、これらの問題を巡る韓国の政治家の発言が挙げられます。そうした問題に対し、日韓それぞれの国民が自国の主張を支持するという正反対の認識が見られ、韓国国民が日本側の主張をメディア報道により知ることで、それに反応し始めている構図が存在しています。工藤はこうした結果をもとに、「政府間外交の問題が相手国全般の印象にも波及し始めているが、まだそこまで大きな影響には至っていない。しかし、今後の行方は注視していく必要がある」との見方を示しました。

 一方で工藤は、韓国側で日本に対する「良い」印象が31.7%に増え、過去最高になったことに言及。その原因として日本への旅行者の増加を挙げるとともに、主に携帯電話のアプリを情報源とする20代では「良い」の割合が57.1%に上ることに言及。「こうした文化交流が日韓関係全体の流れを変える力があるかは分からないが、注目すべき現象だ」と述べました。

 最後に工藤は、日韓関係の厳しい現状の「改善に向けた努力を行うべき」という意見が、韓国で70.8%、日本で40.2%とともに最多となったことを強調。しかし、「日韓関係の何を改善するのか、お互いがなぜ大事なのか。調査からは両国民の明確な意思を見出せなかった」と総括。両国の政府に「徴用工やレーダー照射のような短期的な課題だけでなく、この中長期的、構造的な課題を深刻に受け止めてほしい」と訴え、問題提起を終えました。

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0B9A0489.jpg 続いて発言に立った孫洌氏も、日韓間で進む文化面での直接交流と、歴史問題での政治家の言動を理由に悪化する国民感情、という二つの側面に言及。「政府間の問題が民間レベル関係に与える負の影響を最低限にとどめることは可能なのか」という論点を示しました。

 そして、工藤が課題に挙げた日韓関係の意義について、世論調査では、日米韓での軍事協力(日本43.3%、韓国66.2%)、FTAなど日韓の経済連携(日本43.4%、韓国83.1%)を韓国人の大半、日本人でも一定数が支持していることを紹介。「日本人は、韓国は『反日感情にとらわれている』『韓国は経済、安全保障の両面で日本よりも中国を重視している』という固定観念を持っているが、韓国社会は徐々に、しかし明確に変化している。日本の政府や国民はそれに気付いてほしい」と訴え、後者については、日本よりも中国に親近感を持つ韓国人の割合が低下(20.6%→17.8%)していることを例示しました。

 さらに、「韓国の政治家にも、支持を得るためには反日的な言動が必要と考えている人がいるが、韓国社会は変わっている」と、自国に対しても主張を述べる孫洌氏でした。

 日韓関係の様々な側面が明らかになった調査結果を受け、工藤が「日韓関係はなぜ悪化したのか。解決の糸口につながる分析をしてほしい」と呼びかけ、討議がスタートしました。


安全保障面で接近している日韓の認識とは

okuzono.jpg 最初にマイクを握った、静岡県立大学大学院国際関係学研究科の奥薗秀樹准教授は、「関係改善のヒントは安全保障面にある」との見解を披露します。

 奥薗氏はまず、「かつては『冷戦構造で同じ陣営に属している』ことが日韓間の求心力になっていたが、現在はそれに代わる価値を見出せないでいる」と発言。ただ、今回の世論調査では、北朝鮮の軍事的脅威を感じる韓国人が増えた(67.4%→73.0%)ことなどを挙げ、安全保障における韓国側の認識が日本側に近づいていると述べます。そして、中国の台頭が地域の秩序を不安定化しかねないと警戒する日本と、朝鮮半島を安定化させる上で中国の協力を必要とする韓国、という違いはあるものの、「『自国第一』を唱える米国の北東アジアへの関与をつなぎ留めながら、中国といかに建設的な関係を築くか、そして北朝鮮の核の脅威をいかに除去するか、という課題は日韓で共通している」と語りました。

0B9A0583.jpg 朝鮮日報の東京総局長を務める李河遠氏は、「敵国で活動する従軍記者になった気分になることがある」と、日本での取材で感じる厳しい印象を語ります。しかし、徴用工問題で「国家間の約束は守らないといけない」という韓国人は多いことを例に、韓国内にも多様な民意が存在することに触れ、「もっと勇気を出して対話の場に出向いてほしい」と日本側に呼びかけました。


活発な文化交流を政治的関係の改善にどうつなげるか

aoki.jpg 日韓の若手経済人同士の交流に取り組んでいる、株式会社ノーリツイス代表取締役社長の青木照護氏は、「政府間の問題を、民間の関係と完全に切り分けるのは無理だ」と厳しい見方を示します。では、その政府間関係をどう改善するのか。青木氏は、相手国への好印象が強い傾向がある両国の若い世代が政治課題を議論し、政府にフィードバックする「若者版・日韓未来対話」を創設できないか、と提案しました。

0B9A1035.jpg その若年層で盛んな文化交流を切り口に前向きな展望を語るのが、多くの韓流ドラマを制作するChorokbaem Media 代表取締役の趙亨眞氏です。同氏は、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備問題を機に中国との交流が途絶えた後も、日本は自社にとって米国に次ぐ輸出先だ、と紹介。インターネットメディアを通して、互いの文化が相手国に伝わる速度は増し、逆らえない流れになる、という見方を示しました。さらに、こうした文化交流で相手国の理解の幅を広めた若い世代が、今後、日韓で社会の中枢を担っていくことへの期待を見せ、「文化交流が外交問題を直接的に解決できるわけではないが、そのスタートラインになる」と語る趙亨眞氏でした。

k.jpg 日韓の学術界を行き来し、政治・外交だけでなく文化面も含めて日韓関係を研究している一橋大学大学院法学研究科の権容奭准教授は、「文化的に言えば、韓国は世界一の親日国家だ。日本文化がこれだけ多くのジャンルで消費されている国は他にない」と断言します。権氏は、韓国の若い世代で日本に比べ相手国への好印象が強い要因として、韓国の厳しい雇用情勢の中で自国に代わる理想の社会像を日本に求めていることや、大学で日本に関する講座が多いことなどを列挙。「文化や生活を政治問題と分離して、日本の良い点にも注目する韓国人が増えてきた」と評しました。

 反面、「韓国メディアは日本に対する多様な意見が出ているが、日本はメディアの論調が政府見解と同じになりがちであり、多様性がない」と、日本側の課題にも触れる権氏でした。

nishino.jpg これに対し、慶應義塾大学法学部の西野純也教授は、「文化面での相手国への親近感が、相手国へのより深い理解につながっていない」と、文化交流の効果に慎重な見方を示します。「相手国と長期的な付き合いをしていくにあたっては、日韓の歴史で何があり、どういうプロセスで今日の関係を築いてきたのかを知らないといけない」と若者交流の課題を指摘する西野氏は、「政府間関係と民間交流は切り分けるべき面もあるが、民間交流を政治面での相互理解に押し上げていくことも必要」だと主張。「そのための試みであってほしい」と、日韓未来対話に対しても期待を述べました。

 加えて、西野氏は「相互理解」の観点から、「韓国側には『日本は政権が代わるごとに立場を変えている』という見方があるが、実際は、歴史について政府としての一貫した立場がある。日本社会にある多様な意見を、政府の立場に昇華させる社会的なダイナミズムに目を向けてほしい」と韓国側に求めました。 

 西野氏はさらに「日本側にも理解不足の問題はある」と指摘。「文在寅政権の政策は反日を動機にしたものではなく、権威主義政権時代の認識や既得権を変革しているという国内向けのメッセージだ。日韓関係はその中で影響を受けているということを、理解してほしい」と述べました。


相手国への印象を左右するメディアの「フレーミング」

金基正.jpg 若者の交流にインターネットが大きく寄与しているのに対し、既存のマスメディアが日韓の相互理解に与える影響はどのようなものでしょうか。延世大学政治外交学科の金基正教授氏は、メディアの「フレーミング(表現の枠組み)」が、日韓間の葛藤を不必要に大きくしている、と懸念を示します。同氏は、政府が行う表現に加え、「メディアのフレーミングによって、両国社会に潜在する政策的な選好が表面化してくることがある」という意見を述べました。

matsubara.jpg 権氏から「勇気をもって韓国社会に深く切り込んでいる、数少ない日本人ジャーナリスト」と紹介された、BS-TBS「報道1930」キャスターの松原耕二氏は、この半年で20回の韓国特集を組んで「自身がいかに韓国を知らなかったのか、痛感した」と語ります。松原氏は、「地上波テレビのニュースは時間が短い中で、背景の説明もせずに、インパクトを追求するため政治家の強硬な発言ばかりを取り上げる傾向にある」と、メディア側の事情を吐露しました。そして、日本人の9割がテレビを情報源にしているという世論調査結果に触れ「日本側の対韓印象が大きく悪化したのはショック」と語る松原氏。「韓国のメディアが日本をどう報じているのか、もっと知りたい」と、日韓のメディア間交流にも意欲を見せました。

sakata.jpg 神田外語大学国際コミュニケーション学科の阪田恭代教授も、日本メディアの韓国に対する「フレーミング」に言及。「韓国メディアで日本を批判する意見が出ると、日本側は『反日だ』と受け止めてしまう。日韓関係は多面的になっているが、相手国の言動にどう対応するかという認識の枠組みが古い」と指摘しました。

 そして、韓国社会の様々な対日観、北東アジア観が明らかになった調査結果を、「一面的な認識を崩していく意味で、タイムリーだった」と評価し、そうした固定観念を解くための、メディアのさらなる努力を求めました。


t.jpg 韓国の与党・共に民主党の国会議員である盧雄來氏は、「相互理解が不足する中で、誤解や疑念が生まれている。韓国の、特に年長の世代には、『親日は良くない』というフレームが根強く残っている」と指摘。一方、日本の政治家が靖国神社に毎年のように参拝していることを挙げ、「韓国側では、先の大戦への日本の謝罪と反省が本当に誠意あるものか、という疑念を持っている」と、歴史を巡り韓国になお存在する日本への不信感にも理解を求めました。

 また徴用工問題については「国家間の合意は守られるべきだと思っている」との意見を提示。「司法では両国間の合意に限界があるが、双方が外交を通して解決策を出し合い、妥協を見出すことはできると思う」と語りました。

3.jpg 野党・自由韓国党の国会議員、金世淵氏も歴史問題に触れ、「日韓双方にとって、相手国の過去の決定や言動を覆しているように見えている」と、相互不信を払拭することの難しさを語ります。加えて外交・安全保障面でも、「韓国は北朝鮮問題の解決に中国との関係強化を必要としている。もし韓国側の立場だったらどのような外交を進めるだろうか、という視点で考えてほしい」と、日本側に要望しました。


民主主義国・日本と韓国の市民は「主権者としての責任感」を持っているか

kondo.jpg 一方、日本側の近藤誠一・元文化庁長官は、日韓関係の改善にはメディアの力だけでは限界がある、と認識しています。近藤氏は「日本の市民は、グローバル化やAI化の重圧にさらされて余裕がなくなり、不満がたまっている。そうした中で政府間の問題やメディア報道に引っ張られ、不満が表に出やすくなっている」と、悪化する国民感情の背景を分析。

 そして、「政治や経済にはそれぞれの国の論理があり、正しいとは限らない。また、政治は権力を、財界は利益を、メディアは視聴率を、どうしても求めてしまうのは仕方ない。そういう限界があることを市民は理解し、政治や財界の言うことを真に受けずに自分の立ち位置を持つべきだ」と強調しました。

 さらに、ユネスコ大使を務めたこともある近藤氏は、「政府の政治的及び経済的取り決めのみに基づく平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって、平和が失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない」というユネスコ憲章の一節を紹介。「人間の悪性の一つは外国人嫌いだが、それを乗り越えてウィンウィンの関係を求める善性をも持っている」と述べ、成熟した民主主義国である日韓の市民一人一人に「主権者という責任感をどこまで持っているか」と投げかけました。


日韓が協力しないことの「機会損失」とは

YKAA0252.jpg 韓国の申珏秀・元駐日大使は、「日韓関係悪化の目に見える損失だけでなく、関係が改善されないことで生じる『機会損失』こそ重要だ」という表現で、工藤も語った「相互にとっての相手国の価値」を具体的に語ります。第一に、少子高齢化や第4次産業革命など国内の課題、第二に、米中対立と米国の"孤立主義"に直面する北東アジアの将来、そして第三に、世界で自国第一主義が台頭する中での自由と多国間主義の危機、という三つの側面を提示。「この状況で日韓が協力すれば、はるかに良い世界を手に入れられる」と主張するのでした。

2.jpg 翰林国際大学院の崔兌旭教授も、アジアや世界という視点での日韓協力に着目。金大中大統領と小渕首相による日韓パートナーシップ宣言が出された1998年当時を振り返り、「歴史問題解決への期待はなかったが、にもかかわらず、研究の現場には、日韓が地域の未来を切り開くことへの期待が満ちていた」と語りました。そして、教育やAI、高齢化対応など様々なレベルの協力により、「過去の問題は小さくなる」と主張。世論調査に「日韓は未来のためにどのような分野で協力できるか」という問いを付け加えてほしい、と注文しました。

0B9A0775.jpg 文在寅政権で国防長官を務めていた宋永武氏は、文政権のビジョンを「北朝鮮の核問題を解決した上で朝鮮半島を統一し、自由民主主義を満州、シベリアまで拡大する」ことだと説明。東西統一後、EUの経済統合やロシアとの関係改善を主導した「西ドイツのような役割を果たす準備をしている」と語り、「日韓はその中で連携するチャンスがある」と述べました。


日韓関係の「ニューノーマル」を世論は認識しているか

 議論も終盤に入り、司会の工藤が、日韓関係に携わる識者らが集まる公開対話の意義を改めて強調します。「メディアの情報に依存せず自分の目で課題に向き合っている人たちが、課題解決に汗をかく姿を市民に伝える必要がある」と、思いを語る工藤。

 しかし、言論NPOが日本の有識者384人から回答を得た調査では、有識者ですら、「今のところは無視すべきだ」など関係改善に消極的な人が約3割存在することが明らかになっています。「そうした有識者の声が市民に伝わることで、相手国への感情悪化に拍車がかかってしまう危険がある。その点をどう考えるか」と、パネリストらに意見を求めました。


sawada.jpg これに対し、毎日新聞の澤田克己・外信部長は、韓国の国力が増し、日韓が垂直から水平の関係に移った現状を「ニューノーマル」と表現。「その変化を受け入れられないため、多くの有識者を含む高齢層で相手国への厳しい見方が強いのでは」という解釈を示します。

 加えて澤田氏は、世論調査の「日韓関係はなぜ重要か」への回答にみられる日韓の差を指摘。「韓国では『経済や産業の面で相互依存関係を強めており、多くの共通利益があるから』が最多だったのに対し、日本は『隣国だから』『同じアジアの国だから』という情緒的な理由が圧倒的だ。したがって、何か問題が起これば一気に感情が悪化する危険がある」と懸念します。そして、ジャーナリストの立場から「これだけ強くなった韓国との関係を管理することの実利を、日本人に知ってもらいたい」と語りました。

soeya.jpg 慶應義塾大学法学部の添谷芳秀教授は、「かつて日本の対韓観は可変的で、韓国の対日観は画一的だったが、今はその逆の現象が起きている」と分析。韓国人の日本への好印象は、政府間関係の影響を受けずトレンドとして増えている、とし、そうした韓国社会のダイナミズムを「日本人は認識していない」と指摘しました。

 ここで、韓国側を代表し、EAIの孫洌院長が議論を総括しました。孫洌氏は「好感度において逆行する韓国と日本」というフレーズを会場のスクリーンに映し出し、韓国の対日好感度が常に上昇、日本の対韓好感度は低下する状況を「ニューノーマル」と表現。

「韓国では、政府の政策と国民の対日感情とのデカップリングが、日本では、韓国との交流が進んでいるのに政府間関係の影響を民間が受ける"ネガティブ・カップリング"が起きている」という認識を述べ、「この状況下で日韓関係をどう回復させ、新たな段階に発展させるのか」と、第2セッションの論点を提示しました。

 最後に、日本側から総括を行った工藤が、「かつての日韓未来対話では勇ましい発言も飛び出したが、今回はそういう参加者がおらず、『成熟した関係』を感じる。第2セッションではより本音に迫った議論を展開したい」と話し、第1セッションを締めくくりました。

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