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第6回エクセレントNPO大賞 総評

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1. 応募状況

 第6回エクセレントNPO大賞の応募期間は、2018年7月30日から9月28日の約2カ月間でした。応募総数は110件で、リピーターは6割、新規は4割でした。また、初の海外からの応募もありました。応募団体の活動分野はとても多様です。子ども、障がい者、医療、シニア、国際協力・交流、まちづくり、環境保全、動物保護、そしてLGPT、芸術文化など、その幅はますます広がっています。近年、子ども分野が顕著でしたが、今年はシニア分野の活動も目立ちました。また、事業予算の規模は、100万円から約3億円で幅がありました。今年は、年間予算100万円台の団体が2つノミネートされていますが、小規模だから組織運営が脆弱であるという固定観念を拭い去ってくれました。なお、ノミネート団体は市民賞部門から6団体、組織力賞部門から4団体が選ばれています。より接戦であった市民賞部門からはひとつ多く、また上位4団体と他団体との点差が大きかった組織力賞部門からはひとつ少なく選定しました。


2. 審査からみえる特徴

 審査から様々な特徴や課題を見出すことができましたが、ここでは3つ挙げたいと思います。

 第1に、全体にレベルが向上したという点で、審査に関わった人々からも指摘されたことです。データをみたところ、平均点は、第5回が48.57点(得点率64.8%)、第6回が46.9点(得点率62.5%)で、第5回の方が高く、審査員の印象とは異なっているようにみえます。しかしながら、図をご覧いただくと、第6回のほうが、高得点に集中していることがわかります。こうした背景には、昨年よりフィードバックの方法を変更したことが考えられます。すなわち、第4回までは、コメントをまとめたかたちでお送りしていましたが、第5回からは、応募用紙に記された基準ごとに、審査の過程で気づいたコメントをそのままお返しすることにしました。リピートされた応募団体の皆様は、このコメントを参照して自己評価書を記述されたようですが、その結果、レベルが向上したものと思います。

11.png


 第2の特徴は、課題解決と市民性、組織力にかかる自己評価の記述です。基準5から基準11は、課題解決にかかる基準です。基準5は、自らが取り組む社会課題を明確かつ具体的に把握しているかを問う基準です。有限の人材、資金、時間で、目下、着手している課題を説明することが求められています。しかし、説明された課題は壮大で、漠然と抽象的な記述にとどまるものが散見されました。課題認識が適切なものでないと、目的や計画も適切に立てることができません。大きな視点を持つことも大事ですが、同時に自ら取り組む課題を的確に把握することが大事です。

 市民性にかかる自己評価の記述はレベルが高くなってきました。他方で、基準の限界も見えてきました。現行の基準からでは、応募団体の皆さんのボランティア・マネジメントの状況を十分に拾い上げきれていないのではないかと思うからです。また、ボランティアにお世話になった人が、次は誰かに貢献するような「お互い様」の関係を映し出すような基準が必要ではないかと審査委員会で議論されました。

 組織力については、今年の大賞受賞者である「がんサポートコミュニティ」は世代交代の問題についてひとつの方向性を示しています。NPO法制定から20年を経て、多くの団体が世代交代の問題に直面していますが、サクセッションプラン(後継者育成計画)を作り進める試みは大事なヒントを提供していると思います。また、エクセレント基準においても検討すべき点ではないかと思います。


 第3に、小規模団体に関する特徴です。前述のように、今年のノミネート団体には、年間予算100万円台の団体が選ばれています。小規模でも、しっかりと運営している団体があることを示す、大事なエビデンスを提供して下さいました。
他方で、自己評価に慣れない団体も散見されました。また、HP(ホームページ)やブログなど情報開示や発信手段をもたず、また、あまり意識していないと思われる団体もありました。情報公開は今後ますます大事になってゆくと思います。自己努力と同時に何らかのサポートが必要ではないかと思います。


3. 今後の課題

 審査を通じて得られたことを踏まえ、次の3点を今後の課題として挙げたいと思います。

 第1に、応募団体へのフィードバックが、自己評価のレベルアップに寄与することを踏まえ、今後も丁寧にフィードバックしてゆきます。

 第2に、市民性の基準をボランティア・マネジメントや「お互い様」の考え方を配慮した上で改変することです。容易なことではありませんが検討してゆきます。

 第3に、評価の初心者向けの対応を検討するということです。先の得点分布の図が示すように、高得点に集中するグループと低得点に位置するグループに分かれています。これらを同じ基準で評価するべきか否かも熟考します。


4. エクセレントNPOと2つの社会課題

 最後に、エクセレントNPOを通じてみえる社会課題について2点述べたいと思います。
今年は、例年に比較し、医療関係者による団体の応募が多いのが特徴的でした。この状況について、「そもそも医師は公共的な仕事に従事しているにもかかわらず、なぜNPOを作るのか」という意見が、審査の過程で出されました。この問いかけは大変重要です。なぜならば、現行の体制や制度をベースにした医療行為ではカバーできない課題が現存しているか、新たに生まれているということが示唆されていると考えるからです。そして、こうした課題に挑むために、NPOという"乗り物を活用して活動しているのです。それはまさに、非営利活動や組織の存在意義であると思います。

 最後にもう1点、挙げたいと思います。人生100年時代と言われる中、もうひとつのキャリアとして、社会貢献活動に対する関心が高まっています。これは、パラレルキャリアという考え方で、1993年にドラッカーが示しました。「現代の知識社会において、職場で働くことに加え、社会のために働くパラレルキャリアが必要である。それが個々人の市民性を育む場である」と述べたのです。昨年、エクセレントNPO大賞の協賛企業2社の協力を得てグループインタビューを行いましたが、退職後の活動として、あるいは会社の外の社会とのつながりの場として、社会貢献活動に対する関心が高まっていることがわかりました。他方で、活動先となるNPOについては、玉石混交で、信頼できる団体をどのように選んでよいのかわからない、という意見も少なくありませんでした。つまり、人々と非営利団体の距離を双方から縮めてゆくことが必要になっているのです。その意味でも、エクセレントNPO基準を用いて、質の向上をめざすことは、ますます重要になると思います。

 今年もご参加、ご協力をありがとうございました。皆様と共にエクセレントNPOの試みを発展させることができれば幸いです。

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