日本の民主主義を立て直す

言論NPO設立15周年記念フォーラムセッション1
「リベラルデモクラシーの行方:揺れる世界秩序と台頭するポピュリズム」報告

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言論NPO設立15周年パーティー
言論NPO設立15周年記念フォーラム アドバイザリーボード公開会議
セッション2「日本は民主主義と自国の将来像をどう描くか」
オープニングフォーラム「民主主義の将来と言論NPOの役割」

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 言論NPO設立15周年記念フォーラム第1セッションでは、「リベラルデモクラシーの行方:揺れる世界秩序と台頭するポピュリズム」と題して、海外からの論客が、代表・工藤の司会の下、議論を行いました。

YKAA0730.jpg 工藤はまず、「トランプ現象がきっかけではないが、自由と民主主義がぶつかり始めて、これから民主主義の未来がこれからどうなっていくのか、皆さんの意見を伺いたい」と問題提起を行い、議論に入りました。


今回のトランプ現象はエリート層に浴びせた冷たいシャワー

YKAA0262.jpg この問いに対して、コロンビア大学教授のジェラルド・カーティス氏は、「オバマ大統領の時の合言葉は"チェンジ"だったが、今回の選挙でも米国人は"変化"を求めたのだ」と指摘しました。その上で、カーティス氏は、トランプ氏がただ、無責任に反イスラム教徒、移民問題など乱暴なことを言い、不平等、格差、グローバリズム、エリートイズムを突いたと指摘する一方で、グローバリゼーションは、どのように大切なのか、ということをエリートの人たちが示す必要があった、と語りました。加えて、カーティス氏は今回の出来事の一番重要なこととして、「大衆が、政治とメディアのエリートたちは私たちの不安を理解できないと感じている」ことを挙げ、米国人が直面している危機を過小評価してはいけないと語りました。さらにカーティス氏は、「もしトランプ氏が公約を実行したら、必ずアメリカは崩壊する。今回の結果が、エリートに浴びせた冷たいシャワーであればよかったのではないか」と分析しました。

 これに対して工藤は、さらに「米国が保護主義に向かっていくのは1930年代に似ており、今の民主主義による政党政治は、民意を吸収できなくなっているのではないか。それは民主主義の危機なのか、自由の危機なのか。これから未来の民主主義はどうなっていくのか」と問いかけました。

 カーティス氏は、「政治はまず、人々のためにならなければいけない」と述べた上で、「ある程度の自由な貿易も必要だが、説明責任を伴う自由でなければいけない。そうした点について説明がなされていない点が、本来の意味から逆行しているように感じる」と語りました。さらにカーティス氏は、「希望的なメッセージを言うとすれば、確かに、トランプ氏には信念はなく、とにかく成功したといって脚光を浴びたいだけのナルシストではないか」と指摘する一方で、「大統領としては、選挙の時とは違うものが求められることから、トランプ氏が脚光を浴びるように頑張るのであれば、大統領としての仕事もそんなに心配はしていない」と分析しました。一方で、カーティス氏は、「国際的秩序の安定にはまだまだ米国の力が必要だが、日本は、もっと声を上げてリーダーシップを果たしていってもらいたい」と、日本への期待を示しました。


エリート層の意識改革こそトランプ現象を防ぐ手立てである

YKAA0309.jpg 元駐日ドイツ大使のフォルカー・シュタンツェル氏は「オランダ、オーストリア、フランス、イタリアでも右派が出てきており、"トランプ現象"と同じような状況が起きている」と指摘しました。その背景として、移民問題により、労働者は高い賃金を求めると職を失うなど、そうした不平等、不安感から世界は真っ平になってしまったことを挙げました。さらにシュタンツェル氏は、1930年代にドイツ、イタリア、スペイン、そして英国、米国でもファシストの動きがあったことを振り返りながら、「ファシストが英国、米国で勝てなかったのは民主主義が根付いていたからであり、ポピュリズムに陥らないように、エリートがその役割を果たしてきたこと」を挙げ、現在は民主主義同様に、エリート層も危機を迎えている、と語りました。続けてシュタンツェル氏は、エリート層が信頼を失った原因として、戦後、ヨーロッパのエリート層は民主主義というものを自問することなく、当然のものとして受け取り、社会との対話、討論をせず、民主主義への質問をする人はわずかしかいなかった現実を指摘。「責任ある人たちは、十分に反省して今、起きていることを受け止めるべきであり、そうすることで"トランプ現象"は起こらなくなるだろう」との見解を示しました。


新興民主主義国家の悩みは、
法の支配と経済成長を同時に実現しなければならないこと

 続いて工藤は、元インドネシア外相のハッサン・ウィラユダ氏に、「日本では、民主主義の先行きに不安を持っている人がかなりいるが、インドネシアの人たちは、民主主義にかなり強い希望を持っている。"トランプ現象"をどう受け止めたか」と尋ねました。

YKAA0356.jpg これに対してハッサン氏は、「グローバル・パワーとして、トランプ氏の政策は確実にマイナスの影響を及ぼすだろう」との見通しを示しました。その上でハッサン氏は、「今、世界秩序が脆弱化し、政治的、経済的な意味でも不安定な国際環境が生まれつつあり、静かに民主主義が崩壊している」点を指摘しました。その具体例として、380年もの間、民主主義であった英国でEUからのBrexitや、スペインのカタゴニアでは独立運動を挙げ、グローバル化はベネフィットももたらすと同時に、国との間のギャップ、国の中での貧富のギャップをもたらし、その結果、いろんな層の中でポピュリズムが生まれ、こうした状況に陥ったのではないか、と語りました。

 さらにハッサン氏は、アジアにおいては比較的、民主主義国家として長い経験を持っている日本であっても、ポピュリズムの波に飲まれそうになっているが、インドネシアなど新興民主主義国家では、その波の影響は小さいとしながらも、既成勢力に対する怒り、不安は増えており、西洋が時間をかけて築いてきた法の支配と経済成長という2つを同時に実現していく難しさを語りながら、民主主義国家の基本姿勢と、新興民主主義国家の苦悩を示しました。


課題解決に向けてエリート層・政治家の具体的な行動が必要に

YKAA0414.jpg ジュネーブ高等国際・開発問題研究所教授のキース・クラウス氏は、「"トランプ危機"というものは以前から指摘されており、言い換えれば、民主主義の危機、自由の危機と呼ばれるものだ」と語りました。その原因としてクラウス氏は、「パナマ文書で名前が挙がったような、いわゆるコーポレート・エリートが国家社会経済の均衡を崩してしまったことで、経済と国家と社会の分断が生じてしまった」ことを挙げました。さらにクラウス氏は、「自由の危機というのは、都市部と農村部、先進派と保守派の対立からもたらされるものである一方、分配、社会内での分配の議論を進めていく必要がある。そのためにも、エリート層も、政治家も具体的な行動を通じて対応していかなければいけない」と語り、様々な層で、課題解決に向けた行動をともなう必要性を示しました。


民主主義社会でのジャーナリズムの重要性

YKAA0508.jpg 元ロサンゼルス・タイムズ特派員のデビッド・ホーリー氏は、ジャーナリストからの視点を語りました。トランプ氏が主張する「1100万人の不正移民を追い出す」などの公約は絶対、守れないとみんな知っていたものの、そうした言葉に踊らされたのが今回の選挙の結果だと指摘。「グローバル化によって世界の経済は成長するが、その結果、勝者と敗者が生まれることが問題であり、敗者にもしっかりベネフィットがあるような社会にする必要があったが、それが実現できなかった」と語りました。一方で、「本当のジャーナリズムというのは、タフで、正確で、感情に惑わされてはいけない。そして、自由民主主義では、質の高いジャーナリズムが重要だ」と力説し、ジャーナリズムの必要性を説明しました。


YKAA0240.jpg 最後に工藤は、「自由と民主主義が直面している課題を議論し、そこには大きな反省点もあった。私たちは、課題に対しチャレンジしていかなければ、民主主義というシステムに対する信頼を失ってしまうと考えている。個人の自立、責任ある自由、課題解決に挑む自由。そうした社会を守るためには、しっかりと問題意識を持ち、行動していくことが大事だと再認識した」と述べ、第一セッションを締めくくりました。

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