「第5回エクセレントNPO大賞」大賞受賞者・支援企業 インタビュー

2018年1月19日

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地域社会を変える大きなムーブメントが起き始めた

組織力賞・ホームホスピス宮崎 理事長 市原美穂

田中:第5回エクセレントNPO組織力賞を受賞された「ホームホスピス宮崎」の市原さんです。おめでとうございます。

市原:ありがとうございました。

田中:自宅でホスピスするということで、今日の受賞時の一言でも、非常に明るく説明されていましたが、結局、最後を看取るということですよね。


「ホームホスピス宮崎」の活動の核心とは

市原:ホスピスというと、皆さん「最後」と思われるのですが、「ホスピス」はそもそも「ホスピタリティ」からきている考え方です。だから、最後なんかではなくて、その方がいろいろな病気になっても、どんな困難な障害があっても、その人にもてなしの心があって、最後まで生き切るということなのです。最後のところだけ見るのですか、と言われますが、そうではなくて、10年ぐらいいらっしゃる方もいますし、その方の居場所を私たちは提供しているということです。

田中:私のようなものからすると、人の最後のところ、つまり他人の生死のところにかかわるということは、凄く怖いことなのですが、いかがですか。

市原:その人が生き切るということは、その人の人生の幕が下りるということですよね。その幕が下りるのを見る人はその人と共に、ずっと一緒に人生を歩んできた人だと思うのです。それは家族だったり、一番親しい人だったりすると思います。その人たちが安心して傍で寄り添えるように私たちがサポートする。つあまり、私たちが看取るのではないです。

田中:さはさりながら、実際にNPOとしてそれをサポートするということになると、時間もかかる、人もかかる、お金も必要になる。後、場所ですよね。どのような所に苦労されていますか。


20年の歳月を経て、地域社会も変わり始めた

市原:普通の家を借りて活動するのですが、普通の住宅街ですと、やはり迷惑施設だと思われて、「それは困る」という意見もありました。でも、実際には「私たちもいずれ行く道だ」と思っていただいて、地域の方たちが今もずっと応援してくださっています。そういう地域づくりがないと、空いている家を使えたらできますよ、というわけにはいかないですね。

田中:そうですよね。貸す方もいろいろと考えますよね。

市原:地域の方々が、ここに「かあさんの家があってよかった」、「安心だわ」と思ってくださるように私たちが活動をしていかなければいけないと思っています。

田中:20年の歳月をかけながら、段々、地域社会は変わっていきましたか。

市原:今は、うちの家は父が亡くなって空いているので使ってほしい、という申し出を言ってくれる方が沢山いらっしゃいます。しかし、私たちのキャパシティとして、どんどん増やせる余裕がないのも事実です。ですから、丁寧に一人ずつを見るようにしています。

田中:丁寧に一人ひとりということは、普通の介護よりもたくさんの人を投じているということですよね。

市原:そうですね。公的ないわゆる施設では単位が9人です、特養の場合は1ユニットが10人です。私たちは普通の家で見ているので、大体5人~6人ぐらいと約半分です。そこにかかわる人数は同じです。だから、運営上でいえば、とても非効率的です。

田中:そこを周囲に、特に、お金を出してくれる人たちに理解してもらうのは大変ですね。

市原:でも、この5~6人というのがとても肝になっています。5~6人だから距離感が近いので、みなさんの間に気遣い合う関係が生まれます。だから、家族もやってきて、家族同士が家族になります。そう意味で、私たちは民家を借りて始めましたが、後でよく考えたら、これがよかったのだと感じています。

田中:そして今、全国40カ所に広まっているということですが、これは1つの社会運動になっていますよね。

市原:そうですね。私たちはムーブメントだと思っているので、1個ができたからいいわけではなくて、これが広がって、地域を変えていく力になればいいと思って、全国のホームホスピスをやっている人たちには伝えています。

田中:まだまだこれから必要になる活動になりますので、この賞を1つの応援になればと思います。

市原:今回の賞を励みに、全国の仲間にも伝えたいと思います。
田中:がんばってください。期待しています。
市原:ありがとうございます。

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