【座談会】「ベンチャービジネス座談会」 日本は挑戦者を評価する国に生まれ変わるか

2002年7月11日

kamei_t020710.jpg亀井孝明 (株式会社電通勤務 兼 株式会社電通ドットコム取締役)
かめい・たかあき

東京大学工学部卒業。同年電通入社。株式会社電通ドットコム設立と同時に取締役就任。ベンチャー・キャピタル業務のほかに、コンテンツ・ファイナンス、コンテンツ関連ビジネス・デベロップメントに従事

tokuda_h020710.jpg徳田一 (ユナイテッドメディア株式会社)
とくだ・はじめ

中央大学商学部卒業。住友銀行業務開発・業務企画部門次長、田園調布支店長を経て、2001年ベンチャー支援を目的としたユナイテッドメディア株式会社を設立。

nagano_k020710.jpg永野恵嗣 (ニュー・メディア・ジャパン・インコーポレイテッド マネージングディレクター 日本代表)
ながの・けいじ

1980年東京大学工学部卒業。86年コロンビア大学MBA取得。86年べイン・アンド・カンパニーに参画。93年より2000年まで東京事務所にてヴァイス・プレジデント。4年間韓国事務所代表を兼務。98年より米国においてベンチャー投資を開始。2000年ニュー・メディア・ジャパンを設立。現在、日米においてベンチャー投資及び支援活動を積極的に行う。

概要

金融ビッグバンは一体、何を目指して行われたのか。実際に市場を使う人々にとって日本の金融・資本市場の利便性は高まったのか。ベンチャービジネスを起業した30代から40代の若手実業家が、起業資金の出し手や投資家をめぐる環境の経験を踏まえ、市場の問題点やビッグバンの評価を行った。経済の活性化にはビジネスを切り開く挑戦と成功例。それを評価する議論が必要であり、その裾野は広がっていると三者は口を揃えた。

要約

日本では、IPOバブルとも言える状況が依然見られるが、ベンチャービジネスのノウハウの蓄積は小さく、良い事業は少ない。ベンチャー自体に大企業依存の傾向も見られる。しかし、日本の企業社会にも変化が生じ、優秀な人材が企業からベンチャーの世界に身を投じる動きが徐々に広がっている。

こうした状況を踏まえて、日本の市場が活性化できない理由を、アメリカでのベンチャーキャピタル投資の経験をもつ永野氏は、「アメリカと比較して、日本では長期的な投資の立場で経験を積んだ広い層の投資家が育っておらず、少数の参加者による投機が中心で市場の厚みがあまりに小さいことが問題だ」とした。

大手都市銀行から転進した徳田氏は、「銀行など大企業における旧態依然とした評価システムの問題や、銀行がビッグバンの本当の意味を生かして対応してこなかった問題」などを指摘する。

事業法人としてベンチャー投資を手掛ける亀井氏は、「多額の資産を保有している世代から投資マインドに溢れたアグレッシブな若い世代への資産の移転の重要性がある」と指摘するとともに、日本という国そのものが投資としての魅力を失い、多額の資金が外国国債などに流出していることも資金が国内で回らない原因だ」と語っている。

金融ビッグバンはユーザーにとって魅力的で厚みのある証券市場をつくることが目的だったが、個人の資金は証券市場に流れず、企業の資金調達を軸とする企業金融の分化の流れに金融業が対応していないばかりか、その市場は極めて小さい。金融ビッグバンがその成果を上げるためには、健全な投資家の育成や、銀行ビジネスの改革、大企業中心の日本の人材のモチベーションの変革など、日本の経済社会全体にわたる改革が伴わなければならない。これには長期の時間を要するが、ベンチャービジネスが成功事例を積み上げて好循環を生み出し、日本が挑戦者を適正に評価し、支援する国へと変わっていくことが何よりも重要であろう。