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2017年5月20日

訪米を終えて ~アメリカで実感した民主主義の力~

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 私は今、ワシントンのダレス空港にいます。1カ月間にわたる世界との議論を終えて、ようやく日本に帰国する途上にあります。私たちがアメリカに入ったのは5月7日。そして、10日にニューヨークに行き、14日には再びワシントンに戻ってきました。今日18日までの4日間、私たちは50人近い、シンクタンク、財団の代表や国会議員、学者、ジャーナリストと議論を重ねました。

窮地に陥ったトランプ大統領

33.png 当初私は、今回の訪米で北朝鮮問題をはじめとする、北東アジアの平和の問題について議論しようと思っていました。実際にその議論もしたのですが、滞在期間中にアメリカは大きく揺れ動きました。コミー連邦捜査局(FBI)長官の解任、そして、トランプ大統領がロシアに機密情報を漏えいしたという疑惑があり、その捜査の中止を大統領が迫っているということが明らかになったわけです。そして昨日には、この問題を調査するための特別検察官が任命される事態となり、連日トップニュースとして報道されています。朝、ホテルのレストランで食事をしていると、客も従業員も皆新聞を読みながら議論をしている。トランプ政権の現状についてものすごい関心が集まっている。ワシントンの街全体が大きく揺れ動いていることを実感しました。

 そこで、私は多くの人に質問しました。「トランプ政権は1期4年間持つのか」と。すでにご報告しました「トランプ政権100日の評価」座談会では、参加者4人中「4年間持つ」と答えたのは1人だけでした。しかし、その彼の回答も皮肉なニュアンスが含まれていました。4年間持つかどうかという以前に弾劾される。そして、来年の中間選挙を目前に、共和党の中に何かが起こってくる。議論が起こってくる、という見方がほとんどでした。

 共和党の中では、トランプさんよりも副大統領のペンスさんの方が理性的で指導力もあるので、「彼に大統領職を任せたい」という声も増えてきている、という見方もありました。
こうした回答は想定以上のものでした。

 これは、株式市場も大きく下げた日のことですが、私はワシントンポスト、ウォール・ストリート・ジャーナル本社などを訪問し、編集幹部やテレビのコメンティターなど意見交換しましたが、そこでもその話になりました。

 「今、関心あるのはトランプが弾劾されるかどうかだ。その動きが今始まろうとしている」「あまりにも判断が間違っている、このままで終わると考えることのほうが難しい」。

 また、世論調査会社のピュー・リサーチ・センターとワシントンポストの世論調査部門責任者、メリーランド大学の専門家は、もっと詳細な世論の分析をしていました。トランプ氏には色々な問題がありますが、40%という選挙戦時のコアな支持者はまだそう崩れていない。最近の調査でも、そうした傾向だということが議論になりました。その中にも変化はみられる。来年の中間選挙に向けて、候補者がこうした状況をどう判断するのかを、注目している、というのです。

 「トランプ大統領は北朝鮮問題で振り上げた拳をどう下ろすのか。私たちはそこに関心があります」という、私の質問にこうした政治状況も考慮して判断するしかない、というのが多くの声でした。

大統領を追い詰めているのは民主主義の力

 この状況の先行きについて、私が断言することはまだ適切ではありませんが、少なくともアメリカの社会の中で、民主主義を舞台にして大統領と彼の適切ではない行動に対する様々な反発が大きな力を持ち始めている、ということを私は実感しました。

 そして、そうした議論を、アメリカの有識者と毎日行いながら考えたことがあります。

 民主主義というのは、個人の自由を守るための仕組みです。が、私たち市民は間違った選択をすることもあり得る。しかし、間違った選択をした結果を、どういうかたちでチェックアンドバランスし、クールダウンするべきなのか。どういう仕組みが必要で、民主主義の中でどう機能させるべきなのか、と。

 アメリカの中では司法や議会が、ジャーナリズムが、そして世論が抵抗力として機能し始めている。ひるがえって日本ではどうだろうか。法の支配や民主主義の建て付けはそういう抵抗をできるのだろうか。そうした抵抗力を日本のジャーナリズムや市民は持っているのだろうか。まさに今、民主主義が問われているというのはそういうことなのではない、のか。私たち市民の行動と同時に、様々な民主主義の建て付け、システムが機能するための努力を帰国後取り組まなくてはならない。そう思いました。

アメリカの中で変容する民主主義に対する意識

 私たちは、民主主義の推進に携わる人たちとも対話を重ねました。そこでは、アメリカの社会の中で民主主義に対する深い考察が始まっていることを目の当たりにしました。今までのアメリカは民主主義を上から押し付けていく、世界に対して普及させていく、という上から目線の考えの人たちが圧倒的で、私はそういう姿に違和感を抱いていました。しかし、そうした傾向は確かに今でもあるのですが、そうではなくて自分たちの国も含めた先進国の中で起こっている民主主義の問題についてきちんと考えてみよう、という声が見られました。そして、彼らは言論NPOとの連携に強い期待を持っていました。言論NPOは15年前、日本の民主主義を鍛え直す、言論の責任を果たそうということで誕生した組織ですが、その言論NPOに対して、「一緒に協力して、今世界が直面する民主主義の困難というものを考える舞台を作っていこう」というような提案が色々なところから寄せられたのです。

 今年1月に、トランプ政権が動き始めた時にワシントンを訪れましたが、まだアメリカのシンクタンクや、大学にそういう意識は見られませんでした。しかし、今の彼らは、トランプ政権の誕生の中で揺れ動きながら、民主主義を復元させるための手掛かりや行動を求めていました。そうした中で、日本も日本自身の民主主義の姿を問いかけながら、アメリカと、世界と民主主義を守るために協力し合うべきだ、と私は、強く思ったわけです。

アメリカも徐々に北朝鮮に問題意識を持ち始めている

 私たちは、今回北朝鮮問題についても議論しました。この問題に関しても、私たちは今回、色々なことを考えさせられました。議論の様子は後日公開しますが、これからこの問題はどのような展開があり得るのか、という私の問いに対する主な答えだけは今、ご紹介します。一つは、制裁の強化と外交アプローチを戦略的に連携させるプロセス。二つ目は軍事行動。三つ目は何もしないこと。そして、四つ目として核保有国として北朝鮮を認めること。驚いたことにその4つの選択肢全てがあり得ることだと認識されていました。軍事行動もあり得るし、北朝鮮を核保有国として認めるということも選択肢である、と。

 もっとも、現時点では、アメリカの皆さんの関心はまだ薄いという印象を受けました。遠いアジアの問題であり、どこか他人事に考えているわけです。しかし、実は彼らも、トランプ政権が仮に4年間続くとして、その間に北朝鮮問題で大きな決断を迫られることがある、ということには気づき始めているのです。

 ただそうした将来の脅威以上に、トランプ政権そのものから生じた現下の民主主義の問題が彼らの意識の中で大きなウエートを占めているわけです。そこで、私は議論を通じて、民主主義と同時に平和という問題にも一緒に取り組むべきではないかと説明、提案しました。この議論はかなり本気のものとなりました。

 そこでわかったのも、彼らは日米関係の強化に強い期待を持ち、言論NPOが今後進めていく日米対話に非常に関心を持っている、ということです。そして、いくつかの団体と準備も含めて協力を検討することとなりました。

4か国歴訪を終えて、決意を新たに

 私は今回、初めてアメリカの政治家の大きなパーティーに参加しました。非常に感動しました。アメリカの政治家は有権者に対して責任ある言葉で語っていました。また、アジア太平洋の将来に向けて責任感を持っている政治家が存在していました。そういう人たちと話をし、私たち言論NPOがやりたいことを皆さんに伝えました。

 政治と民間との適切な緊張関係と協力関係。課題の解決にとってそれがきわめて大事だということを感じました。日本でもそうした動きを作らなければならない、と私は決意を新たにしているところです。

 今回、北京からベルリン、ジャカルタを経て、ニューヨーク、ワシントンをめぐる中、様々な議論をしました。本当に私たちにとって大きな力を得るような、手がかりを与えてくれるような旅でした。色々なヒントや宿題を得ることができました。それら抱えながらこれから日本に戻ります。今回の海外訪問で得たものをどうやってこれからの動きに発展させていくのか、それが課題になっていくと思います。

 東京ではまた皆さんに対して色々なかたちで問いかけ、提案をしていきたいと思います。以上、ダレス空港から工藤が、報告させていただきました。

投稿者 genron-npo : 12:03 | コメント (0)

2017年5月15日

訪米「中間報告」 ~ ワシントンで続くシンクタンクの混乱と、ニューヨークではっきり感じた意識変化~

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 現在(13日)、私はワシントンで開かれたCoC(*)総会を終え、ニューヨークにいます。少し肌寒いけれど、新緑がまぶしい季節です。

 ニューヨークに来たのは、私たち言論NPOが進める「米国対話」のパートナー候補と資金提供者候補の人たちと相談するためです。同行した私たちのスタッフが努力して多くのアメリカの方々に連絡を取ってくれたおかげで、数多くの有力者と会うことができました。面会したシンクタンクや財団のファンドの責任者との会談で、私が一貫して言い続けたことがあります。「日本とアメリカの関係をもっと強いものにしたい。強いものにするということは、市民に支えられた日米関係をつくるということです」と。

(*)アメリカ・外交問題評議会(CFR)が主催し、世界主要25カ国26団体のシンクタンクが参加するシンクタンクの国際ネットワーク


日米の市民間の対話は脆弱なまま

 これまでの日米関係は、ある意味で安全保障に偏っており、専門家の対話チャネルはあるのですが、市民間の対話は脆弱なままです。それを痛感したのは、2年前に私たちがシカゴ外交問題評議会と一緒に行った世論調査でした。確かに両国の国民は共通の規範――自由や民主主義――を持ち、アジアや世界共通の課題について協力し合うこと望んでいるわけですが、いかんせんお互いのことほとんど知らないという現実が浮かび上がりました。トランプ政権が誕生し、アメリカの民主主義が大きく揺れ動く中で、アメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱し、日本の対米貿易黒字を二国間の通商問題として持ち出してくるのも、それを正当化できるお互いの不十分な理解が、その背景にあると思うのです。

 私はかねてから、グローバルな規範=リベラルデモクラシーや多国間主義に基づく国際協力を、日本が積極的に主張すべき出番が訪れたと言ってきました。それは戦後の日本の発展の背景には、そうした規範の存在があったからです。それで私はお会いしたみなさんにこうお伝えしたのです、「日米で本気のパートナーシップをつくりたい。そのパートナーシップのもとに、いま世界が直面している民主主義の危機やアジアを平和にするために、協力する関係がつくれないだろうか。言論NPOはすでに中国を代表にアジアとの議論のチャネルを持っているので、そこにも参加してほしい。日米が協力して新たな秩序づくりにリーダーシップを発揮すべきではないか」と。

 こうした議論は、トランプ政権が発足した今年1月の訪米時にも行っていたのですが、その時と比べて今回は間違いなくアメリカにも変化が起きているのを感じています。当時は私たちの行動に強い関心を示さなかった多くの人たちが口を揃えるのです。「15年も前に言論NPOを立ち上げて、よくここまで事業を発展させてきた。あなた方の言っていることは、まさに今アメリカが求めていることだ」。


行き場を失う米国のシンクタンク

 ワシントンで、多くのシンクタンクやジャーナリストのみなさんと議論をした時に、私は複雑な思いを抱きました。これまで世界の課題に先進的に議論を組み立ててきたシンクタンクが、大きな影響力を失いつつあります。トランプ氏はワシントンを壊すと、選挙中に言っていましたが、まさに混乱は収まっていないように見えました。多くの市民に自分たちの主張を伝えるため、慣れない様々な発信に取り組んでいる、という話を、多くの関係者から聞きました。

 トランプ政権は十分な体制が整っていません。多くの要職が空席のままです。そうした中で「回転ドア」と例えられるように、シンクタンクの有力者は政権との行き来をしていました。それがトランプ政権の発足によって、シンクタンクは行き場を失い、事業モデルに不安を抱いています。こうした混乱を見て、シンクタンクも基本はビジネスなのだと感じたのです。そのシンクタンクが市民に向かい合い、課題に取り組もうと苦しんでいる。そうした状況を見て、私が15年前に、非営利で民主主義とアジアの平和に取り組む「言論NPO」を立ち上げた時の状況を思い出しました。

 当時は、日本のジャーナリズムや知識層も市民から浮き上がり、課題解決の中心的な役割を果たすことを放棄してしまった状況でした。だからこそ、アメリカの苦悩に、実現すべきミッションを軸にアメリカでも、シンクタンクの民主主義に向けたイノベーションが問われている、と実感したのです。

 しかし、ニューヨークに来て、著名な助成財団のトップたちに会うと、明らかに意識が変わっていました。それぞれとの面談は言論NPOが進める事業について突っ込んだ意見交換となりました。

 世界で自由民主主義という規範が崩れかけ、アジアの平和が大きな危機に直面する中で、ある財団のトップは「今の中東依存の様々な事業を見直さないといけないかも知れない。民主主義の危機に対応する方向へ資金をシフトさせないと」と語りました、私たちと同じ思いを持ち、悩んでいる姿に直面し、日本とアメリカのパートナーシップを組める可能性を痛感したのです。


韓国系アメリカ人の言葉に感銘

 ニューヨークから車で2時間ほど離れたコネチカット州行ったときは、時差ボケも手伝って非常につらく、車の中で半ば気を失いかけましたが、着いた時にはもっとびっくりする経験をすることになりました。

 面会した方は韓国系のアメリカ人です。北朝鮮問題が深刻化する中で、日本と韓国の対立を非常に心配しておられました。先の大戦に対する日本の責任は私も忘れたことはないが、その方はそれを踏まえたうえで、「対立の背景にそれを煽る韓国側の問題がある。私はそれが恥ずかしい。日本と韓国は似た国民性を持っている。本来なら協力すべき時に対話が全くなくなっている。言論NPOが唯一対話を行っているので、それを何としても続けてほしい」と頼まれました。

 アメリカの中にも冷静にアジアの未来を考えている人がいることを知り、私はひどく心を打たれました。

 ニューヨークでは、財団の幹部だけではなく、シンクタンクの資金集めを行う責任者とも意見交換を行いました。言論NPOのアジアや世界での活動、何よりも民主主義の取り組みに関心が高く、共同で事業を計画できないかと、複数から提案もありました。


ファンドレイジングは本当に厳しい作業

 ある人からはこう言われました。「ファンドレイジング(資金集め)をするということは大変なことだ。うちでは99件断わられても、最後の一つからもらえれば成功、と考えて努力をしている」と。これを聞いて言論NPOはまだまだ努力が足りないと思いました。もっとも別の人からは「10のうち一つは合格しますよ。言論NPOのやっていることからすれば」と激励もいただきました。どちらが本音か冗談かわかりませんが、言論NPOが目指している日米の本当の対話、日米がアジアや世界の課題解決に向けて協力し、それを多くの市民が支えるという提案に、アメリカの多くの人が共鳴してくれたことに、私たちは大きな力を得た思いがしました。

 こちちらに来ているのは私も含めて3名。2人のスタッフは時差ボケに苦しみながらも夜も寝る間もないほど、提案や議論の準備に追われていますが、実際の議論でも私の頼もしいパートナーです。アメリカの要人と一歩も譲らぬ熱い思いがあるからです。

 いよいよ、この1カ月間にもおよぶ私たちの旅も終盤です。
 ニューヨークで多くの人との議論を終え、これから電車でもう一度ワシントンに戻ります。ワシントンでは「北朝鮮問題」「民主主義」「トランプ政権の100日評価」を行うために、多くの要人たちとの会議を設定しています。いま私はこうした議論を経て、アメリカに言論NPOの足場を築こうという決意で一杯です。
 次は再びワシントンから報告します。

投稿者 genron-npo : 15:22 | コメント (0)

2017年5月 8日

2週間に及ぶアメリカ訪問の5つの目的とは

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IMG_8892.JPG 言論NPOの工藤です。今ワシントンに到着しました。中国、ドイツ、さらにインドネシアにおける東南アジア諸国との対話を踏まえて、ようやくアメリカにたどり着いたことになります。直接的にはCoC、世界のシンクタンク25団体のトップが集まる会議に、日本の代表として参加し、そこでグローバルガバナンス、グローバルイシューについて議論するのが目的ですが、その他にも私は今回4つの目的を達するべく、強い意志を持ってやってきました。


トランプ政権発足後の100日をどう評価するか

 1つは、トランプ政権発足後の100日をこの目で見てきたい、ということです。私は、ワシントンとニューヨークの多くの知識層、ジャーナリストと、トランプの100日を議論する場を色々な形でつくっていきます。その中で、私は日本の安倍政権、日本の政治を評価する人間として、トランプ政権の100日を、私なりの評価基準で判断してみたい。トランプ政権は、選挙中に掲げたトランプ大統領自身の公約が、その後の様々な国際政治の展開の中で大きく修正を余儀なくされているように見えます。

 また、北朝鮮問題、中国との関係など様々な問題がある中で、トランプ政権が選挙中に主張した、多国間主義の否定と二国間主義の重視、そしてアメリカファーストをこれからも貫くのか、そして、支持層の動向はどうなのか。こうしたことが、私はどうしても気になっています。少なくともこの100日でそうした問いに答えを出せるわけではありませんが、私はこの100日時点でのトランプ政権を評価し、皆さんにご報告したいと思います。


我慢比べ状態の北朝鮮問題の行方

 2つ目に私が関心を持っているのは、北朝鮮の問題です。まさに今の北朝鮮の問題は、関係諸国の我慢比べのような状況だと考えています。対話によってこの事態を打開しようというこれまでの試みが、北朝鮮に時間稼ぎを許してしまったと判断するトランプ政権は、軍事的なオプションを含めた対応を考えようとしている。そして、中国がそうした紛争を回避するために、主導権を握って北朝鮮に対する圧力をかけ始めている。その中で、北朝鮮がどう反応するのか。日本や大統領選に直面する韓国も含めて、我慢比べをしている状況があります。そしてこの我慢比べに負けた時、大変な事態が起こってくると私は考えます。

 この我慢比べの先に、どのような北東アジアにおける平和秩序の姿があるのか。これをアメリカの政治家、軍関係者、シンクタンクのトップといろいろな形で議論をします。そして私は帰国後、北京で私が実現したように、アジア諸国との平和秩序に向けた対話の場にここでの議論を持ち帰ります。そのためにも、今回私は北朝鮮問題に関してアメリカとの対話をしないといけない。それが私のもう一つの切羽詰まった目的であるわけです。


言論NPOのアメリカ進出に向けて

 そして3つ目は、言論NPOがアメリカに進出をするための準備です。共通の価値観と民主主義を掲げるアメリカと日本が、世界やアジアの課題に向かって相互協力をする。そして、その動きが市民層に支えられる強い環境を作る。そうした重要なタイミングに来ているのではないかと私は思います。そのために私は、言論NPOがこの1年で、ワシントンに進出をするべきだと判断しました。今回私はその準備も行うつもりです。


日米が民主主義の危機を乗り越えるには

 そして最後に、私が今一番気になっている民主主義の問題です。アメリカにおける民主主義の正常化はどのように進んでいくのか。トランプ現象は民主主義の中で生まれた動きですが、これを民主主義の結果という形で捉えて良いのか。民主主義の試練を乗り越え、発展させるためにどのような取り組みが、日本とアメリカの間で必要なのか。それに答えを出そうと思っています。

 私はこれから14日間、ワシントンとニューヨークに滞在します。その間100人近くの人と議論することになると思いますが、そこでの議論を適宜皆さんに報告したいと思っています。いよいよアメリカでのチャレンジが始まります。ワシントンから工藤が報告しました。

投稿者 genron-npo : 19:59 | コメント (0)

インドネシア訪問を振り返って~アジアが抱える民主主義の課題とその克服に向けて~

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 言論NPOの工藤です。今私は、インドネシアでのスケジュールを終え、次の訪問地ワシントンに向かうところです。インドネシアでの民主主義をめぐる対話は、私にとっても非常に勉強になりました。


大きな可能性を秘めた「未来対話」

 まず、青年会議所をベースにした、民間レベルの公開対話である「未来対話」について、私は非常に大きな可能性を感じました。民主主義の問題や、グローバリゼーションにおける両国の立ち位置について多くの人たちが考えており、特にジャカルタの人たちは選挙を終えて民主主義の発展に非常に期待をしている状況があったのですが、その状況を今の世界の文脈で考え直した時に、議論を広げていくことに苦労しているように見えました。

 私は議論のレフェリーとして若い世代の議論づくりに参加してきたのですが、手がかりさえ与えれば、日本とインドネシアの若者は議論に参加できる可能性を持っているということが分かりました。少なくともこの2つの国は、発展段階は違うにしても、民主主義や自由に関するリスペクトがあり、それぞれの国を変えようという強い意志を持っています。私はこの2つの国が、アジアの今後の未来や平和に関して、力を合わせる意味を感じました。

 会場からもいろいろな意見が出されましたが、その中でも日本とインドネシアは交流の段階を上げていくべきだ、お互いが課題に向けて一緒に取り組みたい、という声が会場からも出てきていることに、私は非常に驚きました。専門家だけではなく、多くの人たちが民主主義の将来や時代の変化を感じ取って、新しいアジアや両国関係を作ろうという意見に対して、非常に大きな賛同がありました。私はこうした動きが今後いろいろな形で広がることを、今後も全面的にサポートしたいと思いました。


アジアの民主主義は岐路に立たされている

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 翌日、私は言論NPOの事業として、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシア、日本の5カ国で、民主主義について8時間にわたって議論しました。民主主義の定義の仕方、アジアが目指すべき民主主義の姿、そして民主主義という制度がグローバリゼーションの中で意思決定のスピードを上げていくことができるのか、そうした本質的な議論まで出ました。

 私はこの議論を司会として進行したのですが、アジアの民主主義は一つの大きな岐路に差し掛かっていると感じました。その理由として、アジアのいくつかの国々は、日本やインドのように民主主義を推進して発展したいと思っているものの、市民が民主主義を支える大きな担い手であることを認め、既得権益を壊すことによって政治の民主化を進めることに、前向きではない面があるからです。

 例えば、私はシンガポールに対して「グローバリゼーションの中で自由経済の利益を得ているシンガポールが、リベラルな自由主義や民主主義に関して、自分の国の政治はそうではなく権威主義体制ということに矛盾を感じないか、トランプの存在はあなたたちにとって理想的な展開なのではないか」と、非常に意地悪な質問をぶつけました。しかし彼らは、非常にデリケートな問題であり、周辺を取り巻く民族の問題もあると答えるにとどまりました。


「イスラム急進派の台頭」の問題

 同様に、我々はインドネシアとも議論をしました。インドネシアは民主主義という問題に日本以上にこだわり、新しい世代による民主主義の発展に非常に期待していました。しかし、インドネシアも大きな問題を抱えていることが分かりました。ジャカルタ州知事選で、前の知事は75%の市民層の支持を得ていましたが、イスラムを冒涜する発言を行ったということで、彼は選挙に負けてしまったのです。元々彼は中華系で宗教はキリスト教という同国の多様性の象徴であり、インドネシアの次世代のリーダー、ジョコ大統領の後継者としても期待された人間でした。

 彼は選挙戦の中でイスラムを刺激するような発言をしたとされていますが、良く調べてみると、そこにはイスラムの急進派の人たちが、グローバリゼーションによる多様化よりもイスラム教の原典に戻るべきだという主張の下、国を越えた一つのイスラム圏の権益を東南アジアに広げようという動きを見せており、今回もそうした人たちが彼の発言を取り上げて、それを大きな論点に作り上げてしまったという背景がありました。

 インドネシアは、グローバリゼーションの中で多様性を認めた民主主義の国を目指しているものの、テロやイスラム急進派というものが、この地域にも一つの足場を築きつつあるということが、多くのインドネシアの知識層と話して分かりました。


市民の悩みや怒りがドゥテルテ大統領を生んだ

 また、フィリピンの人たちはドゥテルテ大統領を熱狂的に支持しているが、彼が法的な手続きを経ないまま多くの容疑者を殺し、市民の権利を侵しているという問題を議論した時に、フィリピンからの参加者たちはそういう状況をなんとか変えたい、許されないことだと言っていました。しかし、多国籍企業の市場が参入し、それが権力者と繋がり、その中で力を持った人間と貧富の格差が広がり、民主的な課題解決が難しくなっている状況がある。そうした市民の悩みや怒りが、極端なリーダーシップを持つ民主的でない指導者に期待をしてしまっていることを、フィリピンの参加者も認めていました。

 考えてみればタイもまさにそうでした。民主化が進んだ国であっても、政権交代で既得権益を失う人たちが政権交代にNOと言う。民主化の推進は、様々な市民層の政治参加を促しますが、その中で国のガバナンスを統一できない脆弱性が、軍というものに期待をしてしまう。やはりこれも民主主義というものをうまく活用できなかった一つの現象だったと思います。


民主主義を支えるのは課題解決を志向する強い市民

 このようにアジアの国々は、民主主義の運用に関して、大きな問題を抱えているということが、今回の会議で改めて浮き彫りとなりました。

 しかし、私は、彼らと議論をしてある意味での手ごたえも感じました。それは、市民というものが強くならなければ、民主主義は脆弱なままであり、場合によっては壊れかねないという認識を、少なくともこの5カ国の参加者と共有することができたからです。先述した様々なアジア各国が抱える民主主義の問題点は、「民主主義を発展させるためには、市民が民主主義をどれだけ理解し努力するかにかかっている」ということを、我々に伝えています。民主主義の発展が、課題解決をする成熟した市民社会の方向に向かわないと、その国は逆流してしまうのです。民主主義は脆弱であり、脆弱な民主主義を強くするためには我々自身が課題解決に取り組むしかないということを、アジアの国々の参加者と改めて確認できたことは大きな収穫でした。


「個人の自由」の保障こそが民主主義の目的

 一方で、アジアでは経済発展やガバナンスのために、民主主義が形骸化しているという問題があります。確かに、社会が成熟しないうちは、強い安定的なガバナンス無しでは主権国家は課題解決のために動けない。そのために、様々なガバナンスの形態や政体が必要な局面があるということは認めざるを得ないのですが、私は参加者に対して、さらに追及しました。民主主義の目的は個人の自由を保障することであり、それは人類の財産であって、その自由な個人を人類の一つの到達点として考えなくて良いのか、と。すると、多くの人たちが口を閉ざしてしまいました。しかし、それがやはり民主主義が問われている課題であり、人類の長い歴史の中で辿り着いた一つの大きな到達点なのです。つまり、アジアの民主主義はまだ中間地点に過ぎず、これから民主主義をどう活かしていけば良いのか、アジアの中で我々はもっと突っ込んだ議論をしなければいけないと思ったところです。


東京での「アジア言論人会議」開催に向けて

 アジアの言論人会議は、アジアの様々な国と民主主義を取り巻く多くの課題を議論することでスタートしました。第2回目が今回ジャカルタで行われたわけですが、いよいよ今年の8月か9月に東京で開催することを決めました。その時は皆さんに、いろいろ形でご案内させて頂きます。グローバリゼーションの展開、民主主義の展開、そして宗教。こうした大きな問題に私たちは無関心ではいられない。そういう状況が今あるのだということを、今回私は改めて痛感しました。繰り返しになりますが、私は、そうした思いを持ちながら、これからワシントンに向かいます。また報告をしますのでご期待ください。

⇒ 第2回アジア言論人会議(第3セッション)報告
⇒ 第2回アジア言論人会議(第2セッション)報告
⇒ 第2回アジア言論人会議(第1セッション)報告

投稿者 genron-npo : 19:23 | コメント (0)