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【vol.51】 塩崎恭久×林芳正×渡辺喜美『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか(3)』

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.51
■■■■■2003/10/21
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●INDEX
■ 座談会 塩崎恭久×林芳正×渡辺喜美
  『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか 第3回』


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■ 座談会『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか 第3回』
  塩崎恭久(衆議院議員)、林芳正(参議院議員)、渡辺喜美(衆議院議員)
                       聞き手 工藤泰志・言論NPO代表
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次の総選挙の争点はどう描かれるのか。自民党の3人の政治家が今回の総裁選や小泉
改革を評価し、マニフェスト型政治を巡る議論に参加した。派閥政治についての見解
や日本の新しいガバナンスのあり方に加え、マニフェスト政治の実現に必要な条件
や、今後争点とすべき政策の柱について、3氏それぞれの主張をぶつけ合う。


●小泉改革をどう評価するか

工藤 小泉改革についてはどう評価していますか。また、問題があるとすればそれを
   うすれば直すことができるとお考えですか。

塩崎 冷静に考えれば、例えば、道路公団の改革でも民営化というものが自己目的化
   されていて中身がないではないかと言われつつも、藤井総裁に「私が一番の民
   営化推進論者だ」ということを言わせるところまで持っていけたのは革命的な
   ことだと思います。昔、財投の見直しを党内で議論したときに、料金プール制
   の廃止を方針に入れたら、総務会などを通っているうちに党内でボコボコに言
   われて駄目になったことがある。しかし、今回は分割民営化ということで、全
   国プール制は少なくともやめるということになった。空港の民営化も、私も何
   度も財務省や昔の運輸省に言ってきたのですが、全く相手にされなかった。そ
   れが今回は民営化が決まっている。色々な評価はありますが、少なくとも今ま
   での自民党政権ではあり得なかったことが幾つか入ってきたことは間違いない
   と思います。

   ただ、最大の問題は今、日本で社会保障や財政などの問題が議論される中で、
   結局、何が問題かというと、それは民間経済が駄目になっていることなので
   す。そこの構造改革こそが大事であって、渡辺さんと私がこれまで言ってきた
   ように金融再生と産業再生とを一体で進め、供給サイドと需要サイドの両面を
   立て直していかなければならない。それをしない限りは成長もないし、財政再
   建もあり得ない。成長がなければ、社会保障も年金、医療、福祉のいずれにお
   いても、どんどん縮小均衡の後ろ向きの解しか出てこないということになる。
   本当の問題は何なのかという分析の欠落と、優先順位のつけ間違え、このこと
   が小泉改革のマイナス面としては決定的だと思います。

   政治家というものは1人で全部できるものではなく、林さんが言われるチーム
   というものが絶対に大事です。政策決定過程を現在の時代に即したものに変
   え、日本のガバナンスを変えていかない限り、改革というものは進まない。外
   交もそうです。FTA(自由貿易協定)の問題も各役所が言いたい放題言って、
   そこに応援団の族議員の人たちが引っ張り合っているだけです。それを壊し、
   新たな形にまとめあげる人が本当は政権のど真ん中、すなわち官邸にいなけれ
   ばならない。これはやはりチームがなければ無理です。

   小泉改革には改革のエネルギーとパワーは十分にあります。改革という言葉が
   先に出てきますが、そのためには自動車に例えるとトランスミッションもハン
   ドルもブレーキも、何もかも要るわけです。それがフルセットで用意されてい
   ないままにエンジンが回って、それをうまく導いていくガバナンスの仕組みと
   いうものが欠落していた。財務省の財政再建路線をあまりにも前面に出しなが
   ら、全てのものにとりあえずの答えを出していこうとしているところに歪みが
   出てきている。そこを直すようなチーム陣立てというものを考えていかなけれ
   ば、心配なことになるのではないか。

渡辺 クルマの喩えを私流にアレンジしますと、ボディーとカラーは実に目も鮮やか
   なぐらいに変わりましたが、そのクルマを動かしているエンジン、内燃機関が
   相変わらず昔のままの旧式ぽんこつエンジンなのです。内実は何も変わってい
   ない。そのため、アリバイづくり的な改革に終わってしまっている。小泉改革
   というのは特に目新しいことは何もなく、橋本六大改革の延長線にあることば
   かりです。道路と郵政がとりわけ政治的優先順位づけが高い問題として取り上
   げられていますが、これは私に言わせると、憎しみの構造改革論です。派閥的
   怨念の政治であり、橋本派の利権構造をぶち壊すことこそが構造改革になって
   いる。道路と郵政だというのは、大衆的にはとてもわかりやすく、小泉さんの
   人気の秘密はそのあたりにあると思いますが、こうした優先順位づけはピント
   がずれており、まず何から始めるかというと、産業、金融の一体再生から始め
   て民間が元気にならなければならない。

   問題の本質に切り込むことこそを第一にしなければならないのに、小泉改革に
   おいては、今は危機ではない、現に改革が進んで経済が上向きになってきてい
   るではないかと称して、いわば臭いものに蓋をしてしまうということが行われ
   ている。民間にできることは民間にという呪文を唱えているのは、いわば悪い
   病気にかかった患者に、メスは自分で握って自分の腹を切りなさいと言ってい
   るに等しい。過剰債務の本丸はまさに地方であり、中小企業です。こういう部
   分にメスを入れない限り、デフレは止まらない。過剰債務問題それ自体がまさ
   しく戦後日本の資本主義を代表する構造問題なのですから、優先順位の再
   チェックが必要です。そして、この問題の解決にはお金がかかるということを
   腹をくくって容認しなければなりません。

   小泉改革が一見順調に進んでいるかの如く見えるのは、世界的に見ればブッ
   シュ幕藩体制の中で小泉藩がブッシュ幕藩のおこぼれをもらって上向いている
   からです。アメリカ頼みの経済が少し順調になってきているというだけの話で
   す。今、景気循環のサイクルが20世紀とは比べものにならないほど短くなって
   きていることや、日本の貿易黒字も実は企業内取引にほとんど依存した、実質
   的に貿易収支は赤字だという状態に鑑みれば、今の景気回復は長続きするわけ
   がないという感じがします。結局、マクロ政策は柔軟にやればいいだけの話で
   す。 構造問題に取り組むということは大変な痛みを伴うはずであり、実は供
   給の削減にしても、年金、社会保障の構造改革に消費税アップは避けて通れな
   いという問題にしても、その痛みの部分について小泉総理は何も言わない。臭
   いものに蓋です。逆に言えばそのことこそが次の対立軸であり、争点にしてい
   かなければならないということです。

林  総裁選挙のときに私は小泉総理に対して色々な説明の仕方をしました。1つは
   ドン・キホーテです。鎧をまとい、ファイティング・スピリットもあり、腕力
   もあると思うが、怪物だと思っているのが実は水車で、水車の中に本当は大事
   な人が住んでいる。政策の細かいところは党で色々な人が随分苦労してまとめ
   ているのですが、それをしようとすると抵抗勢力と呼ばれるのでもう馬鹿らし
   いからやらないという状況に党内もなりつつある。これは非常に危うい状況で
   す。だが、そうは言っても昔では考えられないようなことがスタート地点に
   なったのも事実だと思う。これは、やはり小泉さんの功績です。音楽に喩えま
   すと小泉さんというのはプレスリーのようなもの。我々、次の世代はビートル
   ズです。プレスリーの次にビートルズが出てくるわけですが、確かにその前の
   世代のシナトラのようなタイプから見れば感じがかなり変わったし、音楽の質
   も、ロックというのが初めて確立していく。塩崎さんが指摘された道路公団の
   料金プール制などというのは、エレキギターのようなもので、「エレキなんて
   とんでもない、髪の毛伸ばしやがって」と言っていたのが、ロックは最近は教
   科書に出るまでになったわけです。そのきっかけをつくったという意味では、
   小泉さんの功績は非常に大きかった。

   ただ、いかんせんプレスリーは自分で曲をつくらない。人が書いた曲で演じ
   る。プロデューサーやソングライターがいる。なぜビートルズなのかという
   と、オーケストラなどバックに色々とつくこともありますが、基本は自分たち
   だけでつくって自分たちだけで演奏する。ここが一番大きな違いです。ですか
   ら、やはり長い間支持もあり、後世に残った。これは政策を自分でつくってい
   るか、誰かが書いてこうやりなさいと言っているかという大きな違いで、私は
   この喩えの方がドン・キホーテより気に入っている。もし小泉首相がプレス
   リーで暫く行くとすれば、よほどいいライターとマネージャーがつかなけれ
   ば、誤った方向に行く。しかし、プレスリーが来ると言えばまだみんながコン
   サートには行くという状況がある。

                          ──次号へつづく──

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