小島 明

小島 明氏発言

 日本経済は各国がほとんど経験したことのない長いデフレの中で苦しんでいる。しかし、経済のデフレにもまして深刻なのは社会全体に蔓延する気力のデフレ、志のデフレではないか。そのなかで日本は"言論デフレ"に陥りかけている。

 情報化といい、情報革命と騒ぐが、情報は量的には爆発的に増え、むしろ情報洪水となり、それを情報技術が増幅する時代である。しかし、言論はそれと反比例して劣化してはいないか。感情的、情緒的な議論ばかりが横行する。世界の政治・経済状況が歴史的な転換を見せている中で、日本の経済・社会も歴史的な転換を必要としている、その際に不可欠なのが、しっかりとした座標軸を持った深い議論である。情報リテラシーの向上も肝要である。

 言論NPOには、日本にとってますます重要になる健全な言論の復活への触媒となってほしい。言論NPOの活動はそうしたミッション(使命感)から生まれ、それに共感する人々に支援されながら着実に展開されていることに敬意を表したい。

小島 明
公益社団法人 日本経済研究センター研究顧問
政策研究大学院大学(GRIPS)客員教授


1942年生まれ。65年早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社入社。ニューヨーク支局長などを経て、97年取締役論説主幹、常務取締役論説主幹、専務取締役論説担当。2010年より現職。2004年論説特別顧問、日本経済研究センター会長。05年中国ハルビン工科大学客員教授・同大学中日貿易投資研究所長も務める。88年度ヴォーン・上田記念国際記者賞受賞、89年度日本記者クラブ賞を受賞。主著書に『グローバリゼーション』などがある。